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異変
しおりを挟む「人間ってよく分からないよね……」
朔夜兄さんが言い出した。
久々に屋敷に居た朔夜兄さんと、チェロとピアノでセッションをしてたのしんだ。
朔夜兄さんの豊かで表現力の高い音色に乗せられて、凄く楽しい時間だった。
紅茶をすする兄さんは心底不思議そうだ。
「なにがあったの?」
「この前の討伐の時に、夜中だっていうのに人間が集まって、ひとつの屋敷を襲撃してたんだ」
夜中に外に出歩いてはいけない。
それは子守歌にも、こどもの遊び歌にもあるし、灰を題材にした物語も沢山あって、どの国でも共通の常識だ。
灰は動くものを見つけて襲ってくる。
窓を全部閉めて、一切見られないようにすれば、危険は低い。
なのにどうしてだろう?
「深澤中佐が言うには、人間のならず者たちにも組織があって、その利権争いで襲撃があったんだって」
「華蝶一族が蝶を奪って争うような?」
どんな所にも争いってあるんだな。
でも、灰に食べられるかもしれないって思わないのかな?
「まぁ。もちろん、そんなに沢山人が騒いでいれば、灰も現れるんだけど……」
それって、凄く怖い場面なんじゃ……
想像するだけで震えるのだけど…
「私は、放っておこうかと思ったけど、深澤中佐も里見大尉も人が良いから…止めに入ったけど、中には酔っている人間もいるし、変なものに手を出している人間もいるしで……もう大騒ぎだったよ」
「朔夜兄さんと討伐隊の人は大丈夫だったの?」
「あまりに騒がしくて、何人か食べられちゃって数匹逃がしたけど、此方の被害は無かったよ」
食べられた……
改めて聞くと、とても生々しくて恐ろしい。
でも、今までは週に何人も灰に食べられた被害が新聞に載っていたけど、華たちが動くようになってからは、激減した。
みんな帝都の為になることをしているんだなぁ。
「みんなの事が心配だよ……帝都の為には良いかもしれないけど……」
灰を狩って、数を減らせば蝶の出生数が増えるとは限らない。
「まぁ。人間が余計なことしなければ楽勝なんだけどね、つくづく不思議な生き物だよ」
「朔夜兄さん、あんまり無理しないでね」
灰は減ってほしいけど、みんなに何か有るくらいなら今のままでも……
でも、今のままだと華蝶は滅びるのかな?
それとも華だけ残るの?
「うれしいな、あさひに心配してもらえて」
「朔夜兄さん、僕本気で心配してるんだからね」
兄さんが満足げに僕に笑顔を向ける。
他の華よりも兄さんが一番無茶をしそうで怖い。目的の為には手段も犠牲も辞さないような……
「ありがとう、あさひ」
「そういえば、おかしくなった華の事はどうなったの?」
恐ろしいあの話。
おかしくなった華と、おかしくなった蝶。
「今日あたりに深澤中佐のところに、蘭国の華蝶一族の書物がとどいてる予定だよ。向こうでも同じような事が起こって治った症例があるらしい。深澤中佐あの顔で蘭国の語学が得意らしくて……ぷっ…」
朔夜兄さんが吹き出して笑っている。
それは、失礼では……深澤中佐だって華なんだから優秀なはず。
語学だってみんな堪能だし。
屋敷には沢山の外国の書物が置かれている。
僕には和国の言葉しか分からないけど。
「だって、あの顔だよ。しかも彼、絵とかも描くらしいよ……似合わない」
「朔夜兄さん!失礼だよ!もしかしたら……すごく繊細な……絵を……ぷっ」
だめだ、笑っちゃった。
でも、ちょっと見てみたいかも深澤中佐の絵。
「あさひ様、煌一さまが出かけられます」
「あっ、はい。行きます。じゃあ、朔夜兄さん有り難う、僕いくね」
「……ああ、行っておいで」
今日は煌一が討伐に行く日だ。
毎回、お見送りに出ている。
あれ以来、酷く怒られる事もなく表面上は上手く行っているけれど…。
心の距離が開いた気がする。
煌一は玄関で里見大尉と楽しそうに談笑している。
僕の胸がチクリと痛む。
「あっ、こんばんは、あさひ様」
里見大尉が僕に気がついて、頭を下げた。
煌一もこちらを見るけれど、その目には何の温度も感じられない。
もういっそ、怒られていたときの方が良かったかも。
「深澤中佐は居ないのですか?」
いつもは会うたびに騒がしい人物が居ないと何だか物足りない。
「隊長は書物が丁度届いたので、今日は煌一様と私の二人で行くことになりました」
「二人で!?隊の方は……」
何時もは何人かの人間たちが居たはず。
なんで二人きり?
「隊長が居ないなら、余計な人間が、居ないほうが良いと、煌一様が」
僕の頭に石が降ってきたような感覚だ。
余計な人間が居ないほうが良い……
それって里見大尉と二人きりが良いという事だ。
華と蝶の関係でも良いと思ったけれど、こんに…まざまざと見せつけられると……泣けてきそう。
「あさひどうかしたのか?深澤に会いたかったのか?」
僕の様子を不審に思った煌一が覗き込んで来た。
「ううん…何でも無いよ!二人共気をつけてね」
「…あぁ行ってくる」
「ありがとうございます。失礼します」
二人が屋敷を後にしていく。
その後ろ姿を見るのが辛い。
でも、僕は煌一と一緒に戦えないし、煌一の部屋で大人しく待つしかない。
僕は、煌一の部屋へと向かった。
煌一の帰りはいつもより、遅かった。
待っている間に余計な事ばかり浮かんでくる。
早く帰って来ないかな。
煌一の部屋で、煌一の布団の上に座り彼の帰りを待つ。
お風呂に入り全身を磨いてある。
この状況だけは、まるで夫婦だ。
もしも、僕が蝶と華の関係を超えて好きだと言ったらどうなるのかな?
やめよう、傷つくだけだから。
ガタガタと音がして襖が開いた。
「おかえり、煌一怪我はない?」
襖を開けたまま、煌一が立ち竦んでいる。
部屋は、ほのかな灯りのみで薄暗く、うつむいているために、少し長めの前髪がかかり表情が良くわかない?
バサっと抱えていた外套が落とされた。
「どうしたの、煌一?まさか怪我でも?」
心配になって腰を浮かせると、あっという間に布団に押し倒された。
「煌一!?」
煌一が性急に僕の着物を剥いだ。
無理矢理ひかれた帯が痛い。
「どうしたの!?」
煌一は僕の華だと言ってから、蜜を吸うときに優しくなった。
それなのに…今日は違う。
煌一が僕の胸に口を寄せて、乱暴に乳首を転がした。
「あっ!」
右手が僕の性器を掴み、左手がもう一つの乳首を摘んだ。
「やぁああっ!」
何で!?
いつもは煌一の蜜を吸うのが主体なのに。
唾液で濡らされ舌と歯で乳首をしごかれると、ビリビリとした快感が走り、乳首もペニスも硬くしこりはじめた。
「あっ、煌一!やぁあっ」
煌一の大きな手が僕のペニスの皮を上下に動かす。
乳首とペニスを弄られて、僕の体が高まる。
「あっ…やっ…ああ…ん…煌一!」
どうしてこんな睦み合うみたいな事を!?
灰を食べすぎて里見大尉への欲望が抑えきれなくなってこんな事を!?
煌一の手が容赦なく僕の快感の芯を刺激する。
高まる射精感が我慢できない。
「いやっ…駄目!あああ!出ちゃう…ああっ」
コリッと乳首を食まれた。
びゅるびゅると精液が出てくる。
「あっ…ああ…うっ……あっ」
煌一の手が僕の精液で濡れると、その手が僕のお尻へと回された。
プツッっと滑る指が一本入ってきた。
「いやああ!やめて!」
僕は、あさひだよ!
里見大尉と間違えないで!
全力で腕を伸ばして煌一を引き離そうと思ったけれど、ビクともしない。
煌一の中指がやわやわと僕のお尻の中で動く、ピリピリと痛んでペニスが萎える。
「離して煌一!!落ち着いて!蜜を吸ったら落ち着くから!ね!」
やっぱり灰を食べすぎたのだろうか?
煌一の目に覇気がなく、僕をしっかり見ているのか分からない。
僕は、煌一の着物を引っ張り痣を、露出させると、すぐに吸い付いた。
「んん!?」
「くあああっ」
煌一の指が抜けた。
僕の横に手をついて蜜を吸われる快楽に耐えている。
蜜の味が変だ。
いつもは甘くて美味しいのに、今日はちょっと苦い。
あまり美味しくない。
灰を食べすぎたせいだろうか?
まさか人間と交わると味が変わったりとか??
まさかそんな事ない。
「ぐっ…あっ……はぁはぁ…うぅ」
煌一が苦しんでいる。
ペニスはパンパンで蜜も僕の口に流れ込んでくる。
きっと討伐を頑張り過ぎたんだ、僕が吸ってあげないと。
不味いなんて失礼だ。
大丈夫、煌一の為ならこれくらいなんてこと無い。
「んっ…ちゅっ…あっ…んん」
「あぁああ!うぅっ…あっ」
口いっぱいに広がる苦味。
僕は、なるべく呼吸をしないように飲み込んだ。
舌も使いコクコクと吸い上げる。
一滴も残さないように……
「うあああっ!ぐっ…うくっ…ん…う…」
煌一が腰を振り、僕の下腹部に擦り付ける。
ドクドクと精液が飛び出し、僕の体が煌一の精液だらけになる。
なぜだろう、精液がついた所がピリピリする。
「ああっ!ぐうぅ!」
必死で腰を振り、口を噛み締めて悶える煌一を助けたい。
僕は、必死蜜を飲み続けた。
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