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第二章 職業婦人見習い

10、夢の世界へ

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「さて櫻さん、変身していかがでしょうか?」
いたずらっ子の顔をして車の後部座席で辻が櫻に問う。
「もう、何が何やらわからない上に、先生の意地悪もあって、私怒っておりますからね。」
「怒ることなんて一つもないでしょう。君は少し正直になってもいいんじゃないかねえ。」
ムクれて櫻は頬を膨らませる。

「アグリさん、大変魅力的な女性だったでしょう?」
「え、、はい。でも、あんなに心が広い女性にお会いしてことなくて。彼の方は生まれもお金持ちのお家柄なんですか?」
「アグリくんのお父様は有名な弁護士でね、でも彼女が2歳の時に亡くなって、頼るところもなく、貯金で暮らしていたそうですよ。幼少期は大変惨めな思いもしたそうで。遠縁だった望月くんのお父さんが、アグリくんの聡明さをかって嫁にとなったそうだよ。だから、彼女が美味しいものを食べたり、おめかししたりできたのは、結婚してからということだね。」
「でもその女将さんにならずに、東京でお店を開くなんて、私には考えつきませんでした。」
「アグリくんだってそうだよ。最初に東京に出てきた時なんて、群馬弁丸出しの田舎者でしたからね。ああ、僕は方言は好きだから、これは彼女をケッタイに思ったわけではなくてね。まあ、田舎娘な彼女に僕が東京案内しましてね。」
「先生が?」
「だって、望月くんはいつも風船みたいに飛んでいるからね。」
「そのうち、アグリくんは洋装店で服を作ってもらう事になりましてね、そこで、急に弟子にしてくださいなんて言い出したんですよ。」
「え!そんな行動的なことをなさったんですか?」

ニコニコしながら辻は夢中に離す桜をみている。
「まあ、そういうことでアグリくんは息子くんとお姑さんを東京に呼んで、弟子入りして、数年後、銀座に店を出したというわけです。」
「すごい。。。。お姑さんや息子さんまでもが東京に来てくれるなんて。。。すごく協力的なんですね、、、、」
「それはどうかなあ。あそこのお姑さん、うるさいしね。頭だってまだ古臭い考えの人だよ。」
「でも、皆さんとうまくやってる、アグリさんて、すごいとしか。。」

「まあ、アグリくんの話はまた後日詳しくお話ししますよ。職業婦人の代表ですからね。さあ、着きましたよ。」

自動車のドアを辻が開ける、手を引かれて外へ出た。
目の前に広がるのは大きな洋館のお屋敷だ。
「ここはね、フランス料理が食べられるレストラン、料亭のようなところでして、ドレスコードもあるから君はドレスを着てもらったんですよ。」
「先生、でも先生はまだ袴姿じゃありませんか?」
「僕は君が助手席でお待ちいただいている間に後部座席で洋装に着替えます。しばしお待ちを」

数分待つと、また車から降りるよう促された。
「さあ、参りましょうか、マドモアゼル」
辻の洋装は初めてみた。整った顔立ちに背の高い彼は、まるで異国人のようである。見惚れていると
「惚れ直しましたか?」
「い、いえそんなことありません!」
強がる櫻の手を引き、レストランの入り口へと向かう。それは、夢の国の通路のようだった。
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