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4.開幕
研究科の天才と鍛治科の凡才
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「さてと…着いたよ。ここが研究科の教室だ」
徹の案内で研究科の教室までやって来た。
しかし、戦闘科の教室から離れた位置にあって、その間の施設も見ながら来た為、着いた頃には終業からだいぶ時間が経っていた。
そのせいか、教室の中には数人しか残っていなかった。
話によると、研究科の生徒は別の場所にある研究棟にいることが多く、教室は朝と帰りのSHRの時か、たまにある普通の授業の時以外使われていないらしい。
「徹君じゃないですか。あなたがわざわざこっちに来るなんて珍しいですね。そちらの方々は?」
教室の外で話を聞いていた恒星達のところへ、徹と三人組を組んでいる清徳 郷がやって来た。
「そうでしたか。せっかく来ていただいたのに申し訳ないのですが、時間が時間ですので生徒はあまり残っていませんよ。今いる中でまだ相手がいないのは……彼女ですね」
郷が指さした先には窓際の席で本を読んでいる少女━━天峰 光の姿があった。
整った顔を照らす夕陽の光は彼女の肌の白さを際立たせている。
「天峰さんか…確かに彼女の超頭脳も恒星君になら合うかもしれないな」
「超頭脳って、もしかして特異体質の事か?」
「あぁ、そうだよ」
光の体質━━超頭脳は日本で二人、世界に十数人しかいない希少な体質らしい
「そんなすごい体質を持っているのにまだ誰とも組んで無いのか?」
「すごいからこそですよ。そのせいか…少し言い方は悪いですが、彼女は研究科の中でも浮いてしまっています」
(人よりも圧倒的に秀でた才にあの容姿。俺もああいうタイプの人と話すのは苦手だから、近づき辛いのも分かる気がする。それでも今は、強さが欲しい)
「彼女をトリオに誘ってくる」
もし仮にリアルの柊が親を殺した本人ならこのままでは復讐できないと思い、より強い力を手に入れる為に光を3人組に誘うことにした。
「いきなり! そんな簡単に決めていいのか?」
「どうせ誰も誘わないんだろ? それに、俺は強くなりたいんだ。何としてでも」
「誰も誘わなかった訳ではないのですがね」
郷がボソッと呟いた一言を聴く前に恒星は光のいる所に歩いていってしまった。
「読書の最中にすまない。俺は星影 恒星。いきなりで悪いけど俺とトリオを組んでくれないか?」
「えぇ、是非。よろしくお願いします」
光は恒星からのいきなりの申し出に、少し驚いてから何の迷いもなく笑顔で承諾した。
「えっ!? いいの?」
「貴方から誘ってきたのに、いいのかって。可笑しな人ですね」
勇気を出して誘った恒星が拍子抜けしている様子を見て、光はくすくすと笑っている。
(勝手にお高いタイプの人だと思ってたけど、めちゃくちゃ失礼だったな)
「っていけない、もうこんな時間!! すみません、お父さんのお手伝いがあるので私はこれで失礼します」
時間を忘れて読書に夢中になっていた光は用事を思い出し、恒星にぺこりとお辞儀をしてすぐに走って行ってしまった。
(取り敢えず、研究科の枠は決まったって事でいいのだろうか?)
「恒星~。天峰さん凄い勢いで出ていったけど、どうだったんだ」
光の切り替えの速さに呆気に取られている恒星にみんなが集まってくる。
「OKしてもらえた。それもあっさりと」
光が急いで出ていったのを見て、何かあったんじゃないかと心配していた綾人達は、恒星の返答を聞いて安心している。
「彼女は元々、誰かから誘われたら組むつもりだったみたいでしたので断られないと思ってましたが、よかったですね」
「それってつまり、誰でもよかったって事か?」
「ま、まぁ平たく言えばそうですね。それより、早いうちに鍛治科の方にも行った方が良いのではないですか?」
時間的に生徒がみんな帰ってしまっている可能性もあったが、まだ回ってない箇所があった為、そのついでに鍛治科の教室にも向かった。
「ここが鍛治科の教室だが、やはりみんな帰っている…というより補習をしていたみたいだな」
教室には男女の生徒が一人ずつと先生と思われる人がいた。
補習を受けてるのがどんな人間か気になった恒星は教室を覗くと、廊下側に座っている男子生徒に目を引かれた。
補修が終わるとすぐに片付けをして、男子生徒が足速に教室を去ろうとしたので、恒星は慌てて彼に声をかける。
「何だ?」
男子生徒はただ話しかけられただけなのに明らかに不機嫌な様子をしている。
「いや、えっと…俺とトリオを━━」
「俺は誰とも組む気はないし、そもそも武器を作る気もない。話は終わりだ、俺には構わないでくれ」
恒星が誘っている途中で強い語気で断られてしまい、そのまま男子生徒はどこかに行ってしまった。
「徹、今の誰か分かるか?」
「彼は鉄口 創也だよ」
徹曰く、鉄口家は日本の鍛治師の中で最も有名な家系なのだが、創也は何故か頑なに武器を作ろうとしないせいで、いつの間にか周りから落ちこぼれ扱いを受けているらしい。
(あいつの目。昔の…父さんと母さんを殺された直後の俺の目と似ていた。構うなって言われたけど、気になるな…)
━━━ ━━━ ━━━ ━━━ ━━━ ━━━ ━━━
その日の夜 城下町にて
「はぁ、はぁ…遅くなっちゃった。急いで帰らないと」
研究に没頭していたせいで外が暗くなっていることに気づかなかった光が急いで家に帰っていると、
「すみません、迷ってしまったので道を教えてくれませんか?」
裏路地から出てきたフードを深く被った男に声をかけられ、急いでいた足を止めた。
誰がどうみても怪しいのだが、どうやら光は困っている人がいると放っておくことが出来ない性格らしく、親切にも男に道を教えてあげることにした。
「……それで、その道をまっすぐ進めば着きますよ」
「丁寧に教えていただきありがとうございます。…そうだ! 何かお礼を…」
光から目的地の道のりを教えてもらった男は、そのお礼に何かを渡す為に肩から下げた鞄をゴソゴソし始めた。
「いえいえそんな、お気になさらず。困った時はお互い様ですから」
「そうおっしゃらず、ぜひ受け取って下さい!!」
「何…っ!?」
断られているのに関わらず、頑なに何かを渡そうとしている男は鞄から取り出したスタンガンで光を気絶させた。
そして、気を失って光を連れて男は街の暗闇に消えていった。
徹の案内で研究科の教室までやって来た。
しかし、戦闘科の教室から離れた位置にあって、その間の施設も見ながら来た為、着いた頃には終業からだいぶ時間が経っていた。
そのせいか、教室の中には数人しか残っていなかった。
話によると、研究科の生徒は別の場所にある研究棟にいることが多く、教室は朝と帰りのSHRの時か、たまにある普通の授業の時以外使われていないらしい。
「徹君じゃないですか。あなたがわざわざこっちに来るなんて珍しいですね。そちらの方々は?」
教室の外で話を聞いていた恒星達のところへ、徹と三人組を組んでいる清徳 郷がやって来た。
「そうでしたか。せっかく来ていただいたのに申し訳ないのですが、時間が時間ですので生徒はあまり残っていませんよ。今いる中でまだ相手がいないのは……彼女ですね」
郷が指さした先には窓際の席で本を読んでいる少女━━天峰 光の姿があった。
整った顔を照らす夕陽の光は彼女の肌の白さを際立たせている。
「天峰さんか…確かに彼女の超頭脳も恒星君になら合うかもしれないな」
「超頭脳って、もしかして特異体質の事か?」
「あぁ、そうだよ」
光の体質━━超頭脳は日本で二人、世界に十数人しかいない希少な体質らしい
「そんなすごい体質を持っているのにまだ誰とも組んで無いのか?」
「すごいからこそですよ。そのせいか…少し言い方は悪いですが、彼女は研究科の中でも浮いてしまっています」
(人よりも圧倒的に秀でた才にあの容姿。俺もああいうタイプの人と話すのは苦手だから、近づき辛いのも分かる気がする。それでも今は、強さが欲しい)
「彼女をトリオに誘ってくる」
もし仮にリアルの柊が親を殺した本人ならこのままでは復讐できないと思い、より強い力を手に入れる為に光を3人組に誘うことにした。
「いきなり! そんな簡単に決めていいのか?」
「どうせ誰も誘わないんだろ? それに、俺は強くなりたいんだ。何としてでも」
「誰も誘わなかった訳ではないのですがね」
郷がボソッと呟いた一言を聴く前に恒星は光のいる所に歩いていってしまった。
「読書の最中にすまない。俺は星影 恒星。いきなりで悪いけど俺とトリオを組んでくれないか?」
「えぇ、是非。よろしくお願いします」
光は恒星からのいきなりの申し出に、少し驚いてから何の迷いもなく笑顔で承諾した。
「えっ!? いいの?」
「貴方から誘ってきたのに、いいのかって。可笑しな人ですね」
勇気を出して誘った恒星が拍子抜けしている様子を見て、光はくすくすと笑っている。
(勝手にお高いタイプの人だと思ってたけど、めちゃくちゃ失礼だったな)
「っていけない、もうこんな時間!! すみません、お父さんのお手伝いがあるので私はこれで失礼します」
時間を忘れて読書に夢中になっていた光は用事を思い出し、恒星にぺこりとお辞儀をしてすぐに走って行ってしまった。
(取り敢えず、研究科の枠は決まったって事でいいのだろうか?)
「恒星~。天峰さん凄い勢いで出ていったけど、どうだったんだ」
光の切り替えの速さに呆気に取られている恒星にみんなが集まってくる。
「OKしてもらえた。それもあっさりと」
光が急いで出ていったのを見て、何かあったんじゃないかと心配していた綾人達は、恒星の返答を聞いて安心している。
「彼女は元々、誰かから誘われたら組むつもりだったみたいでしたので断られないと思ってましたが、よかったですね」
「それってつまり、誰でもよかったって事か?」
「ま、まぁ平たく言えばそうですね。それより、早いうちに鍛治科の方にも行った方が良いのではないですか?」
時間的に生徒がみんな帰ってしまっている可能性もあったが、まだ回ってない箇所があった為、そのついでに鍛治科の教室にも向かった。
「ここが鍛治科の教室だが、やはりみんな帰っている…というより補習をしていたみたいだな」
教室には男女の生徒が一人ずつと先生と思われる人がいた。
補習を受けてるのがどんな人間か気になった恒星は教室を覗くと、廊下側に座っている男子生徒に目を引かれた。
補修が終わるとすぐに片付けをして、男子生徒が足速に教室を去ろうとしたので、恒星は慌てて彼に声をかける。
「何だ?」
男子生徒はただ話しかけられただけなのに明らかに不機嫌な様子をしている。
「いや、えっと…俺とトリオを━━」
「俺は誰とも組む気はないし、そもそも武器を作る気もない。話は終わりだ、俺には構わないでくれ」
恒星が誘っている途中で強い語気で断られてしまい、そのまま男子生徒はどこかに行ってしまった。
「徹、今の誰か分かるか?」
「彼は鉄口 創也だよ」
徹曰く、鉄口家は日本の鍛治師の中で最も有名な家系なのだが、創也は何故か頑なに武器を作ろうとしないせいで、いつの間にか周りから落ちこぼれ扱いを受けているらしい。
(あいつの目。昔の…父さんと母さんを殺された直後の俺の目と似ていた。構うなって言われたけど、気になるな…)
━━━ ━━━ ━━━ ━━━ ━━━ ━━━ ━━━
その日の夜 城下町にて
「はぁ、はぁ…遅くなっちゃった。急いで帰らないと」
研究に没頭していたせいで外が暗くなっていることに気づかなかった光が急いで家に帰っていると、
「すみません、迷ってしまったので道を教えてくれませんか?」
裏路地から出てきたフードを深く被った男に声をかけられ、急いでいた足を止めた。
誰がどうみても怪しいのだが、どうやら光は困っている人がいると放っておくことが出来ない性格らしく、親切にも男に道を教えてあげることにした。
「……それで、その道をまっすぐ進めば着きますよ」
「丁寧に教えていただきありがとうございます。…そうだ! 何かお礼を…」
光から目的地の道のりを教えてもらった男は、そのお礼に何かを渡す為に肩から下げた鞄をゴソゴソし始めた。
「いえいえそんな、お気になさらず。困った時はお互い様ですから」
「そうおっしゃらず、ぜひ受け取って下さい!!」
「何…っ!?」
断られているのに関わらず、頑なに何かを渡そうとしている男は鞄から取り出したスタンガンで光を気絶させた。
そして、気を失って光を連れて男は街の暗闇に消えていった。
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