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祝いの宴
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その夜は、祝いの宴が盛大に開かれた。
そこで、ロイド様は改めて私の両親に挨拶をしてくださった。
「クララとの結婚をお許しいただいたこと、感謝の言葉もありません……!
クララほど素晴らしい女性はおりません。
全身全霊をかけて幸せにしてみせます!」
カチコチになりながらそう言ったロイド様に、父も母も嗚咽するほど感激していた。
お父様は涙を流しながら、「娘をよろしく」と何度もロイド様の肩を叩いた。
「クララ。あなたとアランを婚約させたこと、すまなかったと思っているわ」
お母様が鎮痛なお声で私に言った。
「子供の頃のあなたたちはとても仲良しだったから、きっと仲のいい夫婦になるだろうって、安易にそう思った私たちが浅はかだった」
「お母様……、そんなふうにおっしゃらないで」
私とアランは、家柄も年齢も釣り合っていて婚約するのは自然だった。
普通は互いの仲の良さなんて全く考慮されないのが貴族の結婚というもので。
だから、アランと私が仲良しだったから婚約させてくれたのは、破格の気づかいだったのだ。
ただ、思うようにはいかなかったというだけ……。
お母様が微笑む。
「クララ。あなたは自分で自分の運命を変えて、ロイド様という素晴らしい夫と出会った。そんなあなたを誇りに思うわ」
「お母様……」
「遠く離れていてもずっとあなたを思っているわ。時々は、ロイド様と二人で顔を見せに来てね」
「はい……」
込み上げる涙を噛み締める私を、お母様は抱きしめてくれた。
皆に祝福されてとても幸せだったけれど、一つだけ気になることがあった。
あの日のアランの捨て台詞だ。
——覚えていろよ。ノランサス家をこけにしたことを後悔させてやる。
アランはそう言っていた。
アランは私の父のところにも押しかけてきて、婚約者がいながら他の男と結婚したと、私の不貞をなじったらしい。
父は呆れ果てて、ノランサス伯との関係もあるからつまみ出しこそしなかったけれど、冷ややかに追い返したそうで。
プライドの高いアランは、私に面目を潰されたと感じているはず。
きっと何か企んでる。
そう思っていた矢先のある日。
ドラヴァレン辺境伯夫妻——つまりロイド様と私宛に手紙が届いた。
差出人の名義は、ノランサス伯爵。
どうやら私の予感は的中してしまったみたい。
そこで、ロイド様は改めて私の両親に挨拶をしてくださった。
「クララとの結婚をお許しいただいたこと、感謝の言葉もありません……!
クララほど素晴らしい女性はおりません。
全身全霊をかけて幸せにしてみせます!」
カチコチになりながらそう言ったロイド様に、父も母も嗚咽するほど感激していた。
お父様は涙を流しながら、「娘をよろしく」と何度もロイド様の肩を叩いた。
「クララ。あなたとアランを婚約させたこと、すまなかったと思っているわ」
お母様が鎮痛なお声で私に言った。
「子供の頃のあなたたちはとても仲良しだったから、きっと仲のいい夫婦になるだろうって、安易にそう思った私たちが浅はかだった」
「お母様……、そんなふうにおっしゃらないで」
私とアランは、家柄も年齢も釣り合っていて婚約するのは自然だった。
普通は互いの仲の良さなんて全く考慮されないのが貴族の結婚というもので。
だから、アランと私が仲良しだったから婚約させてくれたのは、破格の気づかいだったのだ。
ただ、思うようにはいかなかったというだけ……。
お母様が微笑む。
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「お母様……」
「遠く離れていてもずっとあなたを思っているわ。時々は、ロイド様と二人で顔を見せに来てね」
「はい……」
込み上げる涙を噛み締める私を、お母様は抱きしめてくれた。
皆に祝福されてとても幸せだったけれど、一つだけ気になることがあった。
あの日のアランの捨て台詞だ。
——覚えていろよ。ノランサス家をこけにしたことを後悔させてやる。
アランはそう言っていた。
アランは私の父のところにも押しかけてきて、婚約者がいながら他の男と結婚したと、私の不貞をなじったらしい。
父は呆れ果てて、ノランサス伯との関係もあるからつまみ出しこそしなかったけれど、冷ややかに追い返したそうで。
プライドの高いアランは、私に面目を潰されたと感じているはず。
きっと何か企んでる。
そう思っていた矢先のある日。
ドラヴァレン辺境伯夫妻——つまりロイド様と私宛に手紙が届いた。
差出人の名義は、ノランサス伯爵。
どうやら私の予感は的中してしまったみたい。
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