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朔夜兄さんの腕の中
しおりを挟む「あさひの髪は、本当に綺麗で手触りも最高だね」
「……」
椅子の後ろから、僕の髪を櫛で梳かしながら朔夜兄さんが言った。
昨日は一日お尻が痛くて横向きで寝ていた。
今日は少し良くなったけれど、椅子に座っているとまだ痛い。
今日は討伐隊の人たちの都合で、灰の狩りはお休みだ。
なので朔夜兄さんの部屋に呼ばれて遊びに来た。
朔夜兄さんの部屋は、机と椅子とベッド、箪笥が置かれている以外は、僕であふれている。
僕が子供の頃に描いた絵やお手紙。海外へ行く前に、頼まれて一緒に撮った写真。
部屋中に僕との思い出の品が飾られている。
「…どうしたの?あさひ」
髪を梳かす手が止まる。
朔夜兄さんに世話を焼いてもらえるのは好きだ。
いつもとっても大切な弟のように扱ってくれるから。
髪を梳かれるのも大好きだけど、今日はお尻が痛くて楽しめない。
「……ううんなんでもない…」
僕は、うつむいて答えた。
お尻が痛いなんて恥ずかしくとても言えない。
「なんだか元気が無いよ、あさひ、お腹が空いているなら狩りに行こうか?」
「ううん。大丈夫。お腹いっぱいだから」
「そう?一昨日は煌一が、現れた灰を全部退治して食べたらしいからね。無茶するよね」
きっと凄い立ち回りだったのだろうなぁ。
里見大尉を守るために。
さぞ、勇ましく凛々しい姿だったに違いない。
そして、それを見た里見大尉は、どう思ったのだろうか。
「ねぇ、朔夜兄さん里見大尉ってどんな人?」
「里見大尉??あぁ囮のね。どうって……私は人間に興味無いからなぁ。何でも、家族が灰に食べられて灰を、恨んで隊に入ったらしいけど。どうして?」
家族を灰に……。
なんて恐ろしい。
「……煌一が……里見大尉を好きなのかなぁって……」
朔夜兄さんの髪を梳く手が止まった。
コトリと櫛がテーブルに置かれた。
「そっか、好きな人の為には何だって出来るのが華だからね。」
ドキリと鼓動が跳ねた。
やっぱり、朔夜兄さんの目から見ても二人はそう見えるのかなぁ。
「あさひが里見大尉を邪魔に思うなら、私がどうにかしてこようか?」
「えっ?」
「だって、あさひを煩わせる人間なんて罪深い。囮じゃなくて餌になれば良いよ」
朔夜兄さんが僕を後ろから抱き込んだ。
ヒヤリとお腹の底が冷えた気がした。
「そんなの駄目!僕は、ただ……二人はお似合いだと思って」
二人が共に戦う姿は絵になると思う。
僕は、煌一にとってただ蜜を吸わせる蝶だけど、里見大尉は煌一の大切な人だから…。
「そうだね。私は人間となんて嫌だけど。他の蝶も……あさひがいればいい。こんなに蝶と華の数が不均衡になると、人間に恋する華もいるのかもね」
朔夜兄さんの唇が僕の耳をなめた。
「ひゃあ!」
「私はあさひが一番大事で、愛してるよ」
朔夜兄さんは、僕の事を弟のように思って大切にして愛してくれる…。
とっても嬉しい事だけど。
「あさひ、お尻どうかしたの?」
「っ!?」
僕を抱きしめる腕に力がこもる。
「もしかして、煌一に?」
「なんでもない!!大丈夫だよ!」
僕は、腕を払い立ち上がった。
「じゃあ見せて、もし怪我してるなら蜜を塗ってあげるよ。きっと早く治るよ」
朔夜兄さんが僕を捕まえて、あっという間にベッドに転がされた。
「いい!朔夜兄さん!大丈夫だから!」
朔夜兄さんが僕の足の間に立った。
「あさひが心配なんだよ……私が信用できない?あさひを治療したいだけなのに」
小首をかしげ、朔夜兄さんの茶色の髪がふわりと揺れた。
「で、でも!汚いよ。」
蝶は食事をしないから、そこは大きくなってからは使ってないけど……。
「あさひに汚い所なんて無いよ。あさひが赤ちゃんの頃お尻を洗ってたの僕だよ。さあお兄ちゃんにみせてごらん。良い子だね。」
「朔夜兄さん!」
まるで赤子に対するように話しかけられ、着物を割られ足を上げられた。
抵抗するけど華に力で勝てるわけがない。
「わぁ…痛そうだよ。赤くなって腫れてる。おしめがかぶれたのかな。」
「ちがっ!煌一が怒って指で引っ掻いたから……。」
どうしてこんなところを……。
その嫌がらせは十分効いているけど。
「いけない子だね煌一は。知ってる?あさひ。男同士で愛し合う時にはここにペニスを入れるんだよ。」
「えっ!?」
ここに!?
嘘だ、だって入るわけ無いよ。
「練習したかったのかなぁ?」
朔夜兄さんの言葉が、冷たく刺さる。
練習? それって…里見大尉との為に、僕で練習しようとしたの!?
そんな…。
嘘だ!
いくらなんでも酷い!
僕は…僕は…。
「酷いね、煌一は。私の大切なあさひを傷つけるなんて許せないよ。さあ、泣かないで。いつものように蜜を塗って舐めてあげるよ」
小さい頃から怪我をすると朔夜兄さんは、蜜を塗って舐めてくれた。
痛くなくなるおまじない。
実際にいつも蜜を塗られると、そこがあったかくホッコリして痛みが薄れた。
「……朔夜兄さん…」
悲しくて悔しいくて涙が出てくる。
「泣かないで、あさひ。私が居るよ。私はあさひを愛してる。何があっても私が一緒だよ」
朔夜兄さんが僕の涙を舐めて、痣に手を当てて、ぎゅっと押す。
「っ!」
一瞬、朔夜兄さんが眉をしかめた。
どうして痛い思いをしてまで、僕を癒やそうとしてくれるのだろう。
「さぁ、足を持ち上げて」
従うことが当然のように、足を上げて膝のうらを掴み、朔夜兄さんにさらけ出した。
そういえば、僕の皮を剥いたのも朔夜兄さんだった。
痛かったけど、乳歯を抜くのと同じで必要な事なんだって。
痛みに耐えて終わった時には、痛いけど、頑張ったねって蜜を塗って舐めてくれた。
剥けたばかりの過敏な所に刺激が加わって、びっくりして、おしっこを漏らして大変な事になってしまったけど。
朔夜兄さんはニコニコ笑って許してくれた。
そうだった、いつも朔夜兄さんは僕のことを考えてくれている。僕は朔夜兄さんを兄のように、親のように信頼している。
「いい子だね、あさひ。さぁもう大丈夫だよ」
朔夜兄さんが僕のお尻に蜜を塗る。
「あっ!痛いよ、朔夜兄さん!」
指が触れるとピリッと痛みが走った。
「可哀想に、あさひ。私が舐めたらもう痛く無くなるよ。きっと気持ち良くなるよ」
朔夜兄さんがそう言うなら、きっともう大丈夫。
蜜を塗られたお尻に、朔夜兄さんの舌が触れた。
ちょっと緊張したけれど、蜜も有り痛くない。
ペロペロと玉の付け根からおしりの穴まで優しく舐められた。
痛みはもう無くなってきた。
「んっ…あさひ……こんなに腫れて…。あぁ……ふっ…ん……」
「……あっ、朔夜兄さん!うぅ…」
舐められて、そこで話されてくすぐったい。
なんだかお尻がムズムズする。
「ん…はっ…ん…なんだかいつもと反対だね。いつもはあさひが舐めてくれるのに」
確かにいつもは僕が朔夜兄さんの痣をなめるけど…。
今は僕のお尻の周りが朔夜兄さんの舌でべちょべちょにされている。
袋の方まで舐めて、ボールを転がされる。
「あっ……んぁ…う…あん…」
朔夜兄さんの言う通り、気持ち良くなってきて、僕のペニスが勃ち上がった。
「あっ…あん…やぁ…」
それでも朔夜兄さんはお尻を舐め続けている。
「朔夜兄さん!もう大丈夫、治ったから!ああ!!」
僕はもうペニスに触れたくて…。
でも朔夜兄さんの前で触るわけにはいかない。部屋に戻らないと!
「だめだよ、あさひ。まだ腫れているよ。っん!!」
朔夜兄さんが再び蜜を絞り僕のお尻へと塗った。
なんだか、痛いというより…うずく?
「朔夜兄さん!なんだか…痒いよ。」
僕は不安になって足の間から朔夜兄さんを見つめた。
立ち上がった自分のペニスが目に入る。
触りたい…。
「よかったね、あさひ。傷は治ってくると痒くなるからね」
朔夜兄さんがにっこり微笑んだ。
「あれ?ごめんね。気がつかなかった、ここも腫れているよ」
「ちがっ!ここは……」
僕は朔夜兄さんの視線から隠すようにペニスを手で押さえた。
「ふぁあ!」
気持ちよくて恥ずかしい声が出る。
「え?どうしたの、あさひ。兄さんに教えて。……心配だよ」
朔夜兄さんの眉がハの字に変わる。
「……ちゃ…たの…」
「え?何?」
「……気持ちよくなっちゃったの!」
恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
どうして、僕お尻を舐められて気持ちよくなっちゃったのだろう。
「あさひ、ごめんね。私のせいだね。でも、変なことじゃないよ。言ったでしょ、男同士はここでするって」
お尻の穴をトントンと指で示された。
ここで、する。
煌一が里見大尉とここで愛し合う?
考えたくない!
「あさひ、悲しい顔をしないで。さぁ、こっちも舐めてあげようね」
朔夜兄さんの手が僕の性器を掴み、ペニスの先を舐めた。
考え込んでいた思考が快楽で消えていく。
「あぁ……ん……ふ……あ……」
僕のペニスを朔夜兄さんの舌が這い回る。
覚えてる。
皮を剥かれてむき出しになった僕の芯を、痛いのに頑張ったね、と舐めた朔夜兄さん。
強すぎる刺激に泣きながら朔夜兄さんの髪の毛をひっぱって……
あんな事してしまった……。
それでも微笑んで許してくれた朔夜兄さん。
「…ふ……んぁ………あぁ…やぁ……」
朔夜兄さんはいつも僕に優しい。
どんな僕も受け入れてくれる。
朔夜兄さんと居ると安心する。
何をしても、どうなっても大丈夫だって。
「…気持ちいいよぉ……朔にぃ……あぁ……もっと……舐めて……僕の吸って!」
「あぁ、嬉しいよ、あさひ。可愛い。もっと甘えて。私を必要として……」
朔夜兄さんが、僕のペニスを口でしごき、吸い上げる。
堪らない快感が走る。
怖いくらい気持ちいいけど、大丈夫。朔夜兄さんがいるから。
「……あぁ!んぁ…いい……きもちいいよぉ……でちゃう……あっ…」
「ん……はっ……いいよ…あさひ……逝きなさい……」
舌を絡めながら喉の奥まで上下されて、つよく吸われた。
「あぁぁ!!朔にぃ!!んあぁ!」
僕は朔夜兄さんの口の中で、精液を吐き出した。
ジュルジュルと音をたてながら、吸われる。
お尻の穴が、きゅんきゅんとうずいた。
「ん……はぁ…はぁ」
足を投げ出し、ベッドにぐったりしていると、朔夜兄さんが僕の体を舐めて清め、着物を直してくれた。
朔夜兄さんは常に嬉しそうにニコニコしている。
そしてベッドに腰掛けて、海外での話を聞かせてくれた。
「向こうでも、おかしくなった華が居たみたいなんだよね。他の華にソイツは処分されて、助けられたから蝶は殺されなかったけど、その後に蝶もおかしくなったらしい」
おかしくなるってどんな風にだろう?
なぜ華はそうなったの?
「一日中蜜を求めるようになったけど、与えると苦しんで……その後衰弱死したらしい。」
「っひ」
「富士でも起きたなら、ここも気をつけないと。キヨ様や他の一族の華の古株たちにも情報を集めるために色々連絡を取っているんだけど……」
そんな恐ろしいことが起きて居るなんて…。
ただでさえ蝶の数は減って、華蝶の一族は危機なのに、これからどうなるのだろうか。
朔夜兄さんが僕の頭を撫でる。
「ごめんね、怖い話しちゃったね。もう休もう。」
朔夜兄さんが僕の隣に体を横たえた。
僕は怖くて、朔夜兄さんに寄り添い抱きつく。
「おやすみ、あさひ。」
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