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第十五章 佐藤櫻として

8,辻を見送る

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一通り、二人は話を終え、辻は変えることなった。

「スエさん、ぼくは帰るから夕食はいらないよ。」
「え?ぼっちゃまと坂本様の分もつくってしまいましたよ。」
「ああ、じゃあ、すこしおすそわけしてもらおうかな。」

そう聞くと、スエは作った食事をつつみにキッチンへ向かっていった。

「櫻君、長く失礼したね。」
「いえ、うれしかったです。」
「これからは、気兼ねなく会えるね。」
「そうですね。」
「それでなんだけど、僕の仕事もちょっとふえてね。かえりの車に同乗できなくなる日が多そうなんだ。」
「え?そうなんですか?」
「坂本に送らせるのは続けてもいい?」
「えっと。。。。」

櫻は考えた。
「私、先生と一緒に帰らない日は電車にします。」
「気を使わなくていいのに。」
「そうではなくて、父に話をしたら。」
「佐藤支店長と?」
「電車の時間って有意義だって同感したんです。」
「それは一理あるね。」
「だから、女学生らしく、通学します。」
「この家からだと銀上は電車でも20分程度だもんな。」
「その20分にたくさん本が読めます。」
「車じゃ、そうはいかないもんね。」
「あら、先生それをご存じで車をお使いで?ふふ。」
「僕は坂本との会話を楽しむことも重要なんだ。もちろん、ひとりで電車も乗ることはあるさ。」
「ぼっちゃまなんですね。」
「からかうね。櫻お嬢様。」
「先生も。」

そんな会話をしていると、スエが容器に入れた夕飯を風呂敷に包んでもってきた。
「ああ、手間をかけたね。」
「いえ、ぼっちゃまの常套句ですから。」
「悪者扱いしないでくれよ。」

三人でハハハと笑った。

「ああ、坂本がくるまでまってるからそろそろ行くよ」
「先生、今日はありがとうございました。」
「うん。これからは頻繁に来るよ。」
「大丈夫ですか?」
「遅い時間の訪問もゆるしてくれるかな?」
「何時くらいですか?」
「うーん、8時とか。」
「もう寝巻になってます。」
「きみの寝巻もいいね。」
「破廉恥ですね。」

横にいたスエが笑った。
「お二人、ほんとうに仲がよろしくて。ぼっちゃま、ご主人様のいる時間にもぜひ。」
「ああ、そうするよ。」

そういって、辻は佐藤邸をでていき、櫻とスエで車が発射するのを見送った。
もう、夕日の時間になっていた。
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