転生して羽根が生えた僕の異世界生活

いんげん

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運ばれる卵

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何やら外が騒がしくなった音で目が覚めた。

「なんだ!!」

水を掻いて卵の殻に耳を寄せ、外の様子を探ろうとする。
ガサガサと草や小枝を踏み歩く音と、数人の男性の声がする。

『お頭!見てください!金の卵!!天人の番の卵だ!!』
『なんで…こんなところに…?』

男数人が興奮気味に騒ぎ、僕の卵に触れている。

まずい、これは本当にお料理されてしまうのでは??

いや、割ってくれた方が好都合なのかな??
出して貰えれば、この卵の殻と白身の部分をお譲りしても構わない。
テンテケテー!と現れ、あっ…どーもすいません、お邪魔しましたという感じで、そそくさと退場してはどうだろうか?

ゴクリとつばを呑んだ。

どうか外の人たちが良い人で有りますようにと手を合わせて願う。

『番は何処だ!?』

それにしても、彼らの言葉はさっぱり分からない。
言語チートは無いのか。

『見当たらない…そんなこと有るのか??天人は、いつか必ず番の卵を得るのだろう』
『さぁ…天人さまなんて会ったことねーから知らねーっす。迎えに来ないって事は、死んだんじゃ?』
『……売ったらスゲェ金になるな…』
『…凄い宝が落ちてましたね』

外の人たちが忙しなく動き始めた。
ヒヒーンという馬的な声や、ゴトゴトという音がする。

『どうします、お頭…割って持って行きますか?馬車には盗んだ物が有るから入らないですよ』
『卵のままの方が、高く売れるだろう。大した金にならない盗品なんか捨てていけ!!見たことねぇぐらいの金になるぞ』
『はい!!』

なぜだか、ガシャガシャとかバリーンとか物が壊れる音がする。
ちょっとビビり始めた僕は、卵の中で膝を抱えて丸くなった。

『割るなよ!そっと運べ!』
外の一番大きな声の男が、何か指示を出すと、そんなに大きくない冷蔵庫くらいの、僕の卵を男が二人で抱きかかえた。
『思ったより軽いな』
『ああ』

間近で声がする。

「ひぃぃ」
卵の殻に、人のシルエットが映る。
見ず知らずの男二人に抱きしめられているようで、不快感極まりない。

前後で挟まれて、逃げ場がなく、中のボールを集めて緩衝材のごとく、男達の顔辺りに集めた。

『よし、そのまま持ち上げて、馬車の奥まで運べ。毛布と布を敷き詰めた所に置いて固定するぞ…』
『…はい』
ゆっくりと何処かへ運ばれた僕の卵は、引っ越し作業の電化製品のように、慎重に何処かに置かれた。
熱気が伝わる男たちが離れ、ほっとため息が出た。
なんとなく、彼らの顔がついていた場所を中側から、グチャグチャとなでた。

『上から毛布を被せるぞ』
バサッと何かに覆われて、光が遮られて暗くなった。

うーーん、どうやら馬車みたいな乗り物で運ばれるらしいです。
ガタンゴトンとサスペンションの効かないタイヤ…なんという乗り心地の悪さ!
これ卵の中じゃ無かったら最悪だったよ。

中の水、最高です。
いい仕事してる。
ちょっと早くも、この自室に愛着湧いてきたよ。

ガタゴト

ガタゴト

ヒヒーン

ドナドナ…

「……そろそろ限界だ…僕…たべるわ…」

空腹に耐えきれなくなった僕は、やたら美味しそうに見えるボールを食べることにした。

「あれ?ちょっと小さくなってない?」

美味しそうなボールは、バレーボールくらいの大きさから、グレープフルーツくらいになっていた。
段々萎んでいくのかな?

ボールの一つを手にとって、はむっと齧りついた。

「んぁ…ん??んん?」

意外と柔らかいボールは、口の中のでグニャグニャになるけど噛み切れない。
くちゃくちゃと噛めるけど…それしか出来ない。

えぇ…本能的に食べ物だって思ってたのに!!なんだよ、食べられないの!!

「んむーーー!!ぐぅぅ」

どんなに頑張っても硬いグミのようで噛み切れない。

「うぅ…お腹すいたよぉ……」

ひもじくて泣けてくる。
少しでも味がしないかと、チューチューとボールを吸った。






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