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第十六章 最終学年

82、図書館での

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櫻はその日、放課後一人で図書館にいた。
特に係としてではなく、純粋に本を借りに来たのだ。
上野は一緒に行こうか?と聞いたが、じっくりと選びたかったのでやんわりと断った。

女性の権利、戦争のこと、調べたいことは沢山あった。

しかし、銀上にはそういった本はあまりないようだった。
それとは逆に新入荷コーナーに先日演説した夫人会の本が数冊置いてあった。


(学校もその考えを歩ませようとしているのかしら。。。)

不安そうな顔をしていると、背後から話しかけられた。


「おや、佐藤くんだね。」
「若葉先生。。」
「君は進学希望だったね。さすが今の時期も図書館なんだね。」
「いえ、色々な知識を得たかったので。」
「お父様もお喜びだろうね。」
「父をご存知で?」
「いや、名前を知ってるだけで知り合いじゃないよ。」


櫻は若葉がすでに佐藤家の養女になっていることを調べ上げていることに驚きと戸惑いを隠せなかった。

「誰から?」
「ああ、先生方だよ。辻先生とか?」

櫻は驚いた。
なぜ、辻が若葉にそれを伝えたのか。。。

「僕、進路指導してるだろ。だから、生徒のことは知っておきたくてね。」
「ああ、そうだったんですか。」
「でも、佐藤の家だったら特に進学しなくても婿取りなんてし放題だろ。」
「ああ、でも世に出たくて。」
「随分と真面目なんだね。」
「え?」
「いや、銀上の女学生はみんな結婚の憧れとか家庭をどうするかを考えてる子が多いから。」
「まあ、そうですね。」
「歯切れが悪いね。」
「いえ、私、勉強が好きだから。」
「そんな優等生なんだね。」
「いえいえ。」

若葉がなぜこんなに櫻に話しかけてくるのか櫻自身が不安になった。

すると、図書館の扉が開いた。
入ってきた人物は二人の前に現れた。

「あ、若葉先生、流石ですね。」
「辻先生、研究室じゃなかったんですか?」
「いや、借りたい本がありましてね。」

櫻は少し戸惑った。
「若葉先生とおしゃべりしていたのかな?佐藤さん。」
「はい。進路のことを聞かれたり。」
「いいことですね。若葉先生、本当に助かります。」

若葉は辻のことを少し不思議に思った。
なぜ、このタイミングで。

「辻先生、僕も大体本は見ましたので、本が見つかりましたら進路のことで相談に乗ってください。」
若葉はこの場から辻を排除することを選択した。

「いいでしょう。急ぎの本でもないですし。」

二人は櫻に会釈をして図書室を出て行った。

そして緊張していたのか、櫻は急に力が抜けた。
やはり若葉守は用心しなくてはならない。
今度、もう一度辻に相談しようとおもったのであった。
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