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第3章 新しい女性関係を構築する

12、信用を得た俺

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大杉緑というのは俺のことだ。追われる身だと、なかなか自己紹介しない奴がいるが、俺は堂々と名乗る。


さて、どこまで話したかな。佐藤愛と初めて飲みに行った話をしたところだな。
そう、佐藤愛を泥酔するまで飲ませたが、俺は紳士的にタクシーで彼女を家まで送った。

もちろん、自分の家に連れて帰って彼女を押し倒すなんてことは簡単だっただろう。
しかし、俺はそれをしなかった。それをすると彼女の信用はガタ落ちになるというのが俺の経験からわかったからだ。しかも、あの真面目な佐藤愛を。

俺は、時間が限られているが、どうにかこの恋愛ゲームを成功させるために計画を練った。

次は、またランチに誘った。
「大杉さん、この間は飲み過ぎてしまってすみませんでした。」
「いいんだ。酒は飲みたい時もあるし。」
「私、緑さんのこと、ちょっと勘違いしてました。」
「ん?勘違い?」
「酔いつぶった据え膳は食べられてしまうのかと思ったのです。」
「俺もよくそう見られるよ。でも、俺たちは同僚だろう。」
「緑さん、優しいんですね。」
「佐藤さんと飲むと楽しいから、また飲みに行こう、例えば今日。」
「ああ、ごめんなさい。今日、弟が群馬から出てくるんです。」
「弟さん?」
「群馬で大学に通っていて。」
「なんで佐藤さんは東京の事務所でタイピストしてるの?」
「弟の学費のためです。」
「ご両親は?」
「父が私が女学校時代に亡くなりまして、どうにかタイピストの勉強まで間に合いました。」
「苦労したんだな。」
「いえ。もっと大変な方はたくさんいます。」

佐藤愛が地味で真面目なのは、弟のためだったのだと改めて知った。
「なあ、その弟さんにご馳走したいけど、一緒にディナーはどうかい?」
「え?緑さんが?」
「一応、事務所の次期所長だしな。いいだろ?」
「でも、そこまでお世話になるなんて。」
「宿だって、下宿にはとまれないだろ。俺の家に弟さん泊めてもいいよ。」

その時、佐藤愛の眼差しが感動に帯びているのを俺は感じ取った。
俺って、なんていいやつなんだろう。なんてことではない。
俺は、佐藤愛と付き合いたいんだ。
恋愛ゲームの中で最速で彼女に近づく方法を得たのだ。このディナーは失敗できない。

そのディナーの話は次に話すとして、今日はこの辺りでさらばである。
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