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やっと言えた、私の気持ち
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「なんだと?」
アランが苛立たしげに眉間に皺を寄せた。
以前は、そんな顔をされると、足がすくんで、言いたいことも言えず、飲み込んでしまってきた。
でも、私はもうあの頃の私とは違う。
あなたの機嫌を損ねることを恐れて、全てを諦めていた私はもういない。
あなたから離れて、そして心から尊敬できる人に出会って、私は目が覚めたの。
私は大きく息を吸って、ずっと口に出したかった言葉たちを吐き出した。
「ずっと……、ずっと苦しかったわ。あなたはいつも私のことは放ったらかしで、他の女の人と遊んでばかりで。この人と別れたら私のところに帰ってきてくれる、そう自分に言い聞かせても、すぐにまた別の人のところへ行ってしまう……」
アランが呆れたように、ため息を吐く。
「そんなのは男の甲斐性だろう。結婚前の火遊びだ。別に本気じゃない」
「本気じゃなければ、私が傷つかないとでも?」
私は瞳に力を込めて、アランを見据えた。
「あなたは私を軽んじている。あなたにとって私はないがしろにしていい存在なのよね。結婚したところで、きっとそれは変わらない。そのことに薄々気がついていたのに、ずっと現実を直視する勇気がなかった。でも、もう目が覚めたわ。あなたとは結婚できません」
私は思いの丈を伝えた。
そのつもりだった。
けれど、アランは不愉快そうにまたため息を吐いた。
まるで、駄々をこねる子供を相手にしているみたいに。
「ごちゃごちゃと御託を並べるな。いい加減にしろ。おまえは俺のものなんだよ。さっさと来い!」
「いや……っ」
アランが私の腕を掴んで引っ張ろうとした。
その時だった。
背後から現れた長身の人影が私をかばい、アランの前に立ちはだかった。
私を背にかばったその人が、こちらを振り返る。
私は息を呑んだ。
濡れた長めの金髪に縁取られたその顔は、驚くほど端正だ。
思わず見惚れてしまった私に彼は優しく微笑み、そしてアランに向き直った。
「狼藉はやめてもらおうか」
力強く響いたその声はまぎれもなく、ロイド様のものだった。
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私は息を呑んだ。
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思わず見惚れてしまった私に彼は優しく微笑み、そしてアランに向き直った。
「狼藉はやめてもらおうか」
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