太陽と可哀想な男たち

いんげん

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親友とキス

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「それ何?」

バイトが終わり、亮平と2人で夕食を済ませた。
洗い物をするのに、リュックからカマキリちゃんのランチボックスを出すと亮平が不思議そうに覗き込んできた。

「カマキリちゃんにお弁当貰った」
「カマキリちゃん?……女?」

亮平の顔色が変わった。
そうか、それは不思議だよな。俺、雄しか興味ないの見てきているからな。

「上のフロアのシー?スー?シェフの人。カマキリにそっくりな顔してんの。フランス帰りの殺し屋」

カマキリちゃんを思い出して、クスクス笑いながらランチボックスを洗う。

「はぁ?さっぱり話が分からない」
「5人くらい殺してそうな顔してるんだけど、なんか可愛いオジさん」
「へぇ…餌付けされているのかよ」
「うーん、多分カマキリのピアスあげたからお礼じゃねぇ?」

まぁ、多分あのピアスが彼の耳を飾る日は来ないと思うけど。
でも、アレはカマキリちゃんが持っているのが似合っているからな。

「はぁ、気をつけろよ…お前、しょっちゅうストーカー作るから…」

亮平が俺の後ろに立って腰に抱きついてきた。
おぉ…亮平がデレたぞ!
ムキムキの筋肉が今日もキレキレだな。

「そう!それなんだよ。俺、上の店長さんなのかな?そのメチャクチャ美形のお兄さんのストーカーに勘違いされたんだよ!まじで、ビビるよ。この俺が白旗の格好良さだったから」
「へぇぇ……その美形を狙っているわけだ…セフレに…」
「痛いぃぃ、痛い!ちょっと…亮平さん!」
俺の耳たぶが思いっきり下向きに引っ張られている。
今、ピアスもついてますし!痛いです!
「お前…もうちょっと……いいや、何でもない……」
俺の耳から、カマキリピアスが外されて、消毒され、透明の樹脂ピアスにされた。

んんー、まさか嫉妬?
亮平、意外と寂しんぼな所あるしな。

「亮平たーーん」
テーブルで俺のピアスを小分けのケースにしまう亮平の背中におぶさった。
隠れ細マッチョは、少しもぶれない。

「なんだよ……暑苦しい」
「一緒にお風呂入る?防水タガメ3号と遊ぼうぜ」
「ふざけんな!アホか!」
乱暴っぽく、そっとラグの上に落とされた。
もー優しいだから…亮平さんってば。

前に心霊番組見て、超怖くなって亮平が風呂入っているときに乱入して、調子に乗って亮平の巨根の長さ測ろうとした事を根に持っているのか。いいじゃんかよ、巨根は男の誇りだろ。日本人なのにヘラクレスオオカブトレベルの巨根、すげぇじゃん。全く羨ましいぜ。

「亮平たん、俺眉毛も染めたいんだけど…今度、青とピンクどっちが良いと思う?」

ラグの上を転がって、テレビ台の黒いガラスに映った自分を、うつ伏せで覗く。

「はぁ?折角金髪にしたダーメージ修復してサラサラに戻したんだぞ。しかも眉染め痒いらしぞ。お前、絶対に痒い痒い騒いで引っ付いて来るだろ」
「そんなに期待してワクワクしないでよ。痒くなくても何時でも抱きしめてあげるよ」

ごろんと仰向けに転がって両手を広げた。
亮平が俺を睨んでいる。

「……」

蹴られるかと思ったのに蹴られない。
真剣な顔をした亮平が、俺の腹を跨いだ。
ん?えっ…亮平さん…おこですか?プンプンですか?

「っ!」

ドン、と覆い被さった亮平の顔が目の前に有る。
さっぱりとした優しい顔が、真剣な表情でキリリっと格好よく見える。

ど…どうした…亮平。
なんか…ドキドキするぞ…優しい人が怒ると怖いってやつか?俺、今…すげービビっているのか。

亮平の顔が近づき、前髪が触れる程になった。

「……りょ…」
「…ぷっ……お前、いつも自分からガンガン行くから、相手から来られるの弱いよな」
「…おおおおい!!」

まさかの亮平にからかわれた俺は、プライドが刺激され、亮平の頬を掴んで、その唇にキスをした。

「んぐっ!!」

一瞬目を見開いた亮平は、そのまま俺の目を見つめた。
息が止まる。
心臓が締まるように痛い。
亮平の顔が少し傾き、俺達の唇が再び触れあった。
柔らかいそこから、亮平の温もりが伝わってくる。

男の顔をしている親友の表情を…見てはいけない気がして、目を閉じた。

すると…もっと…亮平を感じる。

亮平の息づかい

少し離れては、再び重なり合う唇。

俺達…どうしてキスしているんだ。

「……ん」

どうして…俺は…キスだけなのに……亮平と一つになったような…この距離に満たされているんだ?
キスなんて、セックスの始まりの合図なのに。
別に、誰とだって出来るコミュニケーションだろ…。

ずっと隣にいた亮平が、目の前にいる。

「……」

亮平のキスが止まって、唇が寂しくなった。
薄らと目を開くと、なんだか悲しそうな顔をした男が居る。

「……キスって温かいんだな……もう一回して」

素直な気持ちを吐露して、亮平を抱き寄せようと腕を伸ばす。

「…この……糞ビッチ!!」
「ってえぇ!!」

俺に贈られたのはキスじゃ無くて、デコへの頭突きだた。しかも、いつもの優しい攻撃じゃ無くて、結構痛いやつ。亮平が俺の上から退いたので、俺はデコを押さえて海老みたいなポーズで唸った。

「アホ!レオンのアホ!今日は話しかけるな!」
「えぇー、痛いぃ……ごめんなさいぃぃ」

椅子の上に用意していたであろうパンツを掴んで亮平が風呂場に消えていった。

うぅ…デコが痛い。

「……」

何か寂しい。
いいじゃんか、もう一回キスしてくれたって、減るものじゃねーし。
キスして、抱き合って、ゴロゴロしながら、一緒に本読みたかった。
セックスするわけじゃないし、亮平としても良いラインくらい…だよなぁ?
うん、俺もアイツもチンコ勃起してないし、OKだろ。

「……もっかいしたいぃぃ」

あぁ…もう禁欲生活長すぎて、人の温もりに飢えているのか、俺?

キスしたいなぁ。

亮平してくれないし、誰か居ないかなぁ。セフレとまで言わずも、チュッチュ、いちゃいちゃしてくれる人。

「はっ!」

楠木さんか、カマキリちゃん!




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