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街へ行こう
しおりを挟む「チーロはお出かけ行くします!」
仕立てて貰った、服を着て僕は二人に宣言した。
新しい服を僕に着せて、やれ可愛いだとか愛らしいだとか騒いでいた二人が、キョトン顔をしている。
「チーロさま。素敵な洋服を着ると出かけたくなるお気持ちもわかりますが…」
アガメルが仮面のズレを直しながら言い淀む。
わかってる。
言いたいことは分かるよ、アガメル。
超絶不細工の僕が街に出たらどんな反応をされるかと不安なんだよね。
でも大丈夫!僕の価値基準的には、将来イケメンになる予定だし、趣味が違う人たちと思うようにする!
それに、このお出かけには目的があるんだ。
それは、きっと病院が苦手で行っていなそうなオルニスを、お医者のところに秘密で連れて行くんだ!!
きっと天人という目立つ種族な上に超絶不細工で、お医者さんでも嫌な目にあったんだろうと思う。でもオルニスには、ちゃんと治療してリハビリして、また飛べるようになって欲しい!!
「チーロ、お願いするします!」
ガシッと困惑しているオルニスの腕にしがみついた。
オルニスが凄い顔で僕を見下ろしている。中心から別れている、耳にかけられた長い前髪がハラハラと落ちてくる。
「……分かった、行くぞ」
あれ…意外とあっさり許可された。もっと駄目だとか、やめた方が良いとか言われると思った。
「ありがとう!!チーロ、オルニス好きよ!!」
嬉しくって、ニコニコ笑ってオルニスの体を叩いた。つい飛び跳ねてしまうのはこの体のせいだ、きっと。
「……可愛い」
「…オルニス様……これは…逆らえません」
ごめんオルニス…このお出かけで、僕は何としてもお医者さんを見つけて連れて行く!
犬で言うところの、散歩かと思ったら病院だった作戦だ!!
サンダルを履いて、白魔法使い的なフードを被って羽根を隠した。
オルニスいわく、チーロのフワフワの魅惑の羽根に触りたくなる輩が出てくる。ということらしいが…過保護だ。
だって誰も近づいて来ないでしょ。
不細工集団なうえに、一人は天人、一人は仮面だよ!!
怪しいにも程がある!
でも、テンション上がる!!
異世界に転生して1週間くらい。初めて街を歩くんだよ!
この世界のこと少し勉強したけど、魔獣とかいるなら、戦士とかギルドとか、武器屋と防具屋とかもあるかもしれない!!萌える!
つい、ステータスオープンとか言っちゃったけど、出てこなかった。
「いいか、チーロ。欲しいものがあったら全部買ってやるから直ぐに言えよ」
「……」
駄目保護者が、何か間違った事を言っている。
まじでオルニスは、ボンボンのお坊っちゃんだったのだろうな。
家を追い出されたなら、もっと感覚を庶民にしないと駄目だぞ。
「オルニスさま、何でも買い与えるのは、良くありません」
おぉ!さすが仮面教師アガメル!
良いことを言う。
「チーロ様には、粗悪品は似合いませんので、良いものだけを買って差し上げてください」
駄目だ…。
二人をちょっと教育しないと、いつの間にか借金まみれになっているのでは!
「チーロ、いらない!お金大事する!」
「……チーロ…あぁ…なんて控えめな子なんだ……良い子過ぎる」
オルニスが天を仰いでいる。
大丈夫か、ホントに。
早く大きくなって、立派な冒険者にならないと!!
「オルニス行こう!」
オルニスの腕を引っ張った。
宿屋の扉を開けると、まさにそこはRPGの世界だった。
土の地面と、行き交う馬車。すこし色のくすんだ裾の長いスカートを履いた女性たち。鎧をつけた戦士や、いかにもファンタジーな布の服をきた街の人。
勉強で習った、オーク族は居ない。
僕の知っているオーク顔なら、この世界では、さぞイケメン扱いなんだろうな。
「街すごいねぇ!」
「このラダンの街は、規模としては小規模な方です。海が近いので流通は、そこそこあります」
アガメルが説明してくれた。
「向こうが市場の方ですよ」
「行きたい!!」
「待て、チーロ。迷子になるから、手をつなごう」
オルニスが大きな手を差し出してきた。すかさずその手に自分の手をのせた。
僕の手がオルニスの手にすっぽりと包み込まれて、なんだか心がくすぐったい。
誰かと手を繋いで歩くなんて子供の時以来だ。
寒いわけじゃないけど、包まれた手が暖かくて気持ちいい。
思わずフードの中の羽根がブルルっと震えた。
心が、ホカホカする。
凄く楽しい!
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