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僕の華
しおりを挟む「…もう大丈夫そうだな…」
朔夜兄さんが、煌一の鎖に手をかけてガチャリと音がしたかと思うと腕が鎖から解放された。
僕の頭も何だかスッキリと冴えてきた。
自由になった煌一の腕が僕をギュッと抱きしめた。
少し痛いくらいの力に抱かれて胸が喜びに満たされる。
「……煌一」
良かった…。
また会えて。
僕が煌一の胸に顔を埋めて安堵していると、朔夜兄さんが僕らから離れていった。
何度も僕の方を振り返りながら、寂しそうに此方を見て…やがて部屋から出ていた。
「……あさひ、俺を見ろ」
煌一の腕の中で去って行った朔夜兄さんを見ていると、顎を掴まれて上を向かされた。
「……煌一…体は大丈夫?」
少し痩せたように見えるけれど、僕を見つめる力強い眼差しは、いつもの煌一だった。
「ああ、お前は大丈夫なのか…あさひ」
煌一の手が顎から頬へと優しく移動した。
温かい大きな手、本当に無事で良かった。
「うん…なんだか…よく覚えてないけど…とっても調子がいいみたい…」
たぶん華の蜜を沢山貰ったんだろうけど…。
「そうか…」
もう会えなかったらどうしようかと思った…
僕の大好きな煌一。
小さい頃からずっと一緒だった。
今更、煌一のいない世界なんて考えられない。
僕の素直な気持ちを伝えなきゃ…たとえ、煌一が僕の事を好きじゃ無くても。
「…悪かった」
「え?」
眉間に皺をよせた煌一が僕に謝った。
どんな顔をしていても、いつもの整えられた髪型でなくても、彼の精悍さや美しさは失われていない。
「もうお前に会えないかと思ったら…今までお前に素直になれず……厳しい態度をとった事を後悔した……すまない…」
「そんなこと無いよ!煌一はいつだって僕を助けてくれたよ…」
僕が今生きているのは、煌一に守られて、蜜を貰っていたからだ。
すごく感謝している。
「…本当は、もっとお前に優しくしたかった……俺は……お前を愛している」
ドクンと僕の鼓動がはねた。
思わず目を見開いて煌一を見てしまう。
うそ…
これは夢?
僕が見ている都合の良い夢なのかなぁ?
だって、煌一は里見大尉の事が好きなんだよね…
「…煌一は里見大尉のことが……好きなんじゃないの…」
恐る恐る言葉にしてみたけれど、肯定されるのが怖くて目を逸らす。
「…はぁ?なんだそれ……俺は初めてお前に会ってから、ずっとお前の事しか好きじゃ無い…」
「……」
涙が溢れそう。
嬉しくて、嬉しくて…。
「お前にとって、俺が多くの華のひとりに過ぎなくても」
煌一の手が僕の頬から離れた。
「って…まって!僕も!僕も煌一が好き」
まだ僕の気持ちを伝えて無い。
ちゃんと言わなきゃ!
「僕も…煌一が好きです……っん……」
僕の口が煌一のもので塞がれた。
煌一と口づけをしている。
思わず目を見開いてしまったけれど、その感触に酔いしれるように瞼を閉じた。
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