22 / 26
お生憎さま
しおりを挟む
手紙の内容は、ノランサス家が開催する夜会への招待状だった。
ノランサス家とドラヴァレン家に特に親交はなく、招待状を見たロイド様は不思議そうにされていた。
私はすぐにこれはアランの企みだと気づいた。
きっと、宴があまりお好きではないロイド様への嫌がらせなのだ。
でも、お生憎様。
ロイド様はアランの想定内におさまるような方ではないのよ。
——二ヶ月後。
私たちは二人揃って王都に戻り、ノランサス家を訪れていた。
「ドラヴァレン辺境伯ロイド様、奥方のクララ様、お着き~」
入口の執事に名前を呼び上げられ、私たちが腕を組んで広間に入っていくと、招待客たちの間に大きなざわめきが広がった。
「ええ……っ。あの方がドラヴァレン卿ですって?」
「嘘でしょう。あの素敵な方が!?」
「いつもは、鳥の巣のような頭と皺くちゃの服でいらっしゃるのに、実はあんなに美しい方だったなんて——」
「隣のクララ様もお綺麗なこと……」
「以前は、暗い顔をなさっていることが多かったようだけれど、今は光り輝くようね」
「なんてお似合いなのしら」
人々のさんざめきに包まれたロイド様は、落ち着かない様子で私に耳打ちした。
「クララ。皆じろじろ見ているが、私の格好はおかしいだろうか」
「とんでもない。ロイド様があまりに素敵だから、皆様は見惚れていらっしゃるだけですわ」
かく言う私も思わずうっとりしてしまう。
今日のロイド様は、きれいに櫛削った艶やかな金髪を首の後ろで一まとめに流して、端正な顔を惜しげもなく晒している。
たっぷりと刺繍の施された仕立てのいい服も、ロイド様のかっこよさを引き立てている。
「見惚れてしまうのはあなたの方だ、クララ。今日はいつにも増して愛らしく美しいよ。眩しいくらいだ……」
ロイド様が目を細めて私を見る。
私は照れて頬を赤く染めた。
確かに、今日はリズの気合がものすごくて、ドレスもアクセサリーも髪型もばっちりにされたのだった。
とはいえ、華美になりすぎない、バランスのいい仕上がりで、リズのセンスの良さにはいつもながら舌を巻いてしまう。
私たちがお互いを見て頬を染め合っていると、背後から声をかけられた。
「これはこれは、ドラヴァレン卿。てっきり気後れして欠席されるかと思ったのですが、よくいらっしゃったものですね」
嫌味っぽく失礼な言い回しに、私は眉をひそめて振り返った。
案の定、そこにいたのはアランだった。
ノランサス家とドラヴァレン家に特に親交はなく、招待状を見たロイド様は不思議そうにされていた。
私はすぐにこれはアランの企みだと気づいた。
きっと、宴があまりお好きではないロイド様への嫌がらせなのだ。
でも、お生憎様。
ロイド様はアランの想定内におさまるような方ではないのよ。
——二ヶ月後。
私たちは二人揃って王都に戻り、ノランサス家を訪れていた。
「ドラヴァレン辺境伯ロイド様、奥方のクララ様、お着き~」
入口の執事に名前を呼び上げられ、私たちが腕を組んで広間に入っていくと、招待客たちの間に大きなざわめきが広がった。
「ええ……っ。あの方がドラヴァレン卿ですって?」
「嘘でしょう。あの素敵な方が!?」
「いつもは、鳥の巣のような頭と皺くちゃの服でいらっしゃるのに、実はあんなに美しい方だったなんて——」
「隣のクララ様もお綺麗なこと……」
「以前は、暗い顔をなさっていることが多かったようだけれど、今は光り輝くようね」
「なんてお似合いなのしら」
人々のさんざめきに包まれたロイド様は、落ち着かない様子で私に耳打ちした。
「クララ。皆じろじろ見ているが、私の格好はおかしいだろうか」
「とんでもない。ロイド様があまりに素敵だから、皆様は見惚れていらっしゃるだけですわ」
かく言う私も思わずうっとりしてしまう。
今日のロイド様は、きれいに櫛削った艶やかな金髪を首の後ろで一まとめに流して、端正な顔を惜しげもなく晒している。
たっぷりと刺繍の施された仕立てのいい服も、ロイド様のかっこよさを引き立てている。
「見惚れてしまうのはあなたの方だ、クララ。今日はいつにも増して愛らしく美しいよ。眩しいくらいだ……」
ロイド様が目を細めて私を見る。
私は照れて頬を赤く染めた。
確かに、今日はリズの気合がものすごくて、ドレスもアクセサリーも髪型もばっちりにされたのだった。
とはいえ、華美になりすぎない、バランスのいい仕上がりで、リズのセンスの良さにはいつもながら舌を巻いてしまう。
私たちがお互いを見て頬を染め合っていると、背後から声をかけられた。
「これはこれは、ドラヴァレン卿。てっきり気後れして欠席されるかと思ったのですが、よくいらっしゃったものですね」
嫌味っぽく失礼な言い回しに、私は眉をひそめて振り返った。
案の定、そこにいたのはアランだった。
1,463
お気に入りに追加
1,458
あなたにおすすめの小説

アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。

殿下が私を愛していないことは知っていますから。
木山楽斗
恋愛
エリーフェ→エリーファ・アーカンス公爵令嬢は、王国の第一王子であるナーゼル・フォルヴァインに妻として迎え入れられた。
しかし、結婚してからというもの彼女は王城の一室に軟禁されていた。
夫であるナーゼル殿下は、私のことを愛していない。
危険な存在である竜を宿した私のことを彼は軟禁しており、会いに来ることもなかった。
「……いつも会いに来られなくてすまないな」
そのためそんな彼が初めて部屋を訪ねてきた時の発言に耳を疑うことになった。
彼はまるで私に会いに来るつもりがあったようなことを言ってきたからだ。
「いいえ、殿下が私を愛していないことは知っていますから」
そんなナーゼル様に対して私は思わず嫌味のような言葉を返してしまった。
すると彼は、何故か悲しそうな表情をしてくる。
その反応によって、私は益々訳がわからなくなっていた。彼は確かに私を軟禁して会いに来なかった。それなのにどうしてそんな反応をするのだろうか。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!

「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?
木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。
ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。
魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。
そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。
ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。
妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。
侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。
しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。
幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。
メカ喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。
学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。
しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。
挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。
パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。
そうしてついに恐れていた事態が起きた。
レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。

私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。
木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。
彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。
しかし妾の子である意網を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。
だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。
父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。
そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。
程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。
彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。
戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。
彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる