現想世界のシアロジィ

十二支

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4.開幕

破天学園

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「学校って、そんないきなり……」

 恒星はめんどくさそうな声で返しながら、二人の方を見る。
 綾人は学校に行けるのが嬉しいのか期待に満ち溢れた顔をしており、未由来は心底嫌そうな顔をしている。

「では、用件は伝えたから我は戻るぞ。柊、学園までの道案内任せてよいか?」
「了解しました」

 恒人は制服の入った袋を三人に渡してすぐにその場を去って行った。
 三人は恒人から貰った制服に着替える為、一旦それぞれの自室に戻る。

━━━ 数分後

「よし! こんなところか」

 無地の黒ズボンと少し装飾が入っている白を基調としたブレザーに着替え終わった恒星は、中庭に戻るため部屋を後にする。
 中庭に戻ろうと廊下を進んでいくと、少し先の廊下の曲がり角に由宇奈を見つけた。

(昨日と違って今日はメイド服じゃないんだ。どこに行くんだろう、声を掛けてみようか)

 そう思い、恒星が由宇奈を呼ぼうとした時、

「恒星!!」

 由宇奈の方から声をかけられた。
 しかし、由宇奈は恒星がいるのと逆の方向へと走っていってしまった。

(あれ? 俺はこっちにいるんだけど…誰かと見間違えたのかな)

 由宇奈の行動を不思議に思い後を追おうか迷ったが、他の三人を待たせてしまうためいそいで中庭へと戻る。
 綾人と未由来の自室は中庭からそこまで離れていないらしく、恒星よりも早く戻ってきていた。
 綾人は当然恒星と同じものを着ており、未由来は白の刺繍が入った黒いワンピースに白襟の黒いボレロ風ジャケットを羽織っている。

「何でしょうか…」
「いや、別に。何でもないよ」

 未由来は恒星がジロジロ見ているのに気付き、顔を隠して恥ずかしそうにしている。

(未由来が来てるのって女子の制服だよな。コレってさっき由宇奈が来ていた服に似ているような気が…)

「それじゃあ学園へと案内しよう。と言っても、学園は城の近くにあるからあまり時間はかからんがな」

 柊について城門の手前までやってきた。

(そういえば、俺ってこっちに来てからまだここから一度も出たことなかったぁ。一体、外はどんな景色になって……)

 城門をくぐり、初めて城の外へと足を踏み出す。
 城は他よりも高い位置にあり、城下町全体を一望することができた。

「これは…」

(城の中にいた時から思ってたけど、ここは本当に日本なのか? まるで、中世のヨーロッパの街並みみたいだ)

 八角形の高い壁で囲われた城下町は石造りの建物が並び、城はその中心にあった。
 城下町にはまだ早い時間なだけあって人はチラホラとしか居ない様子であった。

「学園はそっちじゃないぞ」

 城下町へと降りる道に進もうとした恒星を柊が止める。
 どうやら学園に行くには城下町を通る必要はないらしく、城壁に沿った別の道を進んで行く。
 学園へと向かうまでの短い間、三人は柊にこれから通う学園の事を軽く教えてもらった。

 名前は破天学園。
 一年制で、全国からエリートを集め、将来的に王国軍の分隊長以上を務める事となる人材を育成する為の学校らしい。
 又、破天学園には闘諍科と鍛治科、研究科の三つのクラスがあり、今回恒星達は闘諍科に入る事になるようだ。

 そんな話をしてたらいつの間にか学園についており、まず初めに応接室まで連れて行かれた。
 柊がノックをして応接室に入る。
 部屋の中には大きい机を挟んでソファーが二つ。
 そしてその奥に別の机と椅子が置いてあり、椅子には既に誰かが座っていた。

「ハロハロー☆破天学園へようこそ」

 椅子に座っている人は恒星達に気付くと椅子を回転させながら挨拶を始めた。

「私はこの学園の理事長で今年だけ特別に君達の担任の先生となる、萌木もえぎ ももだよー。ももちゃんって呼んでね☆」

(いきなりキャラ濃い人きたなぁ。というか理事長って、さすがに無理あるだろ。どう見たって子供にしか…)

 桃は身長が女子の平均的身長よりも小さいと思われる未由来よりも小さく、ゴスロリの格好をしている。
 さらに童顔であるため、誰がどう見ても子供にしか見えない容姿をしていた。

「萌木…先生? 質問があるんですけど」
「次からはちゃんとももちゃん☆って呼ぶんだよ。それで、質問ってなんだい?」
「ももちゃんって何歳なんですか?」

 桃は綾人の質問に対して体をピクッとさせた後、満面の笑みを浮かべた。

(確かに気になるけど、それ普通聞くか? この人笑顔だけど目が笑ってないし、どう考えても地雷踏んだだろコレ)

 桃の静かな怒りに恒星と未由来だけでなく、あの柊ですら冷や汗をかいている。
 そんな中、当の本人である綾人はというと、桃が怒っているのに気付いていないのか特に焦っている様子もなく、普通に桃から返答が返ってくるのを待っていた。

「それじゃあ萌木さん、あとはよろしくお願いします」

 そう言って、柊は早速と応接室を出て行った。

(あっ!!  あいつ自分だけ逃げやがったな)

「……次はないよ?」
「えっ?」
「いいから謝っとけ」

 未だに桃がキレているのに気付いていない綾人に耳打ちで謝罪するように促した。

「えっと…すみませんでした?」

 綾人は状況を理解しないまま、取り敢えず言われた通り桃に対して謝罪を述べた。

「はぁ…女性に、それも初対面の相手に年齢を聞くとは…失礼なやつだね君は。まぁ、今回は許してあげよう。それと、さっきの質問に関してはNOとだけ言っておこう」
「何でっ!!  って、痛った!! 何すんだよ」

 まだしつこく聞こうとする綾人の発言を足を踏んで止めた。
 怒った様子で恒星を見る綾人であったが、恒星が真顔かつ無言で首を横に振っている様子を見てようやく察してたのか、それ以上は何も言わなかった。

「話が脱線してしまったせいで、もうSHRショートホームルームの時間になってしまったよ。もう少し話しておきたい事があったけど、しょうがないか…教室に案内するからついておいで」

 教室まで行くと先にSHR終わらせるから待っているようにと指示され、SHRが終わると教室に入ってくるように桃から呼びかけられた。
 教室に入り三人は教壇の上に並ぶ。
 恒星は教壇の上でこれからクラスメイトになる人達を見回し、その中で見知った顔を見つけた。

「あれ!?  由宇奈、それに恒も。二人ともどうしてここに」

「あの人今、恒様のこと呼び捨てにしてなかった?」
「えぇ、確かに呼び捨てにしてましたわ」

 クラスメイト達は王族である恒のことを呼び捨てにしたことに驚き、恒星に聞こえないくらいの声でひそひそと話をしている。

「そんなの決まっているではありませんか。恒がこの学園の生徒だからですよ、お兄様」

 恒星が兄であることを知り、クラスメイト達はさらに驚いている。

「お兄様ってことはあの人が行方不明になってたっていう…」
「はいはーい、驚くのも分かるけど静かにしてねー」

 先生が場を鎮めたところで、恒星から自己紹介を始めた。

「初めまして。星影 恒星っていいます。さっきので分かったと思うけど、俺は恒の兄でこの国の王子です。でも、俺とは王子とか関係なく、普通に友達として接してもらえると嬉しいです」

 恒星に続いて二人も自己紹介をする。
 しかし、恒星一人相手にまともに自己紹介出来なかった未由来が話せるはずもなく、代わりに綾人が未由来の紹介をした。
 その後、桃は三人を一旦席に座らせSHRを終わらせると、クラスメイト達からの自己紹介が始まった。
 それらを一通り聞き終えると、今度は三人に対して大量の質問が飛んできた。
 一度に沢山の質問を投げられ、美由来だけでなく恒星と綾人の二人も困った様子だ。

「よさないか皆。そんなに一斉に質問したら答えられないし、三人共困っているだろう」

 今止めに入った眼鏡の少年は真瀬ませ とおるだ。
 真面目な性格を買われ、クラスのまとめ役を任されているらしい。

「ですが、三人組トリオを誰とお組みになるのか気になりませんか?」

 徹の隣にいる、クルクルと巻いた髪が特徴的な少女━━蘭野らんの 嶺花れいかが徹に聞く。
 嶺花はお嬢様っぽい見た目から分かる通り、有名な家の生まれで、徹とは幼馴染だという。

「三人組って何だ?」

 そんな恒星の疑問に嶺花は分かりやすく丁寧に説明をしてくれた。


たちの入ったクラスは戦闘科で、その他に鍛治科と研究科がある。その三つの科から一人づつ組んだものの事を、三人組と言うみたいだ。


トリオとは

 6ヶ月後にある七国祭で出場登録をする際のチームのようなもので、戦闘科と研究科と鍛治科からそれぞれ一人ずつで構成される。
 それぞれの役割としては鍛治科が武器を作り、その武器に研究科が特殊な能力を付与する。
 そうして出来上がった武器で戦闘科が戦う、といった役割であった。
 

「それじゃあ、学校案内も兼ねて誰かいい人がいないか探しに行かないか?」
「ああ、そうだな。頼むよ」

 徹の提案にのり、放課後になると恒星達は学校探索がてら鍛治科と研究科を見に行くことにした。

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