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第十一章 櫻の冬休み

12、新年初出社

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櫻は洋装店の仲間と出勤し、仕事始めをした。
初日とあって、店は盛況だった。

「江藤さん、お客様」
洋装店の先輩から事務所に客を通された。

「あ、富田編集長。」
「あら、明けましておめでとう。」
「すみません、ご挨拶もしないで。明けましておめでとうございます。」

「ちょっといいかしら。」

事務室は応接セットがあり、そこで話すことにした。

「すみません、お茶も出さずに。」
「いいの。うちも明日から仕事始めだからね。」
「あ、ということは私も明日から。。」
「うん、来てくれると助かる。どう?」
「アグリ先生が良ければ。」
「アグリには了承してあるの。櫻さんがどうかなって。」
「じゃあ、午前中はこちらで、午後に。」
「いいわ。でも、なんだか年末年始の間にちょっと雰囲気変わったわね、」
「え?」
「櫻さん、自分で気が付かない?」
「えっと。」
「多分、誰かと出会ったか、何かの文章に触れたとか。」

富田編集長はすごい。言い当てている。
「あの、、、実は。。」
「うん。」
「大杉さんてかたの演説を見たんです。」
「あの活動家の?」
「はい。以前から気になっていて。」
「うん、あの人はすごいわよね。」
「あったことあるんですか?編集長?」
「うん、うちに書いてもらったこともあるわよ。」
「すごい、説得力でした。」
「あの人は人を惹きつける力がすごいのよね。」
「そうなんです。」
「でも、それ、辻さんに絶対言っちゃダメよ。」
「え?」
「アグリにも言われたでしょ?」
「はい。」
「大杉さんてね、女性関係が派手でも有名なの。」
「派手って?」
「今は4人とお付き合いしてるって」
「え?」
「しかも1人は奥さん。多分、ヨーロッパ式の自由恋愛をしてるんでしょうけど。」
「すごいですね。」
「でも、それ以上に魅力的な人だから。」
「私、興味持っていいのでしょうか?」
「思想は誰も縛れないわ。でも、付き合っている相手を傷つけるのはルール違反。」

そう言って、富田編集長は帰って行った。
うっかり、辻に話してしまいそうな櫻は旅行から帰った辻にくれぐれも離さないようにと思うのであった。
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