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ピチャピチャ…
しおりを挟む『…まぁまぁな金額だな。ソレで良い。金を置いて持っていけ』
オルニスが、部屋にやってきた馴染みの商人に、自らの抜いた羽根を、一本テーブルに置いて指示をした。
天人の羽根は、魔獣除けに使える為に高く売れる。
自然に抜け落ちたものには効果が無いが、力の宿った羽根ならば数年は魔獣が寄り付かない。
『まぁまぁってお前な…それだけあれば、貴族だって数年遊んで暮らせるぞ…一本羽根を抜いただけなのに…』
ツルツル頭の商人が、中くらいの袋一杯の金貨を、テーブルに置いた。
『俺の番は、こんな端金で満足していい存在じゃない。それに自分の羽根を見ず知らずの人間が持ち歩いているなんて、気色悪い。最初で最後だ…』
オルニスは、顔をしかめてハラハラと落ちてくる長い前髪をかき上げて、後ろで無造作に括った。
『お前…本当にオルニスか…番っていうのは凄いんだな…』
『うるさい、用が済んだらさっさと出ていけ』
オルニスは虫を追い払うように、手を振った。
□□□□□
扉の向こうでオルニスが誰かと話をしているのが聞こえた。
まだ眠い目を、ゴシゴシと擦ったら、まつ毛がフサフサで驚いた。
誰と話しているのだろうと、気になって寝かされいたベッドから抜け出して、ペタペタと裸足で歩く。
此処はベッドルームのようだった。
大きなベッドが二台置かれている。それ以外に家具は無い。
声がする扉を開けると、オルニスがソファに座り、見知らぬスキンヘッドの人が、その前に立っていた。
『チーロ!まだ寝ていろ!…おい、貴様…見るな!さっさと出ていけ!!』
僕が現れると、オルニスが何やら怒り始めた。
スキンヘッドの人は、僕を見ると、あんぐりと口を開けて固まっている。
『……くそっ…出ていけと言ってる!!』
オルニスが立ち上がり、なぜか羽根を握りしめているツルツルさんの背中を押しながら、僕が来たのと反対側の扉へと向かった。
その人はオルニスに押されながらも、僕をガン見しているのだけど……なぜだ…。
バタン!!
オルニスが相手を追い出して、乱暴に扉を閉めた。
僕は、テーブルの上に袋から溢れている金貨を見つけ…まさか……あれはヤバイ取引だったのでは無いかと震える。
オルニスはこの世界のアンダーグラウンドの住人なのか…?
『どうした、チーロ寒いのか?』
いつの間にか近づいたオルニスが僕を覗き込んだ。
『風呂が用意されている。行こう』
なんだか分からないけど、背中に手を添えられて、何処かへ促される。
オルニスの手が背中の丁度痒い所に当たっている。
服が無くて布を巻かれているだけだから、ざっくり開いた背中に、サラサラの金髪が当たるから痒いのかなぁ…。
部屋の別の扉を開けると、その部屋は他の部屋と違い板張りではなく、タイルのような石が敷き詰められ、奥には猫脚のバスタブが置かれている。
バスタブからは、ホカホカと湯気が上がっていて、凄く心誘われる。
フラフラと近づいて手を入れると、丁度良いお湯加減だった。
「ふわ…」
蛇口とか無いけど、まさか沸かしたお湯を誰かが運んでくれたのだろうか。凄い…。
『こんな宿しか借りられ無くてすまない…』
「オルニス、入っていい!?って何処で洗えばいいの」
巻きつけられた白い布を懸命に剥ぎ取ろうとすると、オルニスが引き抜いてくれた。
布を投げ捨てて、もしゃもしゃになった僕の髪の毛を手櫛でなおしてくれて、すぐ側に秀麗な顔が迫り、緊張する!
『おいで』
オルニスの低音ボイスが耳をくすぐる。
声優さんのようなイケボなのに、日本語吹き替えされてない残念仕様だ。
手を引かれ、排水口の近くに立たされると、オルニスが自分の袖をめくり、桶ですくったお湯で、足をチョロチョロと流される。
「…あったかい」
思わずニコニコして、しゃがみこんだオルニスを見つめる。
オルニスのキツイ眼差しが綻んで、幸せそうに微笑まれると何だかドキドキする。
バスタブの側に置かれていた石鹸をオルニスが泡立て始めて、はっと気がつく。
「自分でやるよ!!えっと…チーロがドゥ!やる、ドゥ!」
両手をお皿にして、石鹸をクレクレした。
『……』
ちらっと僕に視線を向けたオルニスが、怪我をしていない左の羽根を僕の手のひらにタッチした。
「……」
お手だ…犬で言うところのお手をしてもらった。
多分、僕の言いたい事は伝わっているのに、無視をしたオルニスが僕の足をお花の匂いがする泡で洗い始めた。
いい匂いと、ふわふわの泡と…
優しい手の動きで…
此処は天国でしょうか…
気持ちいい
体の力が抜けてフニャフニャになりそう
オルニスの広い肩に、そっと手をついた。
「……気持ちいい…」
『…チーロ…』
オルニスが微笑みながら、桶で、すくったお湯で僕の足を流し、腰、肩…と全身を流してくれた。
人に優しくお世話されるのって…こんなに気持ちいいんだ…。
今度、オルニスにもやってあげよう。
泡が排水口に吸い込まれ、ピカピカになった僕は、持ち上げられて、そっと湯船に降ろされた。
「……ふぅぅ…」
思わずため息が漏れた。
オルニスがクスクスと笑っている。
『……そろそろ、羽根が生えていい頃だが…』
湯船の中で、オルニスにうつ伏せに変えられ、浴槽の端に両手で掴まって、手の甲の上に顎をのせた。
背中が湯船からプカーっと浮かび上がる。
肩甲骨のあたり…髪の毛が、当たって無くても痒いんだけど、湿疹でも出来ているのかなぁ?と思っていたら…
ピチャ…
「ひゃあぁ!!」
丁度痒い所に何かが触れた。
オルニスの舌だ。
「えっ…あっ…な、何!?ふぁあ…」
オルニスが覆いかぶさるようにバスタブに手をついて、僕の背中のお湯を舐めとるように、ピチャピチャと舌を動かす。
結ばれていた髪が解けたのか、ハラハラと、落ちてきて僕の背にかかり、くすぐったい。
何だろう…まずい…
なぜか…僕の息子が…勃ってきた
「んぁ…オルニス…だめ…」
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