望月アグリと申します

有住葉月

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第7章 新生活

11、山岡先生お願いします!

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望月アグリと申します。
お母さんが群馬から来た話をしましたね。

淳がいる毎日というのは本当に幸せです。
泣いても笑っても可愛いのです。
大変ですけどね。

ということで、私は弟子にしてもらうために、山岡先生に会いに行くことにしました。

「お母さん、今日、山岡先生のところに行ってきます。」
「あら、そうなん?まあいい返事は急にはもらえんと思うけどね。」
「本気ですからね。あと、わからないことがあったら、隣の冨樫さんを頼ってください。」
「ああ、わかったわ。」

冨樫さんにも挨拶に行きました。
「今、息子と母が来てまして、何かあったら冨樫さんにって言ってきました。」
「あ、アグリさんおでかけかい?」
「弟子にしてもらおうと思って。」
「勇気があるね。」
「当たって砕けないようにします。」

私は電車に乗って、山岡洋装店に行きました。
まだ、開店前でした。

他のお客様に迷惑がかると悪いので、裏の勝手口の戸を叩きました。
「はあい、どなた?」
「あの、山岡先生に会いにきた望月と言います。」
その時、勝手口から出てきたのはこの間会ったお姉さんでした。

「あら、あなたこの間、辻さんと一緒に来たお嬢さんじゃない?」
「はい。気持ちを決めて、弟子にしてもらいたくてこちらに来ました。」
「え!それって本当なの?」
「はい。あれから寝ても覚めても。」
「じゃあ、山岡先生に繋ぐわ。入って。」

社員用の休憩室に通していただきました。

「山岡先生、10分だったっら平気だって。事務室に案内するわ。」

お姉さんと一緒に事務室に行きました。

「山岡先生、長内です。」
「入って。」

事務室に入りました。
長内さんというお姉さんは出て行きました。

「あなた、弟子になりたいって?」
「はい、望月アグリと申します!」
「元気がいいかたね。長内から聞いたけど、子供がいるって?」
「はい。今東京にいます。」
「幾つ?」
「もうすぐ1歳です。」
「ならダメね。」
「どうしてですか?」
「赤ちゃんの面倒はどうするの?」
「母が見てくれるように。」
「そんな赤ちゃんを放っておくのは私は賛成できないわ。」
「でも、私、先生の洋服に恋してしまったんです。」
「恋?」
「ドキドキして、夢見て、素敵な気持ちになって。こんなこと初めてなんです。」
「服のことを褒めてもらったのはありがたいわ。でも弟子にはできない。」
「じゃあ、またきます。お許しいただけるまで。」

その時、山岡先生の顔ったら、呆れ顔を思い出すと笑えます。
私はまだまだ始まったばかりと思って、帰途に着きました。

ということで、今日のお話に御付き合いいただきありがとうございます。お粗末さまでした。
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