月の聖霊さまに間違えられた僕の話

いんげん

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「佐川さん、人生ずっとモテ期ですよね?」
現在、仕事終わりにマネジャーの佐川さんと夕食中。
事務所の近くの洋食店で、リーズナブルで客席が半個室なので利用しやすい。
キノコのパスタをくるくるしながら、話す。

「どうしたの?」
マネジャーさんはチキンのてり焼き、ライスなしだ。流石、元モデル。40代の今でも身体はキレキレだ。
「……ちょっと聞きたくて」
「まぁモテ無いことはないけど……」
そうでしょうね!
センスもいいし格好いいし、スーツが似合うできる男だ。

「じゃあ、じゃあ! 側にいてくれるだけでいいみたいなこと言われたことあります!?」
「…………」
マネジャーはフォークを置いて、コーヒーを含む。
先に友達の話だって言えばよかったかな?
「……言われたことはないけど、思ったことは有るよ」
「えええ! それってどんな気持ちなんですか!? 言われた方は、なんか全然頼りにされて無いって言うか! どうでも良いって言われてるみたいな!」
おしぼりを握りしめて机をダンダン叩く。
「えーっ、そんなこと無いよ。そもそも何か役に立ってほしい訳じゃないんじゃないかな。愛する誰かが側にいれば、寂しさも辛さも乗り越えられるし頑張れるよ。抱きしめるだけで幸せだし。喜ばせたいって思うし」
初めて見る、マネジャーの顔だ。

さすが大人。
「ちなみに、どんな人なんですか?」
たしかまだ結婚してないし恋人かな?
「写真みる? 可愛いよ」

トトトトとスマホを操作し、渡された。
えっ、見ていいの?
どれどれ。

そこに写ってるのは、くるくるの茶色毛の。

「……犬じゃないですか! 可愛いけどもっ!」
「もう愛が止まらなくてねぇ。見つめ合うだけでキスしたいし抱きしめたい。側にいてくれるだけで幸せだよ」
……犬……いぬぅ……。
僕は彼にとって犬。
スマホを戻すと、マネジャーさんが愛しそうに写真を見つめる。
「ちなみに、誰に言われたの?」
「……えっ……架空の人です……」
「…………」
2人の間に沈黙が流れる。
「こころくん。……一週間くらい休みつくろうか。うちのモンブランちゃんにも会わせてあげようか?」
「ご心配なく……。大丈夫です」


食事が終わり、家に帰り着いた。
6畳一間の我が城に帰り、改めて考える。
ヴァジルのこと。
前回の凄いリアルな夢も突然終わった。
ふわっと目覚めて、撮影所の中庭に戻っていたのだ。

流石におかしいと思う。
これはオカルト的な現象なのか。
僕のメンタルの問題なのか。
ちょっと整理してみよう。
ヴァジルは、僕のことを聖霊だと思ってたみたいだけど・・・。
あの夢の世界と、ゲームの聖霊は似てるのかな?
僕あのゲーム、チュートリアルの戦闘で力尽きて……。
事務所のスタッフから、大まかな説明しか聞いていない。
よし、ちょっと調べてみよう。

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