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第四章 夢を見つけた
7、鈴音の生い立ち
しおりを挟む「ねえ、もっと私に聞きたいことないの?」
「僕はね、普通の編集者じゃないんだ。だから、どんな修行してるかとかそういうんじゃなくて、スズメの根っこを掘り下げたい。」
「それって。。」
「そう、どうしてここの置き屋に来ることになったってことさ。ちょっと聞いたことはあるけどね。言いたくなかったらもちろん僕は記事にしない。」
望月はいつになく真剣な顔で鈴音に話しかける。
「それで、具体的に何が知りたいの?」
「生まれてから置き屋に来るまでの経緯さ。」
「こんなこと記事にして、みんな面白いかしら。いいわよ。私は恥じる人生じゃないしね。私は両国のちっちゃな料理屋の4番目でね。美味しいけど、母さんが病弱で、父さん一人で店をしてるからいつも貧乏だった。兄さんや姉さんと年子だったから奉公にも出られず、ずっと小さな世界で空見てた。」
鈴音の目が遠くを見ている。
「ある日ね、6歳くらいかしら。店にここの置き屋のお母さんが来たの。あ、お母さんてさっきあったと思うんだけど、ここの主人ね。それで、お店で手伝っている私を見て、10歳になったら、うちに来ないかっていうの。父さんは反対したわ。うちは貧乏だけど、子供を身売りに出すほどの落ちぶれちゃ、いないって言ってね。」
櫻は少なからず、鈴音の生い立ちに自分の生い立ちを重ねていた。ここにも私と同じような人がいる。。。
鈴音は続ける。
「でね、置き屋のお母さん、こう言ったの。芸妓は誇りある職業です。だから、うちに来てもらうときお金はつつみますが、それは身売りのお金ではなく、あなたのお嬢さんのお預かり金だってね。父さん、どうしてうちの娘なんか欲しいんだってまた怒って。そしたら、私の配膳を見て決めたって置き屋の母さんがいうの。常連客に一味置いたり、時には七味置いたり、全部聞かずにやってるってね。そういう気を回せる子が、芸妓に1番向いてるからって。」
子供は学ぶ。それは櫻も昔の奉公先で経験したことだった。
「私、父さんに懇願したわ。芸妓になりたいって。じゃあ、断るついでに浅草橋まで行ってみるかってね。そしたら、この家でしょ。ちゃんとしてる。遊郭じゃなくてちゃんとした置き屋だってね。もう一度父さんが話して、10歳からこの家に来ることになったの。」
望月が話す。
「スズメの気の利くところに、スカウトしたってことだね。スバらしい。まあ、あの時のお前も今のお前もやんちゃだけどな。」
「ヤンチャとか言わないで!チャキチャキの江戸っ子なの。だから許せないことは許さないし、私の考えは曲げない!」
「それだから半玉なんだなんて言われたらどうするんだい。でも、僕はなんでも謙らないスズメが素晴らしいと思うよ。」
望月はうまい。女性の心を知っていると櫻は思った。
そして、この鈴音の半生を共感して感動していた。
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