【完結】幼馴染に婚約破棄されたので、別の人と結婚することにしました

鹿乃目めの

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穏やかな日々

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 翌日から、さっそく古文献の解読がはじまった。

「すごい……。書物がこんなにたくさん……」

 私は、書庫の壁一面の本棚を見回して、感嘆の声を上げた。

「代々ドラヴァレン家は本の虫が多くてね。ロヴァリア語の文献もかなりあるのだが、読める者がおらず、宝の持ち腐れ状態だったのだよ」

 ロイド様が左端の棚を指し示す。

「ロヴァリア語の本はこのあたりだ」
「これ全部ですの?」
「ああ」

 ええーと……、ざっと百冊はありそうだわ。
 素晴らしい蔵書に、私は目を輝かせた。

「すごい。見たことのない本ばかりですわ。これを全て読んでいいのですか?」
「もちろんだよ」
「嬉しい!ありがとうございます」

 満面の笑みでお礼を述べると、ロイド様がじっとこちらを見下ろしたまま、無言になる。

「あの、私の顔に何かついておりますでしょうか」
「あっ、いや、そうではなくて、その……、あなたは笑顔が似合うな、と思って……」
「ロイド様……」

 優しい言葉に胸がじんわりとあたたかくなる。
 アランには、そんなふうに言われたことはなかった。
 ああ、でも、そもそも、もうずっとアランの前で心から笑えたことなんてなかったかもしれない。

 ロイド様のお役に立ちたい。
 その思いが、ますます強くなった。
 
「では、まずはどんな本があるかざっと見させていただきますわね」

 私は一番端から本を手に取り、ぱらぱらとめくり始めた。




 それから二週間ほど。
 私は毎日文献を調べ続けた。
 まだロヴァリア豆(農夫たちの誰かがこう呼び始め、いつの間にか定着したそう)の育て方は見つけられていない。
 でも、私は楽しくてたまらない。

 歴史書、物語、レシピ本などなど、ジャンルは様々だけど、どの本も興味深くてとっても面白い。
 農学についての本もいくつか発見したので、今はそれを重点的に調べているところ。
 専門用語が多いから読み進めるのに苦労するけど、ありがたいことに蔵書の中にロヴァリア語の辞書もあったし、農耕についての基礎的なことはロイド様にお聞きして教えてもらっている。

 私が質問すると、ロイド様は嬉しそうに、詳しく教えてくださる。
 一生懸命お話してくださるそのお姿を見ていると——こんなの失礼かもしれないけど、なんだかかわいらしく見えてきて、つい微笑んでしまう。

 でも、私が微笑んでいることに気づくと、ロイド様は頬を赤らめて口ごもってしまうのよね。
 ごめんなさい。
 じっと見つめたりして、不躾でしたわよね。


 

 けれど、そんな穏やかで楽しい日々を打ち破る事件が起きた。 
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