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第十一章 櫻の冬休み

4、本や雑誌と向き合う

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櫻は冬休み中に読み溜めていた本や雑誌を繰り返し読んでいた。

もちろん気に入っているものも、自分が知らない世界のものも読んでみた。

今、辻が旅行に行っているので新しい本は手に入れることができないが、今ある本でも書き写したり有意義であった。

トントン

櫻の部屋がノックされた。また、淳之介が遊びにきたのかと思ったら
「櫻さん、いいかしら?」
アグリの声だった。

「先生、どうぞ。」
アグリを部屋に招き入れた。

「どうかされましたか?」
「ああ、先日、青踏持ってたでしょ。私も雑誌読むのが好きで部屋にたくさん置いてあるから、気にいるかわからないんだけど、とりあえず何種類か持ってきたの。」
「え、運ぶのだったら私がしましたのに。」
「いいのいいの。運動になるしね。」
「先生、こんなに指定いただいて。」
「私の雑誌ね、もう10年前のもあるけど結構いいのあるのよ。」

10年前と言ったものはちょっと日焼けをしていたが、とても綺麗に保存されていた。

「先生、どんな雑誌がお好きだったんですか?」
「私はねやっぱりファッション。後は女性の生き方。」
「先生も女性の生き方に興味があったんですか?」
「うん。だって、女学校辞めた時に。何かスイッチが入った気がするの。」
「スイッチ?」
「そう。あのね、私の人生終わりかな、と一瞬思ったんだけど、ああ、この赤ちゃんと生きていくんだと思ったら、恥じない人生、自分の人生を送りたいと思ったのよ。」

子供を産んで、職業婦人を辞める人が大半である。その中で、子供を産んだ後に職業についたアグリはすごいと思う。

「もしかすると、あなたとの生活も後少しかもしれないからね。」
「佐藤支店長のことですか?」
「そう。佐藤支店長はそれはあなたのことをお待ちのようよ。」
「私、望月のお家のことも本当に大好きなんです。」
「なら、ここを実家だと思ってくれていいわ。いつでも好きな時に遊びに来れるように。」
「私、皆さんがしてくれている準備に乗っていけるでしょうか?」
「している準備?」
「佐藤支店長の養女になって、辻先生と結婚するという未来です。」
「あなたの想像どうり、簡単ではないわね。でも、それを1番簡単にできるようにしてくれているのが辻さんでしょ?」
「はい。」
「なら、それに合うようにあなたも今まで通り頑張ればいいだけよ。」

「じゃあ、期限はないから、この雑誌で楽しんでね。」

アグリはそっと部屋を出て行った。

机に置かれた10冊の雑誌はアグリの血や肉になったものだ。
本当に嬉しかったと櫻は思う。
まだ会う冬休みにじっくり読もうと思ったのであった。
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