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目が覚めた
しおりを挟むヴァジルとの夢から、ゆっくりと浮上していく。
ここ、どこだろう?
清潔な大きなベットに寝かされている。長袖のワンピースみたいな寝間着を着てる。
部屋の暖炉には火が入っていて、暖かい。
部屋は明るく、昼間のようだ。
「こころっ、気がついたか!?」
窓の外を怖い顔で見ていたガイウスが、僕の所へ駆け寄ってくる。
「大丈夫か?」
起き上がろうとしたけど、だるくて力が入らない。
「無理するな、寝ていろ」
ガイウスが布団を持ち上げかけ直してくれる。
「っいた!?」
ほんの少し服が擦れただけなのに、乳首や性器がヒリヒリと痛い。
「こころ!どうした!?」
ガイウスが心配そうに覗き込む。
「僕は……どうなって…」
途中からよく覚えて居ない。
ガイウスと一緒に変な所へ連れて行かれて……。
「ひゃあ!? ガイウス、あの変な生き物は!?」
ポロロの事を思い出し、恐怖に駆られて、飛び起きてガイウスの胸に飛びつく。
「やだぁ、来ないでよぉ」
「こころっ、大丈夫だ。もう心配ない」
ガイウスが戸惑いながら僕の背に腕を回す。
「……ふぇっ……怖かった、怖かったよぉ」
涙と震えが止まらない。
快感が苦しくて、あんなに恐ろしいものだとは思わなかった。
「すまない、お前をあんな目に合わせて。すまない」
「うっ……ひくっ……ガイウスは大丈夫?」
ガイウスの両方の手首に包帯が巻かれている。
「あぁ、問題ない。 こころが意識を失ってから、色々と解決して。とりあえず、マーロウとアディリと手を組むことになった」
マーロウの事は思い出すだけで、ゾクゾクっと背筋が凍る。
本当に存在が恐怖だった。
ガイウスが僕の背を撫でる。
「しばらくは、このマーロウの屋敷を拠点として行動する」
ガイウスが僕をはなして、背に手を当てて寝かせてくれる。
相変わらず、僕の色んな所がヒリヒリ痛い。
「安心してくれ、もしアイツがこころに余計な事をしたら、今度こそ斬る。……悪いな……こっちの都合ばかりで……。」
ガイウスの表情が沈む。
「それに……あいつが言うには、こころは体が小さくて華奢だから、俺とは毒の排出にかかる時間が違うらしく、まだ抜けきってなくて夜になると、少しぶり返すらしい」
ガイウスが僕から目をそらす。
「そんな!? 僕、僕、もうやだ! あんな……まただなんて……」
恐怖でポロポロと涙が流れる。
ガイウスが、僕の頬の涙を拭う。
「大丈夫だ。昨夜のようにはならないらしい」
「でも……」
あんなに恐ろしい快感があるだなんて。
叫び、逃げ出したくなる程だった。
そして恥ずかしかった。何も考えられなくなって我を失って、とんでもない姿を見せちゃった。
しかも……ガイウスのことヴァジルだと思って……。恥ずかしいこと沢山言った。
ヴァジル、ヴァジル言っていた気がする。
「すまない……。俺の責任だ……」
「違うよ!ガイウスは僕を助けてくれたよ。 あっ!!」
突然叫んだ僕にガイウスが驚く。
「僕、ヴァジルに会った!」
「ヴァジルに……こころ……それは……昨晩は、あの場にヴァジルは現れていない……こころが、ヴァジルだと思っていたのは……」
ガイウスが気まずい様子で話す。
「違うの! あれから、夢で会ったんだ!」
「……そうか」
「二人で此処に居るって伝えたよ。迎えに来るって言ってた」
夢の事を思い出して、少し元気がでて微笑む。
ヴァジルが待っててって言ってた。来てくれるって。
「こころ……俺はこれから、やることがある」
「えっ?」
「此処に居る事が伝わったなら、ヴァジルはすぐに動くはずだ。連絡を取る」
連絡を取る?
現代では、世界のあらゆる場所にすぐに連絡がとれるし、色んな所をつなげて会議だって出来る。
でも、この世界ではまだ手紙とかそういうことだろうけど……。
「すでに、信頼の置ける潜入していたトレノスの者を集めている。この部屋は安全だ」
「ガイウス!置いていかないで!!一緒に居たい!」
ガイウスが今にでも出て行ってしまいそうで、手を握る。
怖い。まったく知らないこんな所で、一人取り残されるような……。
「すまない……あんな事があって怯えているお前のそばに居てやれない……」
ガイウスが泣きそうな顔で謝る。
大きな体が小さく見える。
「……ガイウス……」
ガイウスにはトレノスの将軍として、やることが沢山ある。
こんな状況になったのも僕のせいだ。
笑顔で見送って大人しくしているのが一番だって分かる。
恐怖で一緒に居て欲しいという気持ちも大きい
でも……。
「ガイウスは危なくないの? 大丈夫? 絶対に帰ってくる?」
あっちこっち自分の意思でなく移動したり、妙なことに巻き込まれたりして、ヴァジルとも離れて……今、そばに居る人と、次いつ会えるのか……そんな心配が大きくなった。
ガイウスが大きな傷のある厳つい顔で、優しく微笑む。
「必ず帰ってくる。人と会ってくるだけだ。夜までには帰ってくる」
ガイウスが僕の手を握る。
「お前を一人で苦しめたりしない」
ガイウスが出かけていき、横になっていると、直ぐにまた眠ってしまった。
自分が思っている以上に疲れているようだ。
ぐっすりと眠りこんで目が覚めると、部屋は夕焼け色に染まっていた。
貴族の屋敷らしく、調度品や花が飾られている。
ベットやテーブル、チェスト、ソファ、どれもが大ぶりで、この世界の人のサイズ感の違いを感じる。
いつの間にか運んでくれたのか、ベットの近くのテーブルには果物や、水差し、パンなどが置かれている。
パンは見慣れたものだけど、果物は見たこと無い。
そういえば、この世界で何か食べたことあったっけ?
飲み物も、のんだっけ??
無い……。
長い時間居ても、お腹も空かないし、喉も渇いて無かった。
なんだか、まるで人間じゃ無いみたいだ。
それとも、やっぱりこれは夢だから??
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