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おっさんの華
しおりを挟む次の日の朝は人生初の二日酔いになった。
その様子を見た煌一が、狩りは一日置きにしようと提案して、直ぐに同意した。
討伐隊に手紙を書くと言うので、僕の手紙も一緒に使用人に届けて貰った。
深澤中佐への手紙だ。
深澤中佐が富士の一族で、どんな事があったか詳しく知らないから…
もし貴方が僕に蜜を吸われる事が嫌でなければ、貴方の手伝いがしたいので屋敷に来て下さい。
そう書いた。
午前中、二日酔いに苦しんで過ごしていると、午後には楽になって音楽室でピアノを弾いていた。
何か音がして振り返ると、使用人に通されて深澤中佐が立っていた。
「あっ、あのよ、えっと…なんつーか、ノコノコやって来てすまん!!」
「えっ?」
ギクシャクと動く深澤中佐がバッと頭を下げた。
勢いが良すぎて軍帽は飛び、刀がガチャガチャと音を立てた。
「断るべきだってわかってる!!だけどよ、目の前に突然降ってきた僥倖に気がついたら、隊を飛び出して、家帰って風呂入ってたんだ!!笑っちまうだろ!痣なんかこうゴシゴシ洗ってんの!馬鹿か!」
顔を上げた深澤中佐が矢継ぎ早に大声で話す。
「でよ、駄目だ!隊に戻るぞって軍服着たのに、気がついたら屋敷の前に立ってた。気持ち悪いよな!!スマン!!俺今すぐ帰るから!!」
「っぷ、あはははは」
なんだろう、この人。
凄い可愛い!
大人の男性におかしい表現だけど、面白くて可愛い。
僕は必死な深澤中佐が面白くて可愛くて、お腹を抱えて笑った。
「おい?ちょうちょ様?どうした?」
「ははははっ…ふっ…お腹痛い!あはは」
笑いすぎて苦しい。
こんなに笑ったの子供のとき以来だ。
「なんかわかんねーが、楽しんで貰えて良かったぜ?」
本当は僕、凄く緊張していたんだ。
来るか来ないか分からないけど、来たらどうしようって…。
何を話せばいいのだろうとか…
やっぱり怖くて吸えなかったらどうしようとか
それなのに、僕より大人で立派な人が僕より緊張して焦っている姿を見て安心した。
煌一や朔夜兄さんは何時も完璧で、こんな姿見たことない。
凄く、親近感が湧いた。
「あの、来てくれて良かったです」
これで伊織さんに酷いことされないで済むよね?
「でもよ、ちょうちょ様。ノコノコ来といてなんだが、おっさんの三十九年ものの蜜多分腐ってると思うんだ。お腹壊すからやめておけ」
ガシッと肩を摑まれて言われる。
大きな体。ゴツゴツの手。
口元から顎にかけて生えてる髭。目尻の皺。
なんでこんなものを可愛いと感じるのか自分でも不思議だ。熊っぽいのに。
「いやー、でも帰りたくねー!おじさん駄目な大人なんだー!でも、駄目だ!!こんな可憐なちょうちょ様には、もっと精悍な若い華が似合う!あー、俺!頑張って帰るぜ!!」
一人で騒いで百面相をしている深澤中佐。
面白い。
僕から手を離して軍帽を拾って、ドアに向かう深澤中佐。その姿がしょんぼりしている。
そして、ちらりとこちらを振り返った。
泣いている。
「帰っちゃうよ。おじさん。帰るからね。ぐすん」
ぐすんって。
僕は楽しくてつい。手を振った。
さようならと。
「お願い、止めてくれ!」
凄い速さで引き返して来て土下座をした。
「ちょっと、深澤中佐!」
慌てて側にしゃがみこんだ。
「本当ははじめて会った時からずっと、あんたの事が頭から離れねぇ!弟のときは何も感じた無かったのに、体がうずくんだ!コイツだって!でも俺は小汚いおっさんだろ…」
「深澤中佐…」
「我慢しようと思ったけどよ、昨日灰を食いまくって、もう駄目だ、人間なんか相手にしても何をしてもあんたの事が頭から離れない!手紙が来て幻覚かと思った」
この人も、華の本能というのに取り憑かれてしまったのだろうか。
誰でもいいから蝶に……
「あさひ君。……許してくれ。」
深澤中佐が軍服に手をかけた。
荒々しく痣を露出させる。
シャツは溢れた蜜で赤く染まっている。
「こんなの嫌だろう…うぅ……」
「…失礼します。」
右手を深澤中佐の肩に、左手正座をした膝に置いた。
足の間に立ち上がるものがある。
僕が顔を近づけて行くと、深澤中佐が凝視している。
はぁはぁと荒い息遣いがかかる。
「っ!」
舐める前にびゅと飛び出した蜜が唇についた。それを指で拭った。
「ああぁ!」
まだ痣に触れていないのに、逝った。
精液の独特の匂いがする。
しかし性器はまだズボンを押し上げている。
とても痛そうだ。
出してあげた方が良いのでは?と手を乗せると、また跳ねた。
「うあぁ!!駄目だ!汚い!触るな!」
僕の左手が取られた。離して貰えない。
仕方なく、そのまま痣に舌を寄せていく。
ペロリ。
「ぐっあああ!」
深澤中佐が顎を反らして再び逝く。
歯を食いしばってその衝撃に耐えている。
とても濃厚なとろっとした蜜だ。
表現するなら煌一が食べているのを見て不思議に思って舐めてみたチーズのような…。
これはこれで美味しいかも
癖になる味?
ペロペロと舐めて味わう。
舐めても舐めても溢れ出すから、僕の口のまわりが赤くなる。
「あっ…う…がっ……汚れちまうっ…」
深澤中佐が射精感に堪えながら、僕の手を離すと、自らのシャツを引っ張り上げて僕の口元を拭う。
舐めると零れてしまうので、口を当てて吸うことにした。
痣に口を当てると、吸わなくてもトロトロと垂れて来た。
「ん…ん…!」
「うわああっ……駄目だ!!うっ……ぐっ…」
どうしてこんなに溢れてくるの?
煌一も、朔夜兄さんもこんなに出てこないよ!!
溢れてしまう。
「ん…ごほっ…ん」
ちょっと待って、と痣を舌で押して蜜を止めた。
「ぐっあああっ!!……あさ…ひ…くん…」
深澤中佐の体が跳ねて、汗が飛び散る。彼の体臭と精液の匂いに包まれる。
嫌じゃ無い。
いたずらな気持ちで、蜜を吸い上げて、ズボンの上を撫でた。
「っんんん!!!」
深澤中佐が歯を食いしばって悶た。胸の筋肉が隆起する。
屈強な軍人さんがシャツを真っ赤にして苦しんでいる。
ズボンの中がグショグショになり、そして大きくなりすぎている。
「うっ…ぐっ…こんな……あぁ…こんな幸福だったのか……くっ…」
大きな手が僕の頬に添えられた。
「……気持ちいい……ぁぐ……もう…戻れない……」
深澤中佐は泣きながら笑っている。左の目元の黒子に涙が流れていった。
目尻の皺がくしゃくしゃになっている。
少し勢いが減ってきたけれど、まだ勝手に流れ込んでくる蜜をこぼさないように懸命に飲んだ。
昨日の朔夜兄さんのも飲んだし、お腹いっぱいなんだけど、あまりに幸せそうな彼の顔を見るとやめる事ができない。
飲みながら、痣をペロペロと愛撫した。
「っん!!うぅ……駄目だ…ぁ…う………愛おしい……でも……駄目だ…やめてくれ……君無しで居られなくなるぞ……」
「……ちゅ……ん……」
それは、僕では無く、蝶なしではだと思う。
蝶であれば、僕じゃ無くても良いんだ、皆。
煌一も、朔夜兄さんも、深澤中佐も、華の本能というのに翻弄されて蝶を求めているだけだ。
それが当たり前なんだろうけれど、なぜだか悲しい。
だからなのだろうか?
伊織さんは一番を探しているという。
お互いにとって、たった一人の相手。
それはどうして分かるの?
みんな特別美味しく思えた。
煌一の果実のような甘さも、朔夜兄さんの酔ってしまうワインのような美味しさも、深澤中佐の濃厚な味も。
どれも美味しい。
でも、それってどれも特別じゃ無いって事??
なぜか悲しい。
僕が僕として求められないことが。
分かっている、僕が蝶で無ければ、僕は彼らに求められるようなものは何もない。
僕が蝶で無くなれば、僕には価値が無い。
「……どうした??……ん?……はぁ……っく……泣いてるのか?」
僕は、首を振った。
今、出来る事をするしかない。
僕は、深澤中佐の痣を吸った。
トロトロで濃厚な蜜が溢れ出す。コクコクと喉を鳴らして飲み込んだ。
「っくああ!……すまない………許してくれ!」
深澤中佐が痛みに耐えきれず、ズボンからペニスをだした。
子供の腕ほどあるソレが、大きく跳ねて精液をまき散らす。
「……あぁ……駄目だっ……すまない……駄目だ……」
彼は、いつまでも溢れ出る精液を手で止めようと自らのペニスを強く押さえた。
それでも、治まらないペニスが萎えること無く勃起している。
慰めるように優しく痣を舐め、ちゅっちゅと吸った。
「……うぁ……気持ちよくて死にそうだ……来るんじゃなかった……あんたを……欲しくなっちまう……あぁぅ……」
「ん……はっ……んぅ」
深澤中佐は何度も果てて、彼の股間も僕のズボンも、ぐちょぐちょになってしまった。
濃厚な精の匂いが充満している。
一体僕たちは、音楽室でどれだけこの行為をしていたのだろう。
途中から、お腹がいっぱいすぎてぼーっとしていた。
二人で並んで床に倒れ込んでいる。
さぞ、彼もぐったりしいるかと思い隣に目を向けた。
「……すまねぇ。でも……ありがとよ。今まで無いくらい体が軽い!もう年だからと色々とガタがきてんだとおもってたが、違ったみたいだ。今なら何でも出来そうなくらい人生で一番冴えてる!!」
凄く元気になっている。
体を起こして熱弁している。
嘘でしょ。あんなにずっと射精してたのに?僕なんて一回だせば眠くなるのに?
「すっげーな、あさひ君。おじさん、もうメロメロだぜ。」
「……それは、僕が蝶だから……」
「おう!最高のちょうちょ様だな!可愛いし、こんな俺を相手してくれるくらい優しいし!泣けてくらぁ!でも、大丈夫だぜ、勘違いしないようにするぜ!あんたの邪魔にはなりたくない」
お綺麗なあさひ。
また伊織さんの言葉が蘇る。
「僕は!ちょうちょ様じゃないよ!!可愛くないし、優しくない!僕には……何にもない!」
僕が怒ると、ビックリした顔で深澤中佐がオロオロと手を広げる。
「どうした?思春期か?って思春期だよな。落ち着け、あさひ君は可愛いし、優しい。それって若い子には薄っぺらく思えるかもしれねぇけど、最高に価値があることなんだぜ、そもそも、華だろうが人間だろうが、所詮、可愛いと優しいがあれば最強だ!男には、それ以上に価値のあるもんなんかねぇ!あっ、いっこあったわ!最高の快楽つきじゃねぇか!!言っておくが、お前は最高だ!自信を持て!可愛くて、優しくて天国行ける最高のあさひだ!!」
僕はその日、はじめて人を平手で叩いた。
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