前世で犬用の徳を積んだ僕は、前世犬の人間を愛の奴隷にできるらしい。

いんげん

文字の大きさ
上 下
19 / 24

番外編 ワンワン日記

しおりを挟む

私、犬飼博文の朝は早い。
昨日は金曜日で、蛍が我が家に宿泊をしてくれた。

もちろん、寝室は別だ。
蛍と、おつ…おつ…お付き合いを始めて、蛍の寝室を用意した。

いつかは一緒に眠りたいが、今は駄目だ。
私の理性が崩壊する。
なぜなら、交際を初めて2ヶ月経ったが、蛍は未だに…セックスを勘違いしている。

あの、悩殺…尻しごき……おっと、失礼、下品だったな。
あの卑猥な臀部を使った陰茎刺激を、セックスだと思っているのだ。

「言えない……私には……言えない」

ペニスを、蛍のお尻に入れたいなどと言ってはならない。
見に余る幸せは、己を崩壊させかねない。
大人しく、蛍の与えてくれる快楽を享受するのだ。


ピピピ…

おっと蛍の朝食が焦げてしまう。
コレを、仕上げたら、私の一番楽しみな時間だ。


□□□


コンコン、コン

蛍の寝室を、控えめにノックをした。
起こしに来てはいるが、すぐに起きてしまっては残念なので、蛍が起きない程度にする。

「蛍、起きたかい?」

起きていない事を承知で言った。
ドアを開けると、蛍の匂いに包まれた。

あぁ…幸せだ…。
顔が緩むのを抑えられず、微笑みながら近づいた。

蛍が寝ている。

口が少し開き、子供みたいな顔をして、枕に顔をつけて、すやすや寝ている。柔らかい茶色の毛に寝癖がついている。

かわいい…なんて、かわいいんだ…。

私は、胸から沸き起こる愛しさに震えた。

「蛍…」

衝動のままに、顔を近づけ、蛍の前髪に鼻を寄せた。

堪らない!!

蛍の匂いを堪能してから、一度顔を離し蛍の頭を撫でた。
あぁ…触れるだけで、なぜこんなに満たされるのか……。

「んー」

蛍が眉を顰めて、寝返りをうった。
上向きに変わった蛍。
「…ぃ…ぬがい…」
蛍が……私の名前を寝言で呟いた!!

私は感動を味わうと共に、蛍の下半身に目が行ってしまった自分を懺悔したい。

ふっくらと盛り上がる蛍のペニス。
うっすら漂う精の匂い。

しまった…昨日の夜、蛍が寝てから散々だしたのに、また己の醜い欲望が…。

「……っく」
私は、自分の欲望を抑えるために、蛍が私を捨てて渋谷を可愛がる妄想をした。
蛍に乗りかかり腰を振る渋谷…
蛍の顔を舐め回す渋谷…
蛍の膝枕で甘える渋谷…
あぁ…許せない。たとえ妄想でも許せない!!

怒りがヒートアップして、欲望値が下がりペニスが落ちついた。
「…ふぅ」
気を取り直して、眼鏡を直し、蛍の掛けている薄い毛布を捲った。

「……んっ……ぬがい……寒い…」
蛍がまだ眠ったまま、私に文句を言った。私にだ!
つい頬が緩む。
そして、主人に寒い想いをさせてはならない、と蛍の隣に寝そべって、その体を抱きしめた。

あぁ……生まれてきて良かった。

□□□


ヴヴヴ…
私が息を殺して、蛍の温もりを楽しむこと早、5分。
枕元に落ちている、蛍のスマフォがラインのメッセージを表示した。

「……駄犬め」

それは忌まわしき駄犬、渋谷からだった。

あの駄犬は、私と蛍が恋人となってからも、蛍の側を離れようとしない。
あまつさえ、「蛍さまは、恋人が出来たら、飼い犬が邪魔になって捨てる人間なんですか!!」と嘘泣きで蛍の同情を誘い、ほだされてしまった蛍が「そんなことしない!!」と犬としての存在を容認してしまった。
あの後の私への、渋谷の捨て台詞は酷かった。
「あんたみたいな神経質な貴族さまは、きっと早死にするから、俺のターンは直ぐに来ると思うよ。ほら、居なくなった犬の悲しみは、新しい可愛い犬でって世の中のセオリーだろ」
っと、あの腹黒、アザと駄犬め…。
私は、何としても蛍より長生きしてみせる!年老いた蛍を看取ってから、名犬パトラーンシュのように蛍の骸を抱いて天に昇るのだ。

私は、蛍のスマホを手に取り、「おはようございます、蛍さま」との渋谷の無駄なメールに「一生、目覚めるな」と返して電源を切った。

「ん…あれ? おはよう…犬飼…」
私が無駄な時間を過ごしていると、目が覚めた蛍が私を抱きしめ返してきた。
くっ…あぁ…全てが愛しい!
蛍が可愛くて死にそうだ。

「…おはよう、蛍。よく眠れたかい?」
なんとか顔の表情を保って蛍に笑いかけた。
「うん。犬飼が一緒に寝てくれないのは寂しかったけどね」
蛍が私の胸に顔をすり寄せて言った。
「……」
一緒には…寝られないのだ…。
あの地獄の兜合わせと、尻扱きの攻撃を受けて、そのまま寝ることは出来ない…。
シャワーを浴びると言って退出し、風呂場で馬鹿みたいにペニスを扱き、欲望をなだめ戻ると、蛍は寝てしまっているので、その体を清め、布団に寝かし……また抜いてから眠るのだ。

あぁ…私は何て醜い獣なのか…。


□□□


私は、蛍と恋人になってから、大学への登校日を減らした。
アイツ自体が信用ならない所はあるが、身体能力が人間離れした渋谷と蛍のガードを分担しつつ、今は蛍のお父様に気に入られようと、蛍のお父様とも仕事をしている。

そこで顔見知りになった、蛍の叔父さん…昴さんに今日、とんでもない話をされた。

「蛍の中から、君のマーキングの匂いが全然しないんだけど……アナルセックスしてないの?」
「……は?」
思わず手にしていた紅茶を零さなかった自分を褒めたい。
昼下がりの社長室で、話題がアナルセックス。
しかも、今は不在だが蛍の父親の社長室だぞ、ここは。

「思わず昨日、蛍にセックスについて講義しちゃったよ、はははは…これで、本当に結ばれることが出来そうだよね!あぁ…私は、何て天使でキューピットなんだ!!良い叔父さんだなぁ」
昴さんが、社長室にあるお菓子をバクバク食べながら笑っている。

「えっ…いま…何と……」
私の手の中の紅茶のカップが、カタカタと揺れている。
私はカップを応接テーブルに置いた。
「だから、絵に描いて教えてあげたんだよ、蛍のお尻に、君の欲望…欲棒…ふふふ…を入れたり出したりするんだよって…」

ガタン
動揺して組んだ足が応接テーブルに当たった。

「……なっ…何てことを…」
私は激しく狼狽した。
なぜなら、蛍が…アナルセックスを理解したのなら、かならず試みようとするはずだし……そうなったら、どんな事態が巻き起こるか……全くの予測不可能だからだ!
あの…あの蛍だ。
可愛い、愛する蛍だが……若干、暴走の気質がある…ハプニング体質の蛍だ。

不安で頭が痛く、期待でペニスが痛い。

その日、私はつまらないミスを連発し、お義父様に体調不良を心配され、早々に返された。

□□□

夕方、蛍からラインが来た。

『犬飼、体調悪いんだって?ちょっと相談したいことがあったんだけど……今度にするね。お見舞いに行ってもいい?』

相談したいこと…
元気な時でないとできない、相談したいこと…

「くああああぁぁ」

私は、心頭を滅却するために冷水シャワーを浴びながら吐精し、本当に数日間寝込んで、蛍と阿久津と渋谷に、代わる代わる看病される不名誉を被った。










しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

処理中です...