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西の果てへ

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 気持ちが揺らがないよう、早ければ早いほどいい。
 そう考えた私は、翌々日には西の果てのドラヴァレン領に向けて出立していた。
 なんといっても、ドラヴァレンは遠い。
 馬車だと時間がかかりすぎるので、護衛だけではなく、私も馬で行くことにした。
 乗馬は昔から得意だった。

 それでも夜は人も馬も宿などで休む必要があるし、半月はかかる。
 だから、先に結婚の承諾を伝える早馬を出して、後から追いかける形にした。

 お父様は同行して娘を引き渡したかったみたいだけど、あいにく領地巡察の予定があって無理だった。
 せっかちすぎると呆れていたけれど、珍しく私が自分の意志を押し通したことに驚き、最後は許してくれた。
 結婚式は、お父様とお母様が来られるまで待つようにという条件で。


 この輿入れには侍女のリズが同行してくれる。
 リズは年は二歳年下だけれど、しっかり者で頼りになって、そばかすがかわいらしい子だ。

 遠方への輿入れだというのに、「クララ様のお世話を他の者に任せるわけにはまいりませんわ!」と腕まくりをしつつ、二つ返事で付いてきてくれたのだ。
 本当に心強い。
 リズもまた、小さな頃から私の遠乗りに付き合ってくれていたので、乗馬は問題ない。


 アランには……、さよならは言わずに出発した。
 彼はきっともう、私に会いたいなんて思ってくれていないだろうから。

 馬を駆りつつ、今更ながらに思う。
 私がこういう時に馬車ではなく馬を選んでしまうところも、アランはあまり好きじゃなかったのかもしれない。
 アランが好む令嬢たちは、乗馬よりも着飾って夜会に行き、おしゃべりする方が好きそうな人たちばっかりだったから。

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