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不知火編 俺の気持ち

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つばめのいる学校は、とても楽しかった。
一緒に給食を食べたり、アイツが一生懸命授業を聞いている姿をみるのとか…とにかく楽しかった。今まで退屈だと思っていた事が、面白くなった。
変わったことは、つばめが隣に居ることだけなのに。

しかし、俺達に別れがやって来る。

夏休みだ。

「…長い…」

つばめに合うまでは、夏休みは好きだった。
アレックスが日本に来るから、退屈しないですんだから。
でも、今はつばめと居るだけで楽しいし退屈しない。夏休みなんて…長すぎる。

「…待っていろ」

俺がお前の家に行くから、と言ったものの……足はいつもの所で止まった。
友達の家に行くなんて、今までの人生で一度も無かった。
何て言うのだ。家にいってどうするのだ。
チャイム…あの…やたらデカい音で暢気な響きをだす、アレを押すのか。

それで、つばめが出てくるとは限らない。

もし、つばめの両親が出てきたらどうする。

「……お…おれは……つばめの……とも……ともだ…ともだち…」

あああ!駄目だ!言えない。
つばめのあのフワフワした綺麗な母親に、こんな格好でビーサン履いて友達だなんて無理だ。

そもそも、俺達はともだちで良いのか?

あぁ…行きたいけど、行けない。

俺は毎日、あの場所までいって戻るを繰り返した。
そして、やってきたアレックスと帰ってきた母とスーパーへと向かった。

そこで、つばめと会うことができた。


「不知火くん、いつ僕のことを迎えに来てくれるの?」
「っ!」
アイツと話して、ズバリと聞かれてしまった。
俺がつばめを迎えにも行けないヘタレだとバレただろうか?
夏休みに入って、もう8日経ってしまっている。

「……いつも……途中まで、行ってる……」
「えっ?」

つばめが大きな目を丸くして驚いている。
すごく…恥ずかしい。
くそぉ…勇気をだして行けば良かった。
そう落ち込んでいると…。

「ごめんね、明日は僕も行くから、途中で待っててね」
つばめが、そう言って笑った。
俺の心が温かい光で満たされた。
つばめが俺を理解して…認めてくれた。心をよせて包み込んでもらった。

「……いつもの…ところな…」
俺は、嬉しくて泣きそうになり体の向きを変えた。そして、逃げるように走り出した。


嬉しい

好きだ

つばめといるのが楽しい!


「うん!いつものところで」

つばめの嬉しそうな声が、いつまでも耳に残って…俺は空も飛べそうな足で走り去った。



□□□□



あの日の事件は、生涯忘れないだろう。

つばめがピンチに陥ったあの時、アイツを助けたのは、父のアレックスだった。
俺は、大切な人を守ることができなかった。
海から助けることも、あの男たちを倒すことも。
俺は、無力だった。自分は周りの奴らよりも大人だと思っていたけれど……自分もただの子供だと思い知った。
そして、今までいい加減で大雑把なアレックスを父としては愛していたが、どこか鼻で笑っている所もあったのだが……つばめのヒーローになったのは間違いなくアレックスだった。

つばめは、アレックスをカッコいい、ヒーローだと目を輝かせて言っていた。

悔しい!
負けたくない!

つばめの唯一無二のヒーローになりたい!

俺は、誰よりも強く、賢いヒーローになる事を心に決めた。

とにかくデカくなりたくて、メチャクチャ肉も食ったし、体も鍛えた。
動きすぎて全然肉付きは良くならなかったが、両親は共に長身なので身長は伸びた。その点は凄く感謝している。

そして勉強も今まで以上に取り組んだ。
学校の授業中は、全く別の本を読んで、時々つばめを見つめ気持ちを高めた。
つばめは、変わらず綺麗で可愛い。

中学に入った頃には……少年と大人の狭間のような危うい可愛さに、つばめに集ってくる虫たちを排除するのに忙しかった。
一方、俺の方は今まで恐れて遠巻きに見ていた女子や、一部の男子達に妙な視線で見られたり…時には呼び出されたり、とにかく面倒になったし、そういう姿をつばめに見られたくなくて必死に隠した。

「…ケントは、エッチな動画とか見るの?」

クラスの奴らの猥談を小耳に挟んだアイツが、俺にこっそり聞いてきた時は心臓が止まるかと思った。
もうすっかり、俺の性欲の対象は……つばめだった。

自分がゲイなのかは分からない。
つばめ以外にそういった興味を抱いたことがないから、女の裸にも、男の裸にも興味が無い。
自分でも、なぜこんなにアイツ一色になっているのか疑問に思うが……それだけ、つばめが俺にとって魅力的だから仕方ない。

だから、俺はよく聞く「性別なんて関係ない、これは男でも惚れる」とかいう男になる。
最強で、最高のアイツのヒーローになる!





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