太陽と可哀想な男たち

いんげん

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親友の怒り

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親友くん、実家から帰って来るなら大変だろうから、とヒコさんが俺を家まで送ってくれた。

それから待つこと一時間くらいだろうか……

外階段を登る足音が聞こえてきて

そして……玄関の向こうから『ゴゴゴゴ…』と黒い気配が漂いはじめた。

亮平の怒りのオーラを感じる。

「やべぇ…」

まじで怖いんですよ。
人当たりよくて、優しいで有名な亮平は、大学でもバイト先でも、怒った姿見たことないとか言われるし、人畜無害な聖人君子な感じだけど……意外と俺には怒るよ。

基本、優しいし理不尽な怒りじゃないけど、雄スイッチ入るとマジで雄!
目がすわって、肩が広がり、ガニ股になり…戦闘態勢みたいな感じなんだ!

昔…四人目のセフレと別れたあと、ストーカーみたいになって、襲ってきた時に、亮平が、ぶん殴ってボコボコにした挙げ句、股間を踏みつけたのを見た時は、俺のティンコもひゅってなった。
当時、ボクシング習って、ジムの人にプロにならないかと口説かれてたから……完全に一方的な勝ちだったよね。
その時に、怒られてから、俺セックスしてない。襲われたのも怖かったけど、亮平が相手を殺すんじゃないか心配になった。

カチャ…

玄関のドアが開いた。

「亮平おかえり!」

リビングの椅子に座った状態で、できるだけ明るく挨拶をした。

「……ただいま」

おぉぉう。なんと地を這うようなバリトンボイス!
そして戦闘態勢。
右手を肩に乗せてボストンバッグを背後で持っている。
普段は、荷物そんな持ち方しないじゃないですか!

「……」
完全にお怒りのご様子の亮平さんが、バッグを投げ捨て、靴を脱いだ。
無言で俺の前に立つ。

「……どうゆうこと…」

亮平の手が椅子の背もたれを正面から掴んだ。
椅子に座る俺は、亮平の腕に囲われた形になる。
逃げ場がなく、視線だけで亮平を見上げる。

「…いやぁ……どうゆうとは……どうゆうことかなぁ」
「怪我、嘘、おっさんちに泊まり込み……洗いざらい全部しゃべれ」

ちょっと怖くて顔を背けたら、亮平の顔が傾いて着いてきた。
ひぃぃ。

「あー、えーっと…バイト終わって駅の階段を上がっていたら…。上からおばあちゃんが降ってきまして……どんぶらこ…どんぶらこ…って」
亮平の目が据わったまま、ピクリとも動かない。
「…で」
「ヤバい!と思ってキャッチしたけど…支えきれなくて……足がぐきっとなりまして」
ちらっと亮平の支線が俺の足に向けられて戻ってきた。
「何で、その時点で連絡しないわけ…」
「だって……石川着いたばっかりで心配掛けたらあれだなぁ……亮平さんトンボ帰りしそうだし…」
「……」
「それで病院に運ばれまして……ちょうど連絡があったヒコさんに迎えに来て貰って……一回ここに帰ってきたんだけどさぁ、亮平居ないで一人だってバレたら……うちに来いってなって…」
亮平から深いため息が聞こえてきた。
腕の筋肉が…モリってモリってなったよ!
「なんで付いてくんだよ!お前…今まで……どんだけ襲われてると思ってんだっ!」
亮平から真剣に怒っている気持ちが伝わってくる。
いや…ヒコさんはそんな人じゃ無いから大丈夫って言いたいけど…俺の前科がありすぎて言えない。
確かに、過去何度も危ない目にあって、いつも助けてくれるのは亮平だった。

「わ…悪い……」
「あぁ!?」

亮平さん!亮平さんのキャラが!ロールキャベツのキャベツの所剥けちゃってます!雄剥き出しです!
多分、俺だけが知っている…意外と荒い熱いとこ出ちゃってますよ!

「……」
俺は何とかロール部分を取り戻そうと、暑くて手元に置いておいた、カブト虫手ぬぐいを頭から顎まで巻き付けた。
「……お前……今日は騙されねぇぞ…」
巻いた手ぬぐいは、荒々しく投げ捨てられた。
もう噛みついてきそうな勢いだ。
「ご…ごめん……」
「ごめんも聞き飽きた。いい加減、危機管理能力高めろ!お前のその人との距離感近いのは良い所だけど、相手は勘違いする!お前は友達のつもりでも相手はそうじゃなくなるんだよ!」
「いや…でも…」
俺、男だし。
俺は恋愛対象男だけど、普通は男が恋愛対象になると思わないじゃん…。
俺、セフレはゲイ。友達はノーマルな人を選んでるつもりなんだけど…偶に間違ったのか、開花しちゃったのか……問題が起こる。未だに何故そうなるのか…。

「お前、自分の顔の自覚あるくせに、甘いんだよ!どれだけ周りと違うか分かってんのかよっ!そんな外見で誰にでも心開いてグイグイ入り混むな。しかも……普段壁作っているような気難しい奴ばっかり地獄に落とすような真似しやがって……」
「…亮平さん……もう俺泣きそう…」
グサグサ刺さる言葉に、目には大量の涙が浮かんできた。
「俺は!お前が他の奴らに傷つけられる所なんて我慢なんねぇんだよ!」
グッと頭を抱きしめられた。
亮平の腕が怒りで震えている。
「……亮平」

俺は亮平を抱きしめ返すように腕を回した。
力が入り強ばっていた亮平の体が、少しずつ緩んでいく。

「…すげぇ心配した」
「……うん……」

ごめんなのか、有難うなのか……悩んで、言葉にしなかった。

その代わり俺達は、長い時間ピッタリと重なり合うように抱きしめ合った。


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