【完結】幼馴染に婚約破棄されたので、別の人と結婚することにしました

鹿乃目めの

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急襲

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 その日は朝からお天気が不安定で。
 畑に出ていたロイド様は、にわか雨に降られて慌てて城内に戻っていらした。

 私はご報告したいことがあったのだけど、ロイド様はすぐに湯浴みに向かわれてしまったので、湯浴みが終わったら私の部屋に来てくださるようトドリに伝言を頼んだ。

 部屋でロイド様を待っていると、玄関の方から何やら大きな声が聞こえてきた。

 何かあったのだろうか。
 怪訝に思い、急いで玄関に向かう。

「何事ですか——」

 駆けつけた私は、驚きに息を呑んだ。

 そこにいたのは、私の元婚約者であるアランだった。



「クララ!」

 従僕を押し退けたアランは、靴音も荒々しく私の方にやって来たかと思うと、乱暴に肩を掴んだ。

「帰るぞ」

「アラン……?何を言っているの。どうしてあなたがここに……」

「それはこっちの台詞だ。俺という婚約者がありながら、他の男と結婚しようとするなんて、このあばずれが!しかも、相手は変人ドラヴァレンだと?俺へのあてつけか!?」

 イライラとまくし立てられ、私は困惑して眉を寄せる。

「あなたが何を話しているのかわからないわ。私はあなたに婚約破棄されたから、別の方と結婚しようと——」

「あれはオルガの狂言だ。勝手に俺の名前で手紙を書いたんだよ」

「でも、確かにあなたの筆跡だったわ。封蝋もノランサス家の家紋だったし」

「あの女が、他人の筆跡を真似るのがうまい奴を雇って書かせたんだ。封蝋も偽造してな」

「なんですって……」

 驚きに、言葉が出て来ない。
 私を絶望させたあの手紙が、偽造だったなんて。

「わかったら、とっとと帰るぞ」

 アランが私の肩を抱き、強引に連れ出そうとした。
 その瞬間、私は腕を突っ張って、アランから距離を取った。

「やめて!私は帰らないわ」
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