46 / 50
キスしたい
しおりを挟むホテルのビーチは最高だった。
程々に人が居て、視線は感じたけどナンパされたり声かけられる事も無く、二人で海を思いっきり楽しんだ。
泳ぐ早さを競ったり、浮き輪でプカプカ浮いてクルクル回されたり、海辺の生き物を観察して昆虫との違いを話したり。
夕方に部屋に帰って来た時には、くたくただった。
「海さいこぉぉ…楽しすぎる…」
「おーい、まだ寝るなよ。腹減った。起きてろよ」
シャワーを浴びて、ベッドにダイブすると蟻地獄に落ちたみたいに意識が沈んでいった。
これからシャワーの亮平が何か言っていたが、夢で聞いたのか現実だったのか…。
□□□□
「…レオン……起きて…」
「……ん」
「……レオン」
揺り起こされ、ゆっくりと目を開くと、亮平の顔が間近にあった。
さっきは明るかったのに、部屋の中は、紅くなっている。
「……おはよ……」
「……なぁ…レオン……キスしよう」
亮平がまだ眠い俺を抱き起こし、ベッドの上で向かい合って座った。
大きなあくびをして、頭を振って亮平を見た。
どうした…俺の寝顔を見ながら、愛しくなっちゃった系?
「……レオン…」
俺の頬を亮平の手が愛おしそうに撫でる。くすぐったくて、幸せで段々目が覚めてきた。
「俺……レオンとキスしたい…」
何時もは真っ黒な亮平の瞳が、部屋に差し込む夕日のせいで少し赤っぽく輝いている。綺麗だな。
頬を撫でる亮平の手が、俺の項に回された。
「亮平、なんか…俺……凄いドキドキする」
恥ずかしくて笑いながら目を彷徨わせた。亮平の顔が真っ直ぐに見つめられない。
酸素が足りないみたいに、ちょっと息苦しい。
「こっち見て…」
「……」
優しい声で言われ、ちらっと視線を上げて亮平の目を見た。
真っ直ぐに俺を見つめる瞳と目が合うと、もう捕らえられたみたいに視線が外せない。
亮平の真剣な想いが伝わってきて、肌がピリピリする。
「ずっと見てて…」
亮平の顔がゆっくり近づいて、すこし傾いて…本当は目を瞑りたかったけど、見てろって言うから……唇が触れあうまで目が閉じられなくて……すごく…リアルにキスしていると感じた。
ずっと親友として隣に居た亮平と、恋人になったのだと感じた。
友達の時にしたキスとは全然違う。
「……」
一度少し離れた亮平が、角度を変えてもう一度、ちゅっと口付けた。
優しく触れるだけのキスから伝わる亮平の気持ちが、胸に温かく広がってくる。
離れていきそうになった亮平の首に腕を回した。
今度は俺から亮平にキスをする。
唇に
頬に
見つめ合って微笑んで、また唇に。
俺達はクスクス笑いながら、沢山キスをした。
すごく幸せな気分だった。
「…好き……亮平のことが…ちょー好き!」
俺は、亮平を押し倒す勢いで亮平の胸に飛び込んだが、倒れなかった。
「……」
「ん?なんでソコ黙る!俺も好きっていえよ」
ワザと怒った顔をして亮平を見上げた。
「俺、そういうレベルじゃないから」
「…どう言うこと?」
「はじめて会ったときから、お前しかないから。初恋も、初キスも、はじめて明確に誰かをおかずにしたのもお前が初めて」
至極まじめな顔で淡々と語られて、なんだかコッチが恥ずかしいんだけど!
なんだ…こいつ何なんだ…。
「レオンに出会ってから、俺の世界の中心だからな。好きも愛しているも通り越した気がする」
「通り越すなよ!良いから、言葉ちょうだい!好きとか愛してるもいえっつーの!お前、俺のこと大好きだろ!」
胸ぐらを掴んで、ギャンギャン吠える俺が亮平の目に映っている。
なんだ、コレ?俺…馬鹿っぽくないか?
「……あぁ……好きだ。愛している」
「もっと!感情込めろ!見てろ……亮平、好きだ、愛してる」
亮平のTシャツから手を離して、亮平の手を握って真剣に言ってみた。
「……」
すると、俺を見つめる亮平の目から、涙が一粒零れ落ちた。
「なんで泣くんだよ……」
驚いてシャツの裾を引っ張って拭いてやる。
「いや……感動で?……くっ……はは……やっと手にできた…」
ボロボロ泣き出した亮平の涙をTシャツで受け止めつつ、ちょっと反省した。
出会ってから今まで…自らの素行を思い出すと、何とも酷い…。
セフレつくってフラフラと……あっちで襲われ、こっちでストーカーされ……その度に何とかしてくれたのは亮平で…。
「……ごめんな…」
「なんで謝るんだよ。今まで親友のふりしても一緒に居たかったのは俺の方だから」
「……これからは、大丈夫!亮平を泣かせなりしない!」
亮平に抱きついて、背中をポンポンと叩いた。
「……あぁ……大丈夫だ。もう遠慮しないし…」
「……そ…そっか」
なぜだか、ゾクッとしたのは海入りすぎて体が冷えたからかな?
うん、そうだ。そうに決まっている。
10
お気に入りに追加
173
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です
はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。
自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。
ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。
外伝完結、続編連載中です。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!

君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる