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第十四章 望月家からの旅立ち

18、宴の終わり

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3人の演奏が終わり、ダイニングにいる人物たちは皆余韻に浸っていた。

すると、また急に電気が消え、ドアが開いた。

入ってきたのは姉弟子達である。

手には蝋燭に火が灯ったケーキであった。

「え?」
櫻は驚いた。今日は姉弟子達は仕事で来ないと聞いていたからだ。

「櫻くん、驚いたかい?今日の日をみんなで考えて、最後は望月のメンバー全員で君を送り出そうということにしたんだよ。」

淡々とした口調でピエロの望月が言った。

「さあ、前に出てきて」

櫻が上座に行くと、姉弟子達全員が歌い始めた。

「さよーなーらー櫻さーん。さよーならー櫻さーん。とてもー悲しーけれどー。」
「まーだまだー一緒よー」

櫻は驚いて泣いてしまった。
「櫻くん、みんな、君のことが大好きなんだよ。」

「ううう、私、こんなにしてもらって、本当に皆さんのことが大好きで、大好きで、仕方なくて、ここにいられるだけで本当に幸せで。。。」

姉弟子が言った。
「さ、この蝋燭の炎を消して。」

泣きながら、櫻は蝋燭の炎を、ふっと消した。
すると、また電気がつき、ダイニングには集まった姉弟子達がいっぱいでぎゅうぎゅになっていた。

「ははは」
淳之介が笑った。
「ははは」
辻も笑った。
次第に、その場にいる全員が笑った。

なんて素敵な空間だろうと櫻は思った。
その時、辻を見た。
辻も泣きながら笑っていた。
ああ、この人は私と一緒の気持ちでいてくれているんだと、櫻は思った。
そして、その密かな時間を胸にしまっておくことにした。

「じゃあ、みんな揃ったことだし、台所にまだ置いてある食べ物をリビングに運んで!」
ピエロの望月が姉弟子達に頼んだ。
そう、仕事終わりであったのだ。

「あの、皆さん、お仕事。。」
櫻が遠慮がちに言った。
「櫻さんの大切な日だから、特急で終わらせたわよお。」
「そうそう、もう、あたふたなんてもんじゃなくて。」
「笑っちゃうわね。」

そして、宴は終了した。
ダイニングやテラスに皆が移動し、各々、座ったり立ったりまるで立食パーティーのような雰囲気でここの人々は櫻に話しかけていき、その時間は夜まで続いた。
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