上 下
23 / 49

過保護化する豹兒

しおりを挟む

「さぁ、今日も頑張ってトレーニングするぞ!」

 今日は午後からずっと屋上の片付けとか、レッドと一緒に周辺の片付けとか色々頑張った。
体は、クタクタだけど、トレーニングは毎日やってこそ意味があるんだ。
夕食も大分消化されたし、寝る前に豹兒のトレーニングに便乗しようと思って部屋を訪れ声をかけた。

「今日は、ポチは、しなくていい」

部屋の真ん中のテーブルで、灯りを頼りに難しそうな本を読んでいる豹兒は、ちらっと俺を見て言った。

「何で?」

いつもは、もっと早く走れるようになれとか、高い所にも腕の力で登れるようなったほうが良いとか……コツとか教えてくれながら付き合ってくれるのに。
なんで、スンってしてるの?

「今日は、体動かすことが多かった。昨日は、ぐっすり寝れてないし……早く寝なよ」

本に視線を戻した豹兒は、なぜか俺を見ようとしない。

「……そう?」

何か変だなと思いながらも、台風騒ぎにゾンビ騒ぎで、豹兒も疲れているのかなっと思った。
ゆっくり読書して休みたい日もあるよな。
うん、ここは静かに退散しよう。

「じゃあ、今日はしない。邪魔してごめんね」
「邪魔じゃない」
 
豹兒が本から目を離して、俺の斜め上くらいを見ている。

「そっか、ありがと。じゃあ、俺もう行くね」

俺は、右手を上げてドアを閉めようとすると。

「ポチ!」
「ん?」

半分閉めかけたドアを止めて、顔を覗かせる。

「……あのさ……疲れたり、具合が悪くなったら……俺に言って」
「え?う…うん」
 
突然どうしたのだろう?
あっ、あれ?
そういえば、今日、夕食の時に豹兒がやたらジフを見てて、ジフは凄い渋い顔してたけど、台風とかの気圧で頭が痛くなるタイプとか?
豹兒、心配してたの?
優しいなぁ。俺はそういうの無い。むしろ筋肉痛すら無い、若くて健康体だ。

「大丈夫、俺元気。一番寝てて健康的に暮らしてるから!ありがとう、豹兒」
「……そう……良かった…」

豹兒の顔の緊張がほぐれて、ほんの少しだけ笑った。豹兒の艶々の前髪が揺れた。うん、なんか可愛いね、豹兒。

「じゃあ、おやすみ!」

俺は手を振ってドアをしめた。
そして、寝室ではなく守衛室に居るはずのジフの元へと急ぐ。

頭痛に効くのって何だろう。
半分が心地よさで出来ている頭痛薬とかこの世界に有るのか謎だしな。

「……お前、まだ起きてたのか」

守衛室についた途端、ジフにそう言われた。
いや、え?
もうそんな時間だっけ?

俺が知らない間に時間が倍速で流れたのかと心配になり、時計を見た。時計の針は、午後9時を示している。

「ジフ、まだ9時だよ」

時計を指さしながら、椅子に座って本を読んでいるジフの側に立った。
今日はジフも難しい本を読んでいる。なんか、人体の絵とか書いてる奴だ。なに?今、読書の秋来ているのかな?

「こどもは寝る時間だろ」

今日は眉間の皺が2本になっているジフ。こめかみに血管まで浮いている。やっぱり気圧で頭痛い族なのかな?

「ねぇ、ジフ頭痛い?」

ジフの椅子の後ろに立って、うねり系の癖毛の頭頂部をよしよしした。今日もジフのハーフあっぷは可愛い子犬の尻尾だ。

「ああ?お前が来てから頭痛ぇことばっかりだぜ」

ジフが本を閉じて、テーブルに置いた。な、なんて事をいうんだ、そんな……本当の事を!
俺はジフの言葉に慌てた。頭痛いのって肩揉んで良いんだっけ?悪化する?温めた方が良いのかな?

「お世話になってまーす」

俺は、後ろからジフの首に腕を回して、頭に頬を寄せて抱きついた。温まれ、痛いの飛んでけ。

「……」
「俺が生きてられるのは、3人のお陰だよ。ありがとう、ジフ。俺の事拾ってくれて」

こんな時こそ、素直に感謝を伝えてみる。

「……お前、そいういうのがフラグって言うんじゃねぇのか?」

ジフが首をひねって俺を見た。
ジフの顔って目つき悪くて細いし、豹兒や蒼陽みたいに美しい、毛穴レスなつるつるじゃない。
傷だらけだし、唇ひび割れている普通に男なんだけど、そこがやっぱり男らしくて格好いいよなぁ。
滲み出る渋み?歴史?ビンテージ感?俺もこんな風になりたいな。

「……じゃあ、失礼して」

首の前で組んでいた腕を、下におろして、ジフの雄っぱいを揉む。

「いやぁ、やめて、ポチ……」

ジフが、俺の耳元で棒読みの台詞を吐く。
しかも声、低!
耳がゾワゾワする。
でも、辞めない。まだ雄っぱいが揉みたいから。
でも、ジフの雄っぱいを揉み揉みしても、ジフは全然気持ちよさそうじゃ無い。

「ねぇ、ジフ雄っぱい気持ち良くないの?豹兒も無反応だったし……」
「お前は、変質者かよ」
「俺が下手だから?」

ジフの肩に顎をのせて、ジフの雄っぱいにブラジャーみたいに手をのせる。そして、人差し指で乳首を擦る。

「下手だな。どうしょうもねぇ」
「ええ!何が駄目なの?なんで?俺、ちょっと豹兒に擦られただけで、酷かったのに!」

ムキになって、ジフの乳首を摘まんだ。

「おい……弟分のそんな話ききたかねぇよ。つーか、てめぇ、あの豹兒にやられてよがってるなんざ、チョロすぎだろ」

ジフが鼻で笑った。

「チョロくない!っていうか、豹兒……見てるだけで……エロいもん……」

あの、ちょっと潤んだ熱くて、強い眼差しとか……濡れた紅い唇とか…迷いながら触れてくる大きな手とか。エロ過ぎる。

「だから、気持ち悪いこと聞かせるなつーの、俺はアイツがエロいなんて感じたことねぇよ」
「…そっか…そうだよね。あっ!ジフ、じゃあ蒼陽は!?」
 チャンスだ!ここはジフの気持ちを確認するチャンスだ!俺は仕方なく雄っぱいを諦め、ジフの肩を優しく撫で擦る。
「ああ?」
「蒼陽はエロい?抱きたい?抱かれたい?」
「てめぇ……ふざけるな。なんで俺が抱かれるんだよ、気持ちわりぃな」
 ジフのノースリーブから出ている逞しい腕に鳥肌が立っている。本当だ……本当に嫌なんだ。じゃあ、ジフ×蒼陽?
「じゃあ……蒼陽のこと抱く?」
 ジフと蒼陽のセックスバトルみたいな睦み合いかぁ……や…やば!
「だー、お前。その顔で抱くとかいうなよ……こっちがセクハラされてるつーのに、逆の気分になるぞ。いいか、変な妄想するな。俺はあんな、でけぇ筋肉質の男に欲情しねぇ」
 ジフは立ち上がり、俺を一瞬でテーブに押し倒した。俺がビックリして目を見張っていると、ジフの顔が鼻先が触れるほど近づいた。
「……お前が豹兒で物足りなくなったら言えよ……壊してやる」
 獣に喰い殺されるのかと思って、全身に震えが走った。傷のある唇が引き攣れて動く様子をジッと見ていると……最後には意地悪く微笑んだ。 
「ふぉおぉ!」
 同級生の豹兒とのエロトーク、エロ遊びに飽きたら、俺が大人のお宝見せてやるぜ的なやつ!悪い大人のやつ!!やばぁ……格好いい……震える!
「さっさと寝ろ餓鬼。すくすく育てよ」
 俺の体は、ジフによって起こされて、俺の手には煮干しのような小魚がパラパラと落とされ、背中を押されて追い出された。ジフの顔は、もう険しくない。頭痛は治まったのかな?
「おやすみなさい、ジフ」
「あぁ」





しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

処理中です...