太陽と可哀想な男たち

いんげん

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キスしたい

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ホテルのビーチは最高だった。
程々に人が居て、視線は感じたけどナンパされたり声かけられる事も無く、二人で海を思いっきり楽しんだ。
泳ぐ早さを競ったり、浮き輪でプカプカ浮いてクルクル回されたり、海辺の生き物を観察して昆虫との違いを話したり。

夕方に部屋に帰って来た時には、くたくただった。

「海さいこぉぉ…楽しすぎる…」
「おーい、まだ寝るなよ。腹減った。起きてろよ」

シャワーを浴びて、ベッドにダイブすると蟻地獄に落ちたみたいに意識が沈んでいった。
これからシャワーの亮平が何か言っていたが、夢で聞いたのか現実だったのか…。


□□□□


「…レオン……起きて…」
「……ん」
「……レオン」

揺り起こされ、ゆっくりと目を開くと、亮平の顔が間近にあった。
さっきは明るかったのに、部屋の中は、紅くなっている。

「……おはよ……」
「……なぁ…レオン……キスしよう」

亮平がまだ眠い俺を抱き起こし、ベッドの上で向かい合って座った。
大きなあくびをして、頭を振って亮平を見た。

どうした…俺の寝顔を見ながら、愛しくなっちゃった系?

「……レオン…」
俺の頬を亮平の手が愛おしそうに撫でる。くすぐったくて、幸せで段々目が覚めてきた。

「俺……レオンとキスしたい…」

何時もは真っ黒な亮平の瞳が、部屋に差し込む夕日のせいで少し赤っぽく輝いている。綺麗だな。
頬を撫でる亮平の手が、俺の項に回された。

「亮平、なんか…俺……凄いドキドキする」

恥ずかしくて笑いながら目を彷徨わせた。亮平の顔が真っ直ぐに見つめられない。
酸素が足りないみたいに、ちょっと息苦しい。

「こっち見て…」
「……」

優しい声で言われ、ちらっと視線を上げて亮平の目を見た。
真っ直ぐに俺を見つめる瞳と目が合うと、もう捕らえられたみたいに視線が外せない。
亮平の真剣な想いが伝わってきて、肌がピリピリする。

「ずっと見てて…」

亮平の顔がゆっくり近づいて、すこし傾いて…本当は目を瞑りたかったけど、見てろって言うから……唇が触れあうまで目が閉じられなくて……すごく…リアルにキスしていると感じた。

ずっと親友として隣に居た亮平と、恋人になったのだと感じた。
友達の時にしたキスとは全然違う。

「……」

一度少し離れた亮平が、角度を変えてもう一度、ちゅっと口付けた。
優しく触れるだけのキスから伝わる亮平の気持ちが、胸に温かく広がってくる。

離れていきそうになった亮平の首に腕を回した。
今度は俺から亮平にキスをする。

唇に

頬に

見つめ合って微笑んで、また唇に。

俺達はクスクス笑いながら、沢山キスをした。
すごく幸せな気分だった。

「…好き……亮平のことが…ちょー好き!」

俺は、亮平を押し倒す勢いで亮平の胸に飛び込んだが、倒れなかった。

「……」
「ん?なんでソコ黙る!俺も好きっていえよ」

ワザと怒った顔をして亮平を見上げた。

「俺、そういうレベルじゃないから」
「…どう言うこと?」
「はじめて会ったときから、お前しかないから。初恋も、初キスも、はじめて明確に誰かをおかずにしたのもお前が初めて」
至極まじめな顔で淡々と語られて、なんだかコッチが恥ずかしいんだけど!
なんだ…こいつ何なんだ…。
「レオンに出会ってから、俺の世界の中心だからな。好きも愛しているも通り越した気がする」
「通り越すなよ!良いから、言葉ちょうだい!好きとか愛してるもいえっつーの!お前、俺のこと大好きだろ!」
胸ぐらを掴んで、ギャンギャン吠える俺が亮平の目に映っている。
なんだ、コレ?俺…馬鹿っぽくないか?

「……あぁ……好きだ。愛している」
「もっと!感情込めろ!見てろ……亮平、好きだ、愛してる」
亮平のTシャツから手を離して、亮平の手を握って真剣に言ってみた。

「……」
すると、俺を見つめる亮平の目から、涙が一粒零れ落ちた。

「なんで泣くんだよ……」
驚いてシャツの裾を引っ張って拭いてやる。

「いや……感動で?……くっ……はは……やっと手にできた…」

ボロボロ泣き出した亮平の涙をTシャツで受け止めつつ、ちょっと反省した。
出会ってから今まで…自らの素行を思い出すと、何とも酷い…。
セフレつくってフラフラと……あっちで襲われ、こっちでストーカーされ……その度に何とかしてくれたのは亮平で…。

「……ごめんな…」
「なんで謝るんだよ。今まで親友のふりしても一緒に居たかったのは俺の方だから」
「……これからは、大丈夫!亮平を泣かせなりしない!」

亮平に抱きついて、背中をポンポンと叩いた。

「……あぁ……大丈夫だ。もう遠慮しないし…」
「……そ…そっか」

なぜだか、ゾクッとしたのは海入りすぎて体が冷えたからかな?
うん、そうだ。そうに決まっている。







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