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再会
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久しぶりに見たアランは、なんだか荒んでいた。
顔つきもそうだけど、服の着こなし、髪の整え方もなんとなくだらしがない。
それに、ここまで漂ってくる、染みついたお酒の匂い。
よくない飲み方をしているのがわかる。
アランの横には、大きく胸の開いた派手派手しいドレスを着た女がへばりつくように立っていた。
たしか……、ヘイフェリー男爵令嬢のジャンヌだったかしら。
あまり身持ちがよくないことで、社交界ではひそかに有名な方。
今も、アランと腕を組みながら、ロイド様のこともちらちら見てる。
オルガとは別れて、また別の女と遊んでいるってことね。
そんな相変わらずなアランを見ても、私の心は凪いでいた。
不思議なくらい、もう何も感じない——
アランの後ろの方には、ノランサス伯夫妻がいるのも見えた。
夫妻は冷ややかにこちらを一瞥すると、すぐに周りの人たちとの談笑に戻ってしまった。
昔から、お二人はアランにすこぶる甘かった。
私との婚約解消の顛末も、アランが自分の都合のいいように報告したのを鵜呑みにして、息子は悪くないと思っているに違いない。
ロイド様はアランの挑発に乗らず、穏やかに返された。
「お招きありがとう。お察しの通り、田舎者ゆえ、あまりに華やかな宴に目を回しているよ」
「ほう。ならば、もっと目を回して差し上げますよ」
アランがにやりと嫌な笑い方をして、背後に合図を送った。
すると、バルコニーに待機していた楽団が、ワルツを奏で始めた。
「せっかくですので、ダンスをご披露いただきたいのだが、いかがですか?」
ざわ、とまた周囲がざわめく。
「ドラヴァレン卿がダンスを?」
「踊っているところなんて、見たことがないが」
「あの方、踊れるのかしら……」
囁き合う人々を満足げに見回し、アランがちらりとこちらを見る。
「自信がないようでしたら、私が奥方と踊って差し上げてもよろしいのですよ——なあ、クララ」
アランがジャンヌを脇に押しやり、馴れ馴れしく私に手を伸ばしかけたその時。
ロイド様が私の腰を引き寄せた。
「せっかくのリクエストだ。踊ろうか、クララ」
「ええ、ロイド様!」
私はにっこりと笑い、ロイド様の手を取った。
顔つきもそうだけど、服の着こなし、髪の整え方もなんとなくだらしがない。
それに、ここまで漂ってくる、染みついたお酒の匂い。
よくない飲み方をしているのがわかる。
アランの横には、大きく胸の開いた派手派手しいドレスを着た女がへばりつくように立っていた。
たしか……、ヘイフェリー男爵令嬢のジャンヌだったかしら。
あまり身持ちがよくないことで、社交界ではひそかに有名な方。
今も、アランと腕を組みながら、ロイド様のこともちらちら見てる。
オルガとは別れて、また別の女と遊んでいるってことね。
そんな相変わらずなアランを見ても、私の心は凪いでいた。
不思議なくらい、もう何も感じない——
アランの後ろの方には、ノランサス伯夫妻がいるのも見えた。
夫妻は冷ややかにこちらを一瞥すると、すぐに周りの人たちとの談笑に戻ってしまった。
昔から、お二人はアランにすこぶる甘かった。
私との婚約解消の顛末も、アランが自分の都合のいいように報告したのを鵜呑みにして、息子は悪くないと思っているに違いない。
ロイド様はアランの挑発に乗らず、穏やかに返された。
「お招きありがとう。お察しの通り、田舎者ゆえ、あまりに華やかな宴に目を回しているよ」
「ほう。ならば、もっと目を回して差し上げますよ」
アランがにやりと嫌な笑い方をして、背後に合図を送った。
すると、バルコニーに待機していた楽団が、ワルツを奏で始めた。
「せっかくですので、ダンスをご披露いただきたいのだが、いかがですか?」
ざわ、とまた周囲がざわめく。
「ドラヴァレン卿がダンスを?」
「踊っているところなんて、見たことがないが」
「あの方、踊れるのかしら……」
囁き合う人々を満足げに見回し、アランがちらりとこちらを見る。
「自信がないようでしたら、私が奥方と踊って差し上げてもよろしいのですよ——なあ、クララ」
アランがジャンヌを脇に押しやり、馴れ馴れしく私に手を伸ばしかけたその時。
ロイド様が私の腰を引き寄せた。
「せっかくのリクエストだ。踊ろうか、クララ」
「ええ、ロイド様!」
私はにっこりと笑い、ロイド様の手を取った。
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