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第十二章 新学期

2、久しぶりの車中

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櫻は放課後に寄り道をするという約束をして、浮き足立っていた。
今日でなくても、来週というのがとても嬉しかった。

放課後、帰ろうとすると、辻の車がいつものところで止まっていた。

「先生。」
「やあ」
さっと後部座席に座ると、車発車した。

「なんだか、機嫌がよさそうだね。」
「先生、私、友達を作ってみようと思って、来週、放課後にパーラーに行く約束をしたんです。」
「ほお。君にしては大胆なことをしたね。」
「実は、まだ見せてないエッセイに学校のことを書いて、私、色々経験してないなって。」
「うん。君は田中菓子店にいた時もすぐ仕事だったしね。」

先生は一番の理解者だ。だから、報告するのも嬉しい。

「ねえ先生。」
「どうしたい?」
「先生は、中学の時、どんな放課後を過ごしたんですか?」
「僕は優等生じゃなかったから、だいぶ悪いこともしたよ。」
「どんなこと?」
「たとえば、タバコや酒を覚えたりとか。」
「不良ですね。」
「でも、あの時は憧れたんだ。そういう大人なことに。」
「友達とするとその背徳感もひとしおですか?」
「そうだよ。僕は、家族に恵まれなかったけど、友人には恵まれたと思う。」

辻を作っているのは、そういう学校での経験だと思うと教師を選んだのももっともだと思った。

「だから、先生になったんですか?」
「そうとも言えるね。」
「でも、中学じゃなくて、女学校にしたのはどうして?」
「女学生にも自由を教えたくてね。」
「男子学生は違うんですか?」
「家によっては厳しいものもいるが、基本的には自由だよ。」
「私も男に生まれたかった。」
「でも、男だったら僕と出会ってなかったよ。」
「ふふ。面白いこと言いますね。」

本当は嬉しかった。辻がそんなことを冗談まじりにいうことを。

「私ね、後一年ちょっとのこの女学生を本当に楽しもうと思うんです。」
「そうしたらいいよ。」
「でも、お仕事もきちんと修行したいです。」
「そうだね。君ならできるよ。」

そういうと、柔らかく辻に抱きしめられた。
その優しさに櫻は温かくなっていた。
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