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第十四章 望月家からの旅立ち

10、宴の開始

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望月家に佐藤支店長、辻、坂本がやってきて、ダイニングに通された。
まだ洋装店は営業中なので、弟子たちは家にいない。
望月家からはアグリ、トモヨ、淳之介が腰掛けていた。

「あれ?望月くんは?」
辻があぐりに聞いた。
「先ほと、一緒に食事を作って、このテーブルに並べたら、書斎に行ってしまって。」
「宴の開始は6時だよね?」
時計を見ると、5分過ぎていた。

「望月に何かあったのかな?」
辻は少し心配になって声に出した。
「ああ、ちょっと主人のこと見てきます。」
アグリが席を立って、ヨウスケの書斎に向かった。

ダイニングはしんとした。
出席しているみんなが緊張しているのだ。

淳之介はどうにかしようと考えていた。でも、何を言っていいのかわからなかった。
櫻はこの瞬間も大事にしたいと思っていた。

すると、急に電気が消え、扉が開いた。
「レディースアンドジェントルメン!」
蝋燭を持った人物が現れた。
「今宵は、グッパイ櫻、ウェルカム櫻の宴にようこそ!」
フッと蝋燭の火が消えた。
すると、アグリが電気をつけた。

ダイニングの上座に道化師の格好をした望月がいた。
「今日は楽しい会にするために、皆さんには櫻さんのショウにご参加いただきます。」
開口一番望月が話し始めた。
「さて、まずは主役の櫻くん、こちらへ」
櫻は椅子から立って望月のいる上座に向かった。そのタイミングでアグリは席に戻った。

「あのお。」
櫻が口を開いた。
「えっへん。状況がわからないと思いますが、まずは主役のあなたにこの薔薇を」
どこに隠し持っていたのかわからないが、望月がマジックのように薔薇を出し、櫻へ渡した。
「あ、ありがとうございます。」

「さて、今日は特別ゲストに宴を手伝っていただきます。さあ、どうぞ!」
すると、小さな鍵盤を持ったノアが部屋に入ってきた。
「ノア先生。。」
櫻はびっくりした。
「皆さん、初めましての方も、いますね。私は櫻さんのピアノ、教えてるノアです。辻さんと望月さんのフランス時代の友人です。」
皆が、舶来人と言うことで少々びっくりしたが、その自己紹介で安心した。
「この小さな子供用鍵盤で、今日の演奏をします。ショウのお手伝い、させてください。」
ノアは控えめに言った。

そして、上座の端においてある一脚の椅子に腰掛けると小さな鍵盤で、音楽を奏で出した。
なんとも言えない、可愛い音色に皆が聴き惚れた。

そして、望月はこう言った。
「では、この上座に櫻くんには座ってもらって、一つづSYOWを楽しんでもらいましょう。」
参加しているみんなが気になった。
しかし、これは序盤。楽しい宴が始まったのだ。
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