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第十六章 最終学年

46、帰ったら楽しい夕食

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和枝は先に佐藤邸によってくれ、櫻を送ってくれた。

「本当にありがとう。とてもいい体験をしたわ。」
「お父様、お寂しいんじゃない?」
「うーん、どうかな?」
「じゃ。」
「ありがとう。」

和枝とさよならをして、荷物を持ってベルを押した。

すると、ドアを開けたのは辻だった。

「え!先生!」
「やあ。」
「ちょっと、和枝さんにみられたら。」
「ああ、上野くんが帰ったのをちゃんとみたから出たんだよ。」
「どうして?」
「ああ、帰りを迎えたかったしね。」
「びっくりしました。」

そんな会話をしていたら、後ろから佐藤の父が顔を出した。
「やあ、櫻。」
「お父さん。」
「おかえり。」
「ただいま帰りました。」
「楽しかったかい?」
「はい、とても。」

二人がニコニコしていると、それを辻が覗き込んだ。

「坊ちゃん、親子を邪魔しないでください。」
「佐藤支店長、それはないよ。」
「いえいえ、可愛い、我が家の娘ですから。」
「ああ、僕の入り込む隙はないようだ。」

はははと3人で笑った。

「ねえ、先生、」
「どうした?」
「今日は研究、いいんですか?」
「人間たまには息抜きだよ。早く大学を出て、佐藤支店長を引っ張っきた。」
「そうですよ、坊っちゃまは強引です。」


笑ってはいるが、櫻は辻を少し叱った。
「先生、父も仕事があるんですから。」
「知ってるよ。でも、佐藤支店長だって寂しがってたんだから。」
「え?」
「僕たち、昨日も一緒に夕食を取ったんだ。」
「そうだったんですか?」

父に聞いた。
「ああ、坊っちゃまがね、料亭に誘ってくれて。」

「先生は強引ですね。」
「いや、櫻違うんだよ。坊っちゃまはいつもそんな感じなんだよ。」

もしかしたら、佐藤が孤独になってから、それを埋めていたのは辻なのかもしれないと櫻は思った。


「櫻くん、今日は佐藤邸で君のご帰還祝いで夕飯だから、3人で食べよう。」
「え?連日でいいんですか?」
「言ったろ。息抜きも必要だ。」
「そうだけど。」
「ま、僕は辻だけど、佐藤の家も隅々まで知ってるからね。」


3人でダイニングに移動した。
すると、3人の女中はもう支度を済ましており、すぐ食べられる洋食を用意してくれていた。
「住みません、みなさん。」
櫻は丁重に感謝した。

「いえいえ、お嬢様。私たちも暇してましたから。おかえりなさいませ。」
代表してサクが言ったが、他の二人もニコニコしていた。


櫻は帰ってきて、本当に幸せな気分になった。
夕飯はとても落ち着いて、それでいて愉快な会話で美味しい夕食だった。
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