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第十五章 佐藤櫻として

2、佐藤家について

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車で30分ほどで佐藤家についた。

車の音で反応したのか、女中二人が家から出てきた。

「ああ、ちゃんと紹介してなかったね。ナカとスエだよ。」
佐藤が言った。
「ナカです」
「スエです。」

二人は車から降りてきた櫻に礼をした。
櫻はすかさず、一礼した。
「本日からよろしくお願いします。」

ナカとスエは笑った。
「お嬢様、こちらはあなたの家ですよ。そんないちげんさんみたいなご挨拶は。」
「ああ、どうもお嬢様っていうのが実感なくて。」
「徐々に慣れていきましょう。お互いに。」

二人とも感じのいい女中だと櫻は感じた。

「じゃあ、僕はこの車でそのまま会社に行くから、櫻の荷物を二人は持ってくれるかな?」

「はい!」

手早く、ナカとスエは後部座席から荷物を取ると、佐藤は車で去っていった。

「すみません、荷物、持たせてしまって。」
「もう、お嬢様、あなたはこの家の主人でもあるんですからそんなんに遠慮しないでくださいな。」
「でも。」
「ご主人様から少しは伺ってます。」
「何をですか?」
「お嬢様が今までご苦労なさって育ってきたと。」
「そうですか。」
どうやらナカが姉女中のようだった。
「ナカはもう、10年こちらで女中をしてますから、なんでもおっしゃってください。ちなみにスエも5年目なんですよ。」
「じゃあ、家のことなら隅から隅まで。」
「はい。でもサキさんの方が、20年くらいだから長いですね。」
「ああ、ピアノの時、いつもサキさんにお会いしてました。」
「サキさんは通いなので、昼間はずっといらっしゃるんですが、朝は私たち住み込みの二人なんです。」
「3人でこちらを?」
「そうです。会食をこちらですることもありますからね。家事以外にも色々忙しいけど楽しい家ですよ。」

そう、ナカが言うと、家の中へ案内された。
「お嬢様、使われるお部屋をご案内しますね。」

2階の西側の角部屋を案内された。
部屋を開けると、可愛い壁紙が貼られたベッドと机のある部屋だった。小さなタンスもある。
「お気に召しましたか?」
「はい。でも、こちらの部屋本当に使っていいんですか?」
「お嬢様が気になさってるのは前の使用者についてですか?」
ナカはズバリ聞いてきた。
「はい。。」
「ご心配なさらず。こちらは客室として使用されていた部屋を少し直しただけです。ご主人様のお嬢様たちのお部屋はそのまま残っております。」
「それを聞いて安心しました。」
「私もそれを聞いて安心しました。」
「え?」
「櫻お嬢様が前のお嬢様を乗っ取ろうなんて方だったらとちょっと心配しておりました。」
「いえ、そんな、でも実際は。。」
「心の中は見えません。でも、表情でわかります。あなたが誠実なお嬢様だと言うことは。」

ナカとの話は続く。。。
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