夢は職業婦人〜カラクリ御曹司と偽お嬢様の恋

第十三章 養女になる準備

２５、ノア先生との授業１

ノア先生とのピアノのレッスンも４回目になっていた。

「ブラーボ。」
「どういう意味ですか？」
「とても素晴らしいということです。」
「まだ左手がおぼつかないです。」
「最初から何事も急いではいけません。」
「どうして？」
「生き急ぐといいことはないからです。」
「え？」
「イタリアでは午睡、シエスタというのがあります。」
「午睡？」
「そう。お昼ご飯を食べたら眠ります。その後また仕事をします。」
「すごい習慣ですね。」
「日本に来た時、働き者ばかりでびっくりしました。」
「イタリアでは普通じゃないんですか？」
「そうですね。イタリアではあまり急ぎません。」
「急がない？」
「そう。みんなじっくり考えます。そして、家族の時間を大切にします。」
「日本と逆ですね。」
「そう。だから、最初、日本の生活に慣れなくて、夫と喧嘩しました。」
「ご主人様は外国では日本式ではなかったのですか？」
「そうですね。。。とても合わせていたように感じます。」
「でも、日本に来て変わってしまったと。」
「変わったのではなくて、合わせていただけで。ノアがそれを知らなかった。それだけです。」
「でも、それは落ち着いたんですか？」
「今はお互いのペースを思い合っています。さすがにシエスタはしませんが、午後の始まりは何もせずゆったり過ごすこともお多いです。」
「なんだか夢の国のお話のようですね。」
「櫻さんにイタリアやフランスを見せたいとノアは思います。」
「どういう意味で？」
「あなたは吸収力がとても強い。だから、若いうちに外国を知った方がいい人です。」
「でも、生き急がない方がいいって。」
「そう、生き急がない世界を見た方がいいのです。」
「でも、私には今時間がありません。」
「誰かあなたにそれを課しましたか？」

そう言われて、櫻は我に帰った。
誰も私に働け、勉強しろなんて言っていない。自分が好きで忙しくしているのだ。

「ノア先生、私、少しわかった気がします。」
「goo」

ノア先生との話はまだ続きます。