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祈り続ける
しおりを挟む目が覚めると、もう朝でした。
僕は再び一歩も動けない体になりました。
筋肉痛やら、お尻の痛みやら、全身の疲労感でぐったりしています。
急遽、お休みを取ったヴァジルに甲斐甲斐しく世話をやかれています。
今は、ベットの上で、膝の上に座らされて果物を口に運ばれている。
「こころ。美味しい?」
「うん」
バナナの形で味はラフランス。
おいしいけど、違和感が凄い。
見た目の印象ってすごい。
それにしても、ヴァジルの顔がとろけている。
幸せでしょうがない、そんな顔をしていて・・・なんて言うか、恥ずかしいけど・・・僕も嬉しい。
ただ気になっていることが1つ。
「ごめんね、ヴァジル」
「どうしたの、こころ」
ラフランスバナナで濡れた口をペロリとなめられる。
は・・・恥ずかしい。
悔しい。
僕は仕返しにヴァジルの濡れた手をとりなめる。
「あのね、僕が不甲斐ないから、ヴァジルの願い通りにならなくてゴメンね」
近くに置かれていた布でヴァジルの手を仕上げに拭き拭きする。
「何がですか?」
「だって、ヴァジルはガイウスみたいに逞しい男性に抱かれたいんでしょ?」
「……」
あれ?なんだか、一瞬ヴァジルの後ろに稲妻がみえたような・・・。
図星をさされたヴァジルが固まっている。
「でも、がっかりしないで、僕どこまで行けるか分からないけど、いっぱい筋トレするし、ヴァジルを抱けるようにがんばるからね!」
「……こころ。誤解です。私は…」
「あっ誰か来たよ。呼んでるよ」
大丈夫、隠さないでいいよ。
僕は、そういうヴァジルも好きだから。
「こころ、その誤解はじっくり体で解きますね。ちょっと待っていて下さい」
ヴァジルが部屋から出ていって、改めて色々考える。
僕は、本当に死んだのだろうか?
そして、この世界の人間になったの?
もう日本に帰ることは無い??
向こうの事は、仕事どうなるのかとか、失踪した事になるのかとか、考えるとキリがない。
ただ、ヴァジルが生きて歴史が変わることでお姉さんが帰って来るなら、深井さんが何とかしてくれるのでは?と思う。
何より心配なのは、逆に、ある日突然向こうの世界に戻ってしまうのでは?という事だ。
ヴァジルと離れ離れになってしまう。
それが怖い。
あの時の祈りが通じて、僕以外誰も傷つかずにいられたのなら
もう人間になったとしても、やっぱり祈ろう。
どうか、ずっとヴァジルと一緒にいられますように。
おまけ
「とても良く描けていると思いますよ。こころの美しさの半分くらいは表現できています。」
「ありがとう、ヴァジル。わがままを聞いてくれて。」
僕は元気になってから、ヴァジルにお願いをして、画家を呼んで絵を描いてもらった。
これを何枚か描いて、神殿に飾ってもらうのだ。
「こんな事、わがままの内に入りません。こころはもっと私に甘えるべきです!」
ヴァジョルが僕の肩を抱く。
僕はヴァジルを見上げて笑う。
「ヴァジルが僕に甘えてくれたらね」
「……こころ」
この絵は、もしかして、現れるかもしれない、未来の聖霊の為に。
僕が変えた未来によって、運命が変化してしまう人の人生が、より良いものでありますように。
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