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第一章 先生との出会い

4、夏の夜の夢

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櫻は夢の中にいた。

左腕は男性に掴まれている。

「よしてくださいな。私と生きていくことはできないのです。」
櫻らしくないか細い声で主張する。
「君らしくないですね。自分の道を切り開くのが貴女の主義ではないのですか?」
振りほどこうとも、その手は振りほどけない。
男性の顔を見ようとしても、霧に包まれてよく見えない。
どんな表情をしているのかもわからない。

刹那、櫻の身体が男性の腕の中に引き寄せられ、抱きしめられた。

状況が呑み込めず、混乱する。櫻はどうしていいのわからなかった。

「厭、厭です。」

「本当のことを言ってください。櫻さん、貴女の行きたい処は僕の場所ではないですか?」

櫻の身体が彼に包まれ、彼の鼓動を感じる。それはとても速いものだった。

「貴方こそ本当は怖いのではないのですか?」
櫻はふりぼった声を出す。

「いえいえ、僕は貴女と人生という船出に好奇心を抑えきれないんですよ。」

(ああ、この人はこういう人だった。。。。)

夢でもわかる夏の世の中。嬉しい気持ちが溢れて泪が止まらない。



ハッと目を覚ました。むしむしとした深夜であった。手で顔を触ると櫻の目から
溢れる泪。


(あれは、夢?)






彼女の人生を大きく変えるその出来事。それを夏の虫が知らせたのかもしれない。
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