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ツンデレラの丘
しおりを挟む「おい……お前…なんで……こんな係を選んだんだよ……」
放課後になり、不知火くんと校舎の裏手にある丘の花壇にやって来た。
生え放題の雑草抜きが、僕らの仕事だ。
「不知火くんは、休んでいて。僕がやるから」
一人でやる方が時間がかかって、都合が良い。
不知火くんと、沢山お話が出来る。
僕は、体操着入れを一斗缶の上に置いて不知火くんに、ここに座ってっと言った。
「……ふん!」
不知火くんは、そっぽを向いて、僕の腕を掴むと、華奢な腕からは想像できない力で僕をソコに座らせた。
「えっ?」
僕は、訳がわからず目を見開いて見上げた。
「おっ…お前が…座ってろ!」
不知火くんは、ランドセル代わりの無骨なリュックを投げ捨てて、丘へ歩き出した。
「えっ…ちょっと…不知火くん?」
僕が不知火くんの後を追う為に立ち上がると、ぐるりと彼が振り返った。
「来んな!見てろ……そこで!」
「ん?なんで?不知火くん、やる気なら一緒にやろうよ」
「動くな!歩くな……お前……」
不知火くんは、僕を指差して足をだんだん踏みしめて怒っている。
どうしたのかな?
一匹狼の不知火くんは、一緒に作業するのが嫌なのかな?
余計な誘いをして迷惑だったかなぁ、と少し…しょんぼりして来た。
「な…泣くなよ……お前……だって……」
「だって?」
「足!」
「足?」
「足怪我して休んでたんだろ!」
うっ……うわああああ!
どうしよう!
ニヤニヤが止まらない!
不知火くん、可愛いいい!
照れて真っ赤になって、横で拳を握り、ハァハァと息をする不知火くんの姿は、僕の心臓を貫いた。
「不知火くーーん」
「なっ!走るな!うわぁ」
僕は、思わず不知火くんに駆け寄って抱きついた。
僕の方が背が高いので、二人で丘に倒れ込んでしまった。
これは、母さんが言っていた床ドンという姿勢では?
目の前に迫る不知火くんの綺麗な顔…うわぁ…瞳が綺麗で…キラキラしている。
「ど…どけよ…」
「あっ…うん、ごめんね…怪我してない?」
僕は起き上がって、不知火くんに手を差し出した。
「別に…怪我しているのは、お前だろ…」
唇をタコのようにした不知火くんは、僕の手を無視して立ち上がった。
可愛い…不知火くんは、実は優しくて、可愛い子だった。
熊を倒すお父様にも、冒険家のお母様にも似なかったのかな?
「もう治ったから大丈夫、ね、一緒に草むしりしよう」
「…しない…」
機嫌を損ねてしまったのか、不知火くんが丘を歩き一斗缶の上に座った。
「そう?じゃあ、僕がやるね」
「……そうしろ」
不知火くんは、細くて長い足を組んで、僕を監視し始めた。
ぷち…ぷち… ずぽん…雑草を抜く。
「ねぇ、不知火くん…明日も、明後日も学校に来てね…僕、不知火くんと過ごすの凄く楽しみだよ」
もっと仲良くなりたい。
だから、学校に毎日来て貰わないと。
「……いやだ…お前…うるさそう」
ぷち…ぷち…
「……」
今度は、喋らずに静かに草を抜く。
「……おい…」
「……」
しゃべらず、不知火くんに微笑んで草を抜く。
僕は、今、とても寡黙な男に生まれ変わったんだ。
「…おい、アンダーウッド……怒ったのか……」
「えっ?違うよ。不知火くんの好きな静かなタイプになろうと思って…」
むずむず痒くなった頬を掻いて答えた。
「……そうじゃない…」
不知火くんが立ち上がって、こっちにやって来た。
そして、Tシャツの裾を引っ張ると、僕の頬を拭いた。
ど…どきどきする。
「……しゃべって良い……気が向いたら来る」
「うん、待ってるね」
それから、不知火くんは無言で草むしりを手伝ってくれた。
その作業は、とても手際よくて…一日で、そこそこ広い丘は綺麗になってしまった。
『キャラクターメモ』
主人公、木ノ下 ツバメ 四年生、
攻め 不知火 ケント 日米ハーフ
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