【完結】幼馴染に婚約破棄されたので、別の人と結婚することにしました

鹿乃目めの

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お生憎さま

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 手紙の内容は、ノランサス家が開催する夜会への招待状だった。

 ノランサス家とドラヴァレン家に特に親交はなく、招待状を見たロイド様は不思議そうにされていた。

 私はすぐにこれはアランの企みだと気づいた。
 きっと、宴があまりお好きではないロイド様への嫌がらせなのだ。

 でも、お生憎様。
 ロイド様はアランの想定内におさまるような方ではないのよ。






 ——二ヶ月後。
 私たちは二人揃って王都に戻り、ノランサス家を訪れていた。

「ドラヴァレン辺境伯ロイド様、奥方のクララ様、お着き~」

 入口の執事に名前を呼び上げられ、私たちが腕を組んで広間に入っていくと、招待客たちの間に大きなざわめきが広がった。

「ええ……っ。あの方がドラヴァレン卿ですって?」
「嘘でしょう。あの素敵な方が!?」
「いつもは、鳥の巣のような頭と皺くちゃの服でいらっしゃるのに、実はあんなに美しい方だったなんて——」
「隣のクララ様もお綺麗なこと……」
「以前は、暗い顔をなさっていることが多かったようだけれど、今は光り輝くようね」
「なんてお似合いなのしら」

 人々のさんざめきに包まれたロイド様は、落ち着かない様子で私に耳打ちした。

「クララ。皆じろじろ見ているが、私の格好はおかしいだろうか」
「とんでもない。ロイド様があまりに素敵だから、皆様は見惚れていらっしゃるだけですわ」

 かく言う私も思わずうっとりしてしまう。
 今日のロイド様は、きれいに櫛削った艶やかな金髪を首の後ろで一まとめに流して、端正な顔を惜しげもなく晒している。
 たっぷりと刺繍の施された仕立てのいい服も、ロイド様のかっこよさを引き立てている。

「見惚れてしまうのはあなたの方だ、クララ。今日はいつにも増して愛らしく美しいよ。眩しいくらいだ……」

 ロイド様が目を細めて私を見る。
 私は照れて頬を赤く染めた。
 確かに、今日はリズの気合がものすごくて、ドレスもアクセサリーも髪型もばっちりにされたのだった。
 とはいえ、華美になりすぎない、バランスのいい仕上がりで、リズのセンスの良さにはいつもながら舌を巻いてしまう。

 私たちがお互いを見て頬を染め合っていると、背後から声をかけられた。

「これはこれは、ドラヴァレン卿。てっきり気後れして欠席されるかと思ったのですが、よくいらっしゃったものですね」

 嫌味っぽく失礼な言い回しに、私は眉をひそめて振り返った。
 案の定、そこにいたのはアランだった。
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