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驚きの理由
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お城の中は、外観と同じく草が繁茂していて……なんてことはなくて、意外なことに清潔で心地よく保たれていた。
出迎えてくれた使用人たちも感じが良く、親切だ。
「こちらはクララ様のお部屋です。ご自由にお使いください」
「まあ、素敵なお部屋ね」
トドリが案内してくれた部屋はほどよい広さで、インテリアの趣味もよく、窓からは畑やその向こうの山並みがよく見える。
ソファもふかふかで座り心地がいい。
しばらくして、扉がガチャリと開いた。
現れたのは、ロイド様だ。
ぼさぼさの髪はそのままで、でも、土で真っ黒だった手はきれいになっている。
服もさっきと同じようなチュニックだけど、土がついていないということは、着替えたみたい。
「お待たせした」
ロイド様は、どこかぎこちない動きで私の方にやってくると、私の手を取り、甲に口付けた。
「改めて……。ロイド・ドラヴァレンだ」
「クララ・セヴィニエでございます」
そう、私たちは結婚するというのに、今日が初対面なのだ。
貴族同士の結婚ではままあることなのだけれど、幼馴染のアランと結婚するつもりだった私からすると、この状況はなんだか不思議に感じられた。
ロイド様が少し隙間を開けて、私の隣に腰を下ろす。
「その……。あなたが、私の求婚を受け入れてくれるとは思わなかったので、正直とても驚いている」
「まあ……、ドラヴァレン辺境伯ともあろうお方が謙虚でいらっしゃいますのね。でも、なぜ私に求婚してくださったのですか」
「それは……、理由は一つではないのだが……、」
数秒言い淀んだロイド様が継いだ言葉は、全く思いがけないものだった。
「そもそもは、ロヴァリア語のわかる人を探していたのだ」
出迎えてくれた使用人たちも感じが良く、親切だ。
「こちらはクララ様のお部屋です。ご自由にお使いください」
「まあ、素敵なお部屋ね」
トドリが案内してくれた部屋はほどよい広さで、インテリアの趣味もよく、窓からは畑やその向こうの山並みがよく見える。
ソファもふかふかで座り心地がいい。
しばらくして、扉がガチャリと開いた。
現れたのは、ロイド様だ。
ぼさぼさの髪はそのままで、でも、土で真っ黒だった手はきれいになっている。
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「お待たせした」
ロイド様は、どこかぎこちない動きで私の方にやってくると、私の手を取り、甲に口付けた。
「改めて……。ロイド・ドラヴァレンだ」
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そう、私たちは結婚するというのに、今日が初対面なのだ。
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ロイド様が少し隙間を開けて、私の隣に腰を下ろす。
「その……。あなたが、私の求婚を受け入れてくれるとは思わなかったので、正直とても驚いている」
「まあ……、ドラヴァレン辺境伯ともあろうお方が謙虚でいらっしゃいますのね。でも、なぜ私に求婚してくださったのですか」
「それは……、理由は一つではないのだが……、」
数秒言い淀んだロイド様が継いだ言葉は、全く思いがけないものだった。
「そもそもは、ロヴァリア語のわかる人を探していたのだ」
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