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第八章 遭遇

12、夢を語り合う少女たち

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大久保が帰ってきてから、夕食後に話しかけてきた。
「江藤さん、ちょっとお話ししない?」
「いいですよ。ああ、今日は午後からの件すみませんでした。」
「いいの。あなたらしい新しい夢を見つけたんでしょう?」
「まだ、これが本当の夢か、わからないんですが。」

「江藤さん、立ち話もなんだからテラスの方へ行きましょう。」
そう大久保はいうと、二人でテラスへ出た。今日は新月に近いのか月は薄い。
その代わり、たくさんの星が見えた。

「私の田舎はね、星がたくさん見えて、もう夜は溢れて落ちてきそうなの。」
大久保がしみじみ言った。
「私の実家の秩父のそうです。でも、疲れていつも夜に星を見る時間なんてありませんでした。」
「秩父の女学校からこっちにきたの?」
「いえ、女学校は所沢まで通ってました。」
「あなたも本当、苦労してきたのね。仕事してた時もあったっていうしね。」
「大久保さん、お話しって?」
「うん。私ね、もう少しで店頭修行をさせてもらえるじゃない?だから、ちょっと不安なのよ。」
「でも、あんなに楽しみにしてたのに。」
「うん、楽しみは楽しみ。でも、紳士の方に似合う洋服を採寸して選ぶのって難しいわよね。女性だったらいいけど。」
「そうですね。望月洋装店は男女どちらのお客様にも合う仕立て屋さんですから。大久保さんが不安なのはわかります。」
「江藤さんは仕立てにはもう興味ない?」
「いえ、販売するという意味ではとても興味があります。流行を発信できるという点でも素晴らしい職業です。」
「さすがね。流行に関してっていうと、やっぱり編集さんがあってるのかもしれないわね。」
大久保に言われて再度思った。自分は自分で何かを発信したいんだと。その発信したものが誰かの心に届けばいいと。
でも、今は何を伝えたいのかわからない。早く、それを見つけて辻に見合う女性になりたい。

「私ね、夢を相談したり語り合う人と出会ったの初めてなの。だから江藤さんと話したくて。」
「私も、大久保さんとお話ししてると自分がどういう道に進みたいのかワクワクして、考えられるというか。」
「そう!私も!私たち、星型同盟っていうの作りましょ?」
「星型同盟?」
「この星の方に輝く職業婦人になるっていう同盟よ。」
「素敵ですね、大久保さん。」
「ねえ、これからはキヨって呼んで。私も櫻って呼んでいい?」
「はい!ぜひ!」

この夜、櫻はかけがえのない友を得た。この先もずっと続くその友情は途絶えることを知らない。
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