309 / 419
第十六章 最終学年
30、夏になって
しおりを挟む
6月に入ると、忙しい日々になった。
淳之介の家庭教師、洋装店の経理、出版社への勤務、ノアの授業、空いている放課後は師範の勉強に充てた。
学校にいる間は前年のように勉強するのではなく上野とよくいた。
学生生活をきちんと味わいたかったのもある。
「櫻さん、忙しそうね。」
「うん、勉強も他の家に行ったりとかね。」
「いいお家のお嬢様になっても色々大変なんだね。」
「和枝さんだって。」
「そう、姪がねそれはやかましいわよ。」
「可愛くないの?」
「可愛いわよ。でも、みんなそこにかかりっきり。」
「じゃあ、和枝さんは放置なの?」
「その通り!」
「あら、でも、将来のこととか考えるといいんじゃない?」
「どうして?」
「だって、お見合いとかたくさん勧められても」
「それはね。でも、いい人がいたら私結婚してもいいのよ。」
「え?」
「ああ、もちろん、職業婦人にはなってみたいわよ。でも、結婚までの間。」
「そうだったのね。」
「結婚相手は親が決めるでしょ。だから、姉さんみたいに余計な体験をせずに気の合うフィアンセが欲しいわ。」
「お見合いって難しいんでしょ?」
「櫻さんはお父様から言われないの?」
「ああ、そうね。」
「なんだか、歯切れが悪いわ。」
「うーん。でもね、私師範に行きたい一心だし、ちょっと考えられないっていうか。」
「そうかあ。でも、私は落ち着きたいわ。お姉さんみたいに揉めたくないの。」
「恋愛は御法度?」
「うーん。職業婦人になって、余計な人と出会って恋に落ちてもなんだかね。」
「そうなのかあ。」
「それはそうと、夏休みの予定、決めた?」
「え?」
「最終学年だし、勉強ばっかりも?」
「考えてもなかった。」
「櫻さんてそういうとこ、抜けてるのよね。」
「うーん。でも、他にすることないし。」
「じゃあ、うちの別荘に行かない?」
「別荘?」
「館山に別荘があるの。花火大会は本当に綺麗よ。」
「私が行っていいの?」
「それはもちろんよ。でも、姉さん家族もいるかも?」
「それじゃおじゃまじゃ?」
「私は肩身が狭いのよ。友達と遊びたいわ。海岸もあるし。」
「私、まだ海水浴したことない。」
「櫻さん、本当、何も勉強づけだったのね。」
「うーん、そうかなあ」
「行こう!お父様に聞いてみて?」
その話を聞いた時、櫻は少しワクワクした。
実際、海水浴は雑誌でしかみたことがなかった。
東京でも大森まで行けばできると聞いたが、行くことも考えてなかった。
最終学年のいい思い出に行ければいいと、父に相談しようと思った。
淳之介の家庭教師、洋装店の経理、出版社への勤務、ノアの授業、空いている放課後は師範の勉強に充てた。
学校にいる間は前年のように勉強するのではなく上野とよくいた。
学生生活をきちんと味わいたかったのもある。
「櫻さん、忙しそうね。」
「うん、勉強も他の家に行ったりとかね。」
「いいお家のお嬢様になっても色々大変なんだね。」
「和枝さんだって。」
「そう、姪がねそれはやかましいわよ。」
「可愛くないの?」
「可愛いわよ。でも、みんなそこにかかりっきり。」
「じゃあ、和枝さんは放置なの?」
「その通り!」
「あら、でも、将来のこととか考えるといいんじゃない?」
「どうして?」
「だって、お見合いとかたくさん勧められても」
「それはね。でも、いい人がいたら私結婚してもいいのよ。」
「え?」
「ああ、もちろん、職業婦人にはなってみたいわよ。でも、結婚までの間。」
「そうだったのね。」
「結婚相手は親が決めるでしょ。だから、姉さんみたいに余計な体験をせずに気の合うフィアンセが欲しいわ。」
「お見合いって難しいんでしょ?」
「櫻さんはお父様から言われないの?」
「ああ、そうね。」
「なんだか、歯切れが悪いわ。」
「うーん。でもね、私師範に行きたい一心だし、ちょっと考えられないっていうか。」
「そうかあ。でも、私は落ち着きたいわ。お姉さんみたいに揉めたくないの。」
「恋愛は御法度?」
「うーん。職業婦人になって、余計な人と出会って恋に落ちてもなんだかね。」
「そうなのかあ。」
「それはそうと、夏休みの予定、決めた?」
「え?」
「最終学年だし、勉強ばっかりも?」
「考えてもなかった。」
「櫻さんてそういうとこ、抜けてるのよね。」
「うーん。でも、他にすることないし。」
「じゃあ、うちの別荘に行かない?」
「別荘?」
「館山に別荘があるの。花火大会は本当に綺麗よ。」
「私が行っていいの?」
「それはもちろんよ。でも、姉さん家族もいるかも?」
「それじゃおじゃまじゃ?」
「私は肩身が狭いのよ。友達と遊びたいわ。海岸もあるし。」
「私、まだ海水浴したことない。」
「櫻さん、本当、何も勉強づけだったのね。」
「うーん、そうかなあ」
「行こう!お父様に聞いてみて?」
その話を聞いた時、櫻は少しワクワクした。
実際、海水浴は雑誌でしかみたことがなかった。
東京でも大森まで行けばできると聞いたが、行くことも考えてなかった。
最終学年のいい思い出に行ければいいと、父に相談しようと思った。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
孤独なメイドは、夜ごと元国王陛下に愛される 〜治験と言う名の淫らなヒメゴト〜
当麻月菜
恋愛
「さっそくだけれど、ここに座ってスカートをめくりあげて」
「はい!?」
諸般の事情で寄る辺の無い身の上になったファルナは、街で見かけた求人広告を頼りに面接を受け、とある医師のメイドになった。
ただこの医者──グリジットは、顔は良いけれど夜のお薬を開発するいかがわしい医者だった。しかも元国王陛下だった。
ファルナに与えられたお仕事は、昼はメイド(でもお仕事はほとんどナシ)で夜は治験(こっちがメイン)。
治験と言う名の大義名分の下、淫らなアレコレをしちゃう元国王陛下とメイドの、すれ違ったり、じれじれしたりする一線を越えるか超えないか微妙な夜のおはなし。
※ 2021/04/08 タイトル変更しました。
※ ただただ私(作者)がえっちい話を書きたかっただけなので、設定はふわっふわです。お許しください。
※ R18シーンには☆があります。ご注意ください。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる