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第十六章 最終学年

61、不意に訪れた再会

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夏休みも後半になった時、櫻は望月洋装店で経理の処理をしていた。
受験もあるのだから、お休みしていいとアグリからは言われていたが、この経験も櫻に取ってはとても大切なものだった。
何より、ほとんどの姉弟子が店に出ているので、間違っている帳簿のチェックなどが必要だと感じていた。

2店舗目を出すことを考えると、経理専門の職員を雇った方がいいのではとアグリに進言しようと思う。


奥の部屋で櫻が作業をしていると何やら表では賑やかな笑い声が聞こえてきた。
常連のお客様が何人かきて、繁盛しているのだろう。


櫻はまた帳簿に目を通し、懸命に計算を続けた。

トントン。

事務所の部屋がノックされた。
姉弟子たちは普段ノックせずに入ってくるので、不思議に思った。

「はい?どうかしましたか?」
「あの、入ってもいいですか?」
「え?」
「大杉です。」

櫻はびっくりした。
なぜ、大杉が来ていて、この部屋に来たのか。

「ああ。えっと。」
「じゃあ、入りますよ。」

ニコニコとしたスーツを着た大杉が入ってきた。

「今日は働いてるんですね。」
「え?」
「やっぱり職業婦人ぽいというのは当たっていたんだ。」
「あの。。」
「ああ。今日はね、僕のガールフレンドをこのお店に連れてきたんだけど。」
「でも、事務所は特にお見せするようなところじゃ。」
「ああ、アグリさんがいるかと思ったんだ。」
「すみません、アグリさんはあいにく産休中です。」
「え?産休?」
「はい、お子様を出産なさって。」
「いやあ、知らなかったな。僕より年下なのにすごいね。」
「あの、先生はいらっしゃらないので。」
「いや、櫻さんはどうして働いてるの?」
「え?」
「佐藤支店長のお嬢様が働く必要なんてないでしょ。」
「あの、アグリ先生にはとてもお世話になって。」
「ああ、弟子だったの?」
「そうです。」
「すごいね。養女へステップ。」
「私の力ではありません。」
「ふうん。君はまっすぐだね。」
「え?」
「嘘がない。」
「どうして?」
「適当に言えばいいだろ。ここの部屋で人を待ってたとか。」
「ああ。。」
「さすが、佐藤支店長はいいお嬢さんを迎えたね。」
「そんなことはないです。」
「女性というのは時にわがままで嘘つきで、見栄っ張りだよ。君にはそれがないね。」
「え?」
「ああ、ガールフレンドを待たせてるから、そろそろ。」

そう言って、大杉は部屋を出て行った。
急なことで櫻は戸惑った。でも、これはちゃんと辻に話さなくてはいけないと思っていた。
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