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玄関の扉が閉まると、ロイド様がふうっと息を吐いた。
「よかった……。帰ってもらえたようだね」
「お騒がせしてしまい、申し訳ありません」
「どうしてあなたが謝るんだ。あなたは何も悪くない」
そう言って、ロイド様が微笑む。
その笑顔にまた見とれてしまう。
「……ロイド様のお顔、初めて見ました」
「えっ、初めて?」
「はい。いつも髪で隠していらっしゃいましたから」
「そうだったか。いや、隠していたつもりはなかったんだ。ただ、放っておくとああなってしまって……。髪を整える時間があるなら研究を進めたくて、ついね」
「ふふっ。そんなことではないかと思っていましたわ」
いかにも、飾らないお人柄のロイド様らしい理由で、ほっこりしてしまう。
「でも、今日はなぜお顔を出してらっしゃったのですか」
「ああ、それはトドリに言われて」
「トドリに?」
「私を呼びに来たトドリがなぜか『顔を見せた方が話が早くおさまるはずだ』と言うものでね。理由はよくわからなかったが……」
「さすがトドリですわ。作戦大成功でしたわね」
「うーん、私はそんなに恐ろしい顔をしているだろうか」
ロイド様が頬を撫でて難しい表情を浮かべられたので、私はぎょっとして首を振った。
「違います!逆ですわ!!ロイド様があまりに美形でいらっしゃるから圧倒されていたのですわ」
「へ?そうだったのかな……。では、クララ、あなたもそう思ってくれているのか……?」
「もちろんですわ。素敵でいらっしゃいます」
「そ、そうか」
ロイド様が口元を押さえて、なぜか視線を逸らす。
会話が途切れたタイミングで、私はあることを思い出し、眉を曇らせた。
「……あの、ロイド様」
「なんだい、クララ」
「先程、咄嗟にロイド様の妻だと言ってしまいましたけれど、ご不快ではありませんでしたか?」
「不快?なぜ?」
ロイド様が首を傾げる。
私はそんなロイド様をおそるおそる見上げた。
「だって、ロイド様は、ロヴァリア語の翻訳者が必要だったから、形だけは妻として私をお呼びになったのですよね?」
「え——!?」
ロイド様のきれいな青い瞳が、驚愕したように大きく見開かれた。
「よかった……。帰ってもらえたようだね」
「お騒がせしてしまい、申し訳ありません」
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そう言って、ロイド様が微笑む。
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「えっ、初めて?」
「はい。いつも髪で隠していらっしゃいましたから」
「そうだったか。いや、隠していたつもりはなかったんだ。ただ、放っておくとああなってしまって……。髪を整える時間があるなら研究を進めたくて、ついね」
「ふふっ。そんなことではないかと思っていましたわ」
いかにも、飾らないお人柄のロイド様らしい理由で、ほっこりしてしまう。
「でも、今日はなぜお顔を出してらっしゃったのですか」
「ああ、それはトドリに言われて」
「トドリに?」
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ロイド様が頬を撫でて難しい表情を浮かべられたので、私はぎょっとして首を振った。
「違います!逆ですわ!!ロイド様があまりに美形でいらっしゃるから圧倒されていたのですわ」
「へ?そうだったのかな……。では、クララ、あなたもそう思ってくれているのか……?」
「もちろんですわ。素敵でいらっしゃいます」
「そ、そうか」
ロイド様が口元を押さえて、なぜか視線を逸らす。
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「……あの、ロイド様」
「なんだい、クララ」
「先程、咄嗟にロイド様の妻だと言ってしまいましたけれど、ご不快ではありませんでしたか?」
「不快?なぜ?」
ロイド様が首を傾げる。
私はそんなロイド様をおそるおそる見上げた。
「だって、ロイド様は、ロヴァリア語の翻訳者が必要だったから、形だけは妻として私をお呼びになったのですよね?」
「え——!?」
ロイド様のきれいな青い瞳が、驚愕したように大きく見開かれた。
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