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第八章 遭遇

6、辻 親子との会話

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辻が夜家に帰るとまだ辻の父は帰っていなかった。
辻六助。
社長らしからぬその名前には理由があった。
辻の祖父にあたる人物には本妻と愛人がいた。所謂2号さんだ。
本妻は体が弱く、生まれた子供が元気に育つことがあまりなかった。
一方で愛人の子供は唯一辻六助だったのだが、すこぶる元気で利発だった。

本妻の3男がまだ生きていたのだが、長野に静養するほど体が弱かったので、辻の祖父は世継ぎを六助にすることにした。
六助は自分に順番が回ってくることはないと思っていたので、大学もいかず、辻財閥の北海道の仕入れで修行していた。
いきなり北海道から東京に戻って、家業を告げと言われた時、心底ワクワクした。
だからこそ、北海道で一番の美人を連れ帰って、妻にしようと決めた。
六助の不幸は妻をきちんと可愛がらなかったことかもしれない。
普段、両親が一緒にいなかった。だから、家族の形を六助は知らなかった。
自慢の妻をパーティーについれていって、羨ましがられた。
しかし、妻はそれをとても嫌がった。なぜ、この地位を得たのに。。全然わからなかった。

というのが六助の若い頃の話で、辻自体はそうならないでいたいと幼心にずっと思っていた。

「ただいま。」
六助が帰ってきた。
「父さん、おかえり。」
「珍しいな、潤がリビングにいるなんて。」
「こちらの方が月が綺麗に見えるので。」
「今日は満月じゃないが、明るいな。」
「父さん、最近何か変わったことはありましたか?」
「あ、そうそう。お前の学友の望月くんの細君の弟子にあったよ。」
「望月の?」
「望月夫人はやり手だからね。さすが、弟子の教育もしっかりしている。」
「どう思った?」
「どうもこうもないさ。少し話しただけだからね。1人の子はいやに聡明な容姿をしていたね。」
「そう。僕もおととい、望月の家にいって弟子の方々ともお話ししたよ。」
「ハハ。まあいい。私はね、潤がどんな女性を紹介してくれるか本当に楽しみだよ。」

ハッとした。やはりもう知っているのか。。。
「父さん、今日は商談が続いて疲れてるんだ。休ませてもらうよ。」
「ああ、お疲れ様。」

自室に戻った辻は混乱した。しかし、思考を切り替えた。
これはチャンスかもしれない。もっと櫻を教育して、父が納得する女性にするのだ。
アグリに相談しようと思った。辻は半分ワクワクしている自分に気がついていなかった。
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