我が為に生きるもの

いんげん

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朔夜の思い

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私の可愛い、あさひ。

ずっと待っていた私の蝶。
この子を見つけたのは私だ。

その日、私は、産まれた村の赤子を調査するために、村へやって来た。
十歳ともなれば蝶を見分けることもたやすい。
大人の華と二人で調査に来て、ある民家に入り、すぐに分かった。
小綺麗な母親に抱かれた、天使のような赤子。

私の蝶だった。

全身の血が沸騰する。

鎖骨の下の痣が騒ぎ、性器から何かが垂れた。

あぁ…そうか…私は、この子の為に産まれたんだ。


それからは、世界がバラ色に変わった。

全てが美しく見える。
あさひの居る世界。
私の蝶。

ただ、苦しさも伴った。

私は、早く産まれ過ぎた。

あさひはまだ蝶として蜜を吸うには早すぎる。
その体に私の華の芯を埋めるには小さすぎる。
蝶の体は弱い。短命で、すぐに病にかかる。

待たなければ、あさひが大きくなるまで。
でも、大丈夫だよ。
あさひの為なら、どんな苦しさも喜びに変わるから。

「朔にぃ」
小さな手を広げて抱きつく可愛い、あさひ。

あさひが転べば蜜を塗り、舐めた。

あさひが笑えば、歓喜に震えた。

あさひが音楽を好きだと知り、チェロを極めた。

あさひの体を全て知って居られるように、毎日一緒にお風呂に入った。

ただ、邪魔な子供が一人居た。
煌一だ。
あさひを自分の蝶だと勘違いしている。

華としては随一の実力を秘めているのは感じるが、所詮まだ子供。私の相手ではない。

ある日、あさひが煌一と外へ抜け出した。
流星群を見たかったようだ。

私は、こっそり二人の後をついて行った。
あさひに危険があってはならないからだ。
楽しむ二人の姿を見て、焦りがうまれた。

そして灰が現れた時に、直ぐに助けに出られたが、行かなかった。

煌一が灰に始末されれば都合が良いと一瞬考えたからだ。

しかし、思い直して助けに入った。

あさひを守り、満たすためにもう一人くらい華がいても仕方ないと。

そのためには愚図な華よりは、将来優秀な華が良い。
だが、負ける訳にはいかない。
私は、楽に勝てる灰が相手だったが、わざと少し怪我を負った。

あさひの心に残るように。

「朔にぃ!」
その作戦は成功したが、煌一を助けたことは失敗だった。
あれから煌一は、みるみる成長を遂げて、あさひの心に入ってしまった。


しかし煌一は、あさひに関してだけ不器用だった。
どんな仕事も鍛錬もそつなく完璧にこなすくせに、あさひに対しては愚図だった。

よかった。
やはり、あさひは私と結ばれる運命にある。


それからも、あさひを自分に依存させるために、とことん甘やかした。
あさひのペニスの皮を剥いた日は忘れられない。
泣いて痛がり、でも初めての快感も得ていた。
精液が出ずに、あさひのものをかけられた。
もらしてしまったんだね。
あぁ、なんて可愛いんだ、あさひ。

私の異常な愛に気がついたのか、キヨに海外の動向を探る仕事を命じられた。
悔しいことに、蝶には逆らえない。

あさひに吸って貰えないために、しかたなくこの坊主に吸って貰っていた恩もある。

あさひが私の居ない間に、煌一と駒を進めては困る。
では、駒が進みすぎないように、私が二人をお膳立てしよう。
私の不在の間、あさひが生きるために華の蜜は必要だし、仕方ない。

まぁ、あの馬鹿は思春期をこじらせて、更にあさひと距離が開いているから大丈夫だろう。


その想像は当たり、三年の月日がたっても、二人は親密になるどころか、さらに拗れていた。

あぁ、馬鹿な煌一。
でも有り難う、良かったよ。

あさひが大きくなったことだし、もう遠慮はいらないよね。
さぁ、落ちておいであさひ。
私の全部をあげるから。

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