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つばめ、イン アラスカ。
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「…つか…疲れたぁぁ」
大学が長いゴールデンウィークにはいった。
貰ったチケットでシアトルまで飛行機に乗り、今度はカナダ飛び越してアンカレッジ空港までやって来た。
正直、初めての海外にビビりまくりだし、一人で飛行機に乗って緊張でカチコチだったし、不安でブルブルだった。
サラさんがくれた説明の紙は、凄くアバウトで…無いよりは良かったけど余り頼りにならなかった。
「この大きな魚の前だよね……」
到着する頃に、迎えが来るようにしておくね、と書いてあった。
大きな魚の剥製の前で待っててとの指示だ。
「……」
キョロキョロと周りを見渡す。
僕は、今のケント外見が分からない。金髪で緑の瞳ってことぐらいしか分からない。でも……何十年も会っていないわけじゃないし、わかるよね。きっと……うん、大丈夫。
目の前を若い金髪の男性が通るたびに、じっと見つめてしまう。
「……まだかな」
到着から30分はたった。飛行機は遅れることなく、定刻通りに到着した。てっきり、ケントがお迎えに来てくれて…すぐに会えると思ってた。
勝手に期待してた気持ちが萎む。
うん、ここはアメリカだし、きっちり5分前行動する日本の感覚じゃだめだ。
「……」
まだかなぁ ソワソワ
来ないなぁ ドキドキ
まだかなあ ざわざわ
「……」
リュックを下ろして、その上に座った。不安感が一気に押し寄せてくる。もしも迎えが来なければ、英語が話せない僕が、この帰りの航空券を別日に変更して貰い、その早く取れた日時まで、近くのホテルをとって待機しなければならない。
あぁ…不安しか無い。
お願いケント…あと何時間か待っても良いから、絶対に来て!
「……」
到着から小一時間経った頃、僕を見つめて、こっちに歩いてくる人に気がついた。
来てくれた?ケントが来てくれたのかな!
思わず立ち上がり、じっと青年を見る。
まさか……ケント?
うそ……えぇぇ……ケントなの?
肩で風をきって、ドシドシと歩いてくる……ゴリラ? いや……熊?
違う、違う!
人間だ。
スポーツ刈りみたいな短い金髪
霜降りの筋肉に覆われた、ガタイが良いを通り越した体。
面影が見つけにくい、傷だらけの厳ついお顔。
正直……街に居たら避けて通りたい、怖い人だ。しかもアメリカサイズ!絶対日本だと服のサイズが売っていないとおもう。ウニクロもブライトオンもお手上げだよ。
その大きさを例えるなら……僕が日本の軽自動車で、相手は外国のでかいダンプトラック!
ごっつあんです!
ふと、両国で見たお相撲さんが、僕の脳内に再生された。
ケ……ケケ…ケントなの??
北のぉぉ、不知火関~!
アラスカが生んだ金色力士、得意技はツンデレ倒し。
今!不知火関が、僕の目の前に土俵入りした……じゃない、違った。
僕の前に立った。
でかっ…。
僕は恐怖を感じて、一歩後ろに下がった。
よく見るとグリーン寄りのヘーゼルの瞳だ。
「Hei,omaegaツバメ. sencyou ha konai, kaere Japanhe. ケント ha oreto tukiatteiru. Omaeha oyobijya nai!」
ジロっと僕を見下ろした青年が、早口で言い放った。
ツバメって所とケントっていう所だけ聞き取れた!
やっぱり!やっぱりケントなの!?
僕は、ぽかーんと開いた口が塞がらない。
いや、ケントの容姿が様変わりしていたことがショックとかじゃないんだ!
ケントが全然、ウェルカムな感じじゃ無いことがショックだった。
「ケ…ケント日本語で言ってくれないと分からないよ…」
サラさんに呼ばれて、ノコノコやって来たけど……ケントは僕に会いたいと思ってなかったのかな。
「………ニホンゴ……」
「……」
ザ、片言の日本語に目が点になる。
まさか、たった数年で日本語が片言に?
うそだぁ……そんなわけないよ!
頭を軽くフルフルと振った。
目に映る、コメカミの大きな傷。
頭に蘇る、サラさんの言葉『相当まずい、見てて痛いくらい病的』
ケントのアメリカ生活に一体何が?あれかな?ドラマみたいに交通事故にあって記憶喪失とか?
いや、いや、いや……そんな事はフィクションじゃないと……。
「とっとと失せろ」
頭の中が大騒ぎしながら、じっと見上げていると、眉間に深い皺が寄ったケントに言葉が浴びせられた。
それは、ちゃんとした日本語だった。
ひゅっと僕の心臓が縮み上がった。
パクパクと口が動くけれど、言葉が出ない。
そんな僕を置いて、ケントは身を翻した。
「まっ……待って!待って!ちょっと待って!」
僕は慌ててケントの胴体にタックルするようにしがみついた。胴回りが太すぎて腕がギリギリだ。でも、見た目に違わず硬い体だ。思いっきり飛びついたのに、ビクリともしなかった。
「Nani siteru?! Hanase!」
振り返ったケントが僕を振り払おうとする。
「待って!行かないで!いくらなんでも酷いよ!いや、突然来た僕もアレだけど、いくら何でも再会した空港でバイバイは酷いよ…置いて行かないで」
半泣きでケントに縋りつくと、周囲の人達がざわざわして僕らに注目する。
空港の警備の人が、厳しい目で僕らを見ている。
ケントが焦ったような表情で僕を見下ろしている。
はっ!もしや、これは犯罪者ケントと被害者少年くらいに見られているのでは?
二人組の警備の男性が、こちらに早足で向かってくる。
「Oi!soko nanishiteiru」
「Kuso!」
慌てている。ケントが慌てている。
チャンス!これは大きなチャンスだ。
このまま、のこのこと日本に帰るだなんて駄目だ。ケントに一体何が起こったのか聞き出さないと。
サラさんも何か引導を渡せとかなんとか言ってたけど、何だかすっかり、やさぐれて別人みたいになったケントを更生させて欲しいみたいな?元気づけて欲しいみたいな感じなのかもしれない!
ここでケントから離れる訳には行かない!
【補足】
不思議と誰でも読める英語ですよwww
大学が長いゴールデンウィークにはいった。
貰ったチケットでシアトルまで飛行機に乗り、今度はカナダ飛び越してアンカレッジ空港までやって来た。
正直、初めての海外にビビりまくりだし、一人で飛行機に乗って緊張でカチコチだったし、不安でブルブルだった。
サラさんがくれた説明の紙は、凄くアバウトで…無いよりは良かったけど余り頼りにならなかった。
「この大きな魚の前だよね……」
到着する頃に、迎えが来るようにしておくね、と書いてあった。
大きな魚の剥製の前で待っててとの指示だ。
「……」
キョロキョロと周りを見渡す。
僕は、今のケント外見が分からない。金髪で緑の瞳ってことぐらいしか分からない。でも……何十年も会っていないわけじゃないし、わかるよね。きっと……うん、大丈夫。
目の前を若い金髪の男性が通るたびに、じっと見つめてしまう。
「……まだかな」
到着から30分はたった。飛行機は遅れることなく、定刻通りに到着した。てっきり、ケントがお迎えに来てくれて…すぐに会えると思ってた。
勝手に期待してた気持ちが萎む。
うん、ここはアメリカだし、きっちり5分前行動する日本の感覚じゃだめだ。
「……」
まだかなぁ ソワソワ
来ないなぁ ドキドキ
まだかなあ ざわざわ
「……」
リュックを下ろして、その上に座った。不安感が一気に押し寄せてくる。もしも迎えが来なければ、英語が話せない僕が、この帰りの航空券を別日に変更して貰い、その早く取れた日時まで、近くのホテルをとって待機しなければならない。
あぁ…不安しか無い。
お願いケント…あと何時間か待っても良いから、絶対に来て!
「……」
到着から小一時間経った頃、僕を見つめて、こっちに歩いてくる人に気がついた。
来てくれた?ケントが来てくれたのかな!
思わず立ち上がり、じっと青年を見る。
まさか……ケント?
うそ……えぇぇ……ケントなの?
肩で風をきって、ドシドシと歩いてくる……ゴリラ? いや……熊?
違う、違う!
人間だ。
スポーツ刈りみたいな短い金髪
霜降りの筋肉に覆われた、ガタイが良いを通り越した体。
面影が見つけにくい、傷だらけの厳ついお顔。
正直……街に居たら避けて通りたい、怖い人だ。しかもアメリカサイズ!絶対日本だと服のサイズが売っていないとおもう。ウニクロもブライトオンもお手上げだよ。
その大きさを例えるなら……僕が日本の軽自動車で、相手は外国のでかいダンプトラック!
ごっつあんです!
ふと、両国で見たお相撲さんが、僕の脳内に再生された。
ケ……ケケ…ケントなの??
北のぉぉ、不知火関~!
アラスカが生んだ金色力士、得意技はツンデレ倒し。
今!不知火関が、僕の目の前に土俵入りした……じゃない、違った。
僕の前に立った。
でかっ…。
僕は恐怖を感じて、一歩後ろに下がった。
よく見るとグリーン寄りのヘーゼルの瞳だ。
「Hei,omaegaツバメ. sencyou ha konai, kaere Japanhe. ケント ha oreto tukiatteiru. Omaeha oyobijya nai!」
ジロっと僕を見下ろした青年が、早口で言い放った。
ツバメって所とケントっていう所だけ聞き取れた!
やっぱり!やっぱりケントなの!?
僕は、ぽかーんと開いた口が塞がらない。
いや、ケントの容姿が様変わりしていたことがショックとかじゃないんだ!
ケントが全然、ウェルカムな感じじゃ無いことがショックだった。
「ケ…ケント日本語で言ってくれないと分からないよ…」
サラさんに呼ばれて、ノコノコやって来たけど……ケントは僕に会いたいと思ってなかったのかな。
「………ニホンゴ……」
「……」
ザ、片言の日本語に目が点になる。
まさか、たった数年で日本語が片言に?
うそだぁ……そんなわけないよ!
頭を軽くフルフルと振った。
目に映る、コメカミの大きな傷。
頭に蘇る、サラさんの言葉『相当まずい、見てて痛いくらい病的』
ケントのアメリカ生活に一体何が?あれかな?ドラマみたいに交通事故にあって記憶喪失とか?
いや、いや、いや……そんな事はフィクションじゃないと……。
「とっとと失せろ」
頭の中が大騒ぎしながら、じっと見上げていると、眉間に深い皺が寄ったケントに言葉が浴びせられた。
それは、ちゃんとした日本語だった。
ひゅっと僕の心臓が縮み上がった。
パクパクと口が動くけれど、言葉が出ない。
そんな僕を置いて、ケントは身を翻した。
「まっ……待って!待って!ちょっと待って!」
僕は慌ててケントの胴体にタックルするようにしがみついた。胴回りが太すぎて腕がギリギリだ。でも、見た目に違わず硬い体だ。思いっきり飛びついたのに、ビクリともしなかった。
「Nani siteru?! Hanase!」
振り返ったケントが僕を振り払おうとする。
「待って!行かないで!いくらなんでも酷いよ!いや、突然来た僕もアレだけど、いくら何でも再会した空港でバイバイは酷いよ…置いて行かないで」
半泣きでケントに縋りつくと、周囲の人達がざわざわして僕らに注目する。
空港の警備の人が、厳しい目で僕らを見ている。
ケントが焦ったような表情で僕を見下ろしている。
はっ!もしや、これは犯罪者ケントと被害者少年くらいに見られているのでは?
二人組の警備の男性が、こちらに早足で向かってくる。
「Oi!soko nanishiteiru」
「Kuso!」
慌てている。ケントが慌てている。
チャンス!これは大きなチャンスだ。
このまま、のこのこと日本に帰るだなんて駄目だ。ケントに一体何が起こったのか聞き出さないと。
サラさんも何か引導を渡せとかなんとか言ってたけど、何だかすっかり、やさぐれて別人みたいになったケントを更生させて欲しいみたいな?元気づけて欲しいみたいな感じなのかもしれない!
ここでケントから離れる訳には行かない!
【補足】
不思議と誰でも読める英語ですよwww
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