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第九章 成長に合わせて

1、櫻、夏休みもあと二日

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もうあと二日となった夏休み。
結局夏休みらしいこと、海に行ったり山に行ったりなんてことはなかったが、今まで生きてきて1番充実した夏休みであった。
それもこれも、辻が全てのレールを引いてくれたからだった。
女学生時代にこれほどに職業婦人について触れることはできなかっただろう。
しかし、その憧れの憧れの世界に入らせてくれた。

「先生、あと二日になりました。」
「うん、本当にお疲れ様でした。」
「私、本当に先生に感謝しているんですよ。」
「わかってるよ。君の顔に書いてある。」
今日は、シウマイの弁当だった。
櫻が以前美味しいと言って、定期的に差し入れてくれる。


「先生、本当に美味しいですね。」
「本当は色々なレストランに君を連れて行きたいけどね。」
「そうですか?」
「でも、僕たちはまだ教師と生徒のままだ。」
「そうですね。」
「自由恋愛を隠さなきゃいけないところから、君を救いたい。」
「それってどういう?」
「卒業したら、君を自由の身にしたいんだ。」
「でも、父が。」
「わかってる。そのお父上をどうにか説得できる、あるいは君を諦めてくれる方法を思案してるところだよ。」
「先生、そんなことして大丈夫でしょうか?」
「うん、坂本といろいろ話して、妙案も出てきたんだ。」

一呼吸おくと、辻が話し始めた。
「君をある程度の家の養女にして、僕の家に嫁いて欲しいんだ。」
「え?養女?」
「うん。どの家にするかは相談が必要だけどね。いいところを探しているところなんだ。」
「でも、父が許しません。」
「許さなくても、極端なことを言うと、勘当されてもいいと考えているんだよ。」

そんなこと大丈夫なのだろうか。本当にできるのだろうか。

「私のような育ちのものが、養女に入れるものでしょうか?」
「ここ数ヶ月で君は色々な人たちに会ってきただろう。君の良さを色々な人が知った。だから、その中に君をぜひにって言う人もいると思うんだ。」

そうであってほしい。でも、私のこの汚れた経歴を消すこと、偽お嬢様という仮面を本当のお嬢様にできるのだろうか。と櫻は思った。

「櫻くん、君は心配しなくていい。まだ卒業まで一年以上あるからね。」
「。。。はい。。」

どうか神様、私をみていたら、辻先生との将来に明るい未来をと願う桜であった。
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